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バイト先の彼女にご報告

お久しぶりです(*・ω・)*_ _)ペコリ

 舞さんがいなくなった部屋に二人きりで残される。嵐のように去っていった舞さんの賑やかさが無くなって、シンと静かさが木霊した。


「えっと、舞さんって賑やかな人ですね」


「そうですね。昔は大人しかったんですけど」


「そうなんですか? 全然想像つきませんね」


 あんな人懐っこい人が大人しかったなんて想像がつかなかった。てっきり昔からああいう性格なのかと。


「中一くらいまではどちらかと言えば静かな人でしたよ。それが中二になって急に明るい感じに変わったんですよね。私はどちらの彼女も好きですが、今は中学でかなりの人気者になっているみたいです」


「へえ、そんなことが」


 遅い中学デビューみたいなものだろうか。たとえ強引に変えたのだとしても、それは頑張った結果であり、尊敬に値する。人が変わるのはそう容易なことではないのだから。


「あれだけ明るければ確かに人気者っていうのは頷けますね」


「……田中さんは舞ちゃんみたいな方が好みなんですか?」


 躊躇いがちな口調。ちらっと上目遣いに、控えめな様子でこっちを窺ってくる。


「いえ、特に好みというわけではないですよ。一般的に人当たりのいい人はモテやすいのでそう思っただけです」


「そうですか」


 視線を斜め下に向けると、くるくると髪の毛先を触りながらそう呟く。その表情は澄ました表情で、俺の返答に納得したのかどうかは分からなかった。


 まさか柊さんに異性の好みを聞かれるとは。あまりそういう恋愛事に興味はなさそうだと思っていたので、意外だった。せっかくの機会だし、こっちも聞いてみようか。


「恋愛はあまり興味がないので好みとかは特にないですね。柊さんはどういう方が好みなんですか?」


「わ、私ですか!?」


 自分は聞かれると思っていなかったようで、かあっと頬を赤らめる。あまりこういう話に慣れていないのだろう。瞳を慌ただしく左右に揺らして、どの動揺具合が窺い知れた。


 質問をしておいて今更ながら、女子に好みとかを聞くのは失礼だったかもしれないと、焦りが出てくる。


「あ、嫌だったなら答えなくって大丈夫ですよ。異性にそういう話をするのは嫌ですよね。配慮が足りなくてすみません」


「い、いえ。驚いただけなので嫌ではないです。そうですね……外見だけではなくちゃんと中身を見てくれる人でしょうか」


 頬を朱に染めながら、どこか窺うようにこちらを見上げる。耳まで赤くしながらもその声音は柔らかく、真摯で切実な想いのように感じられた。


「もしかして、以前に話していたお世話になっている男の人ですか?」


「えっと……そうです」


 さらに分かりやすく色づかせる姿から、柊さんが本当にその人のことが好きなことが伝わってくる。普段の冷静沈着な彼女から想像できない動揺して恥ずかしそうにしている姿は、不覚にも可愛らしかった。


「本当にその人のことが好きなんですね」


「そ、そんなに分かりやすいですか?」


「そうですね。普段の態度とは全然違いますから」


「そうですよね。急に聞かれるから動揺してしまって……」


 ぱたぱたと顔を仰ぐように手を動かす。


「あ、いえ、別に変な姿とかそういうわけではないですよ。可愛らしいとは思いますし。ただ分かりやすいというだけで」


「そ、そうですか。可愛らしいですか……」


 もにょもにょと口を動かして、きゅうと持っていたバックの手持ちの部分を握りしめる。そして小さく俯いたままもじもじと体を左右にわずかに揺らした。


 どうしてそんな口籠もっているのだろうか? もしかしたら、俺が気を遣っていると思ったのかもしれない。


「気を使って嘘をついているわけではないのでそこは安心してください。可愛らしいのは本当です」


「も、もう分かりましたから。とりあえずこの話はもう終わりにしましょう。これ以上は……恥ずかしすぎます」


 なんとか嘘でないこと伝えようと真剣に伝えたが、ストップがかかってしまった。顔を真っ赤にしたままぶんぶんと首を振って話を止められた。慣れない恋バナに限界だったらしい。


「……分かりました。ただ、俺は応援してますので頑張ってください。よかったら相談にのりますし」


「相談、ですか」


「はい、日ごろこっちの相談にのってもらっているんですから、お互い様ですよ」


「そ、そうですね。機会があれば」


 やはり今回の話がこたえたようで、頬を桃色に染めながら遠慮されてしまった。


「相談と言えば自分の話なんですが、以前から話していた彼女と無事付き合うことになりました」


「そうですか。おめでとうございます」


「本当に色々相談に乗ってもらってありがとうございました」


「いえいえ、田中さんの話を聞くのは楽しいですから。これからもぜひ聞かせてください。楽しみに待ってます」


 どうやら本音のようで瞳が薄く輝いている。本当に人の恋バナが好きらしい。

 にっこり微笑む柊さんの表情に、これからもお世話になりそうな予感が高まった。

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― 新着の感想 ―
I enjoy this story thanks! I was really hoping to read to the point of Tanaka discovering Hiiragi's …
[一言] 更新されない感じかな?
[一言] 一気に読んでしまいました。とても面白かったです! 体調には気をつけて頑張ってください
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