第二十六章 夜明けのタイムリミット
いよいよ第二部に入ります。
相変わらず登場人物多くて申し訳ないです(汗
下部のリンク場に登場人物ガイドっぽいのがあるので、混乱時にはお使いください(笑)
第一部では
亡国の王族であった少女・スーが、第六王子でありながら次期国王であるアル王子に仕えることとなった。
スーはアル王子に、彼の腹違いの兄でありスーの保護者のような存在となっていたフィリップ王子の面影を望んだものの、アル王子はとんでもなく手に負えない人間だった。
さて、
話は中盤……
第二部のはじまりはじまり☆(ぇ
※第一部をご愛読くださり、ありがとうございました。つづけて第二部でも読んでくださる方々、本当にありがとうございます。
それでは、どうぞ。
目をとじても
そこにいるのは
君だけだと
◆◇第二部『海賊編』◇◆
第二十六章 夜明けのタイムリミット
†▼▽▼▽▼▽†
息が荒い。
(――苦しい)
彼は走っていた。ただ、ひたすらに。
夜が明ける前に、消えなくてはならない。あの遠くの空が白みはじめれば、もうすべてが終わってしまうのだ。
馬は跡をつけられやすいと思い、途中で乗り捨てた。あとは叢やら森のなかを、ただ走った。それしか、できなかった。
やがて空は色を変える。暗闇しかなかったそこに、徐々に色が足されていく。紫を為し、それからゆっくりと赤く焼けていく……。
太陽は沈むときも昇るときも赤い。空の色を自在に操り、うつくしい絵画を描いてゆく。それがたまらなく心地よい。
しかし今回だけはちがう……失敗はできない。空の変化だけが唯一時間を知れる道具であり、今の彼のすべてだった。
(間に合え――)
森を走る。空を見ながら。
『状況が変わった――明日の朝、日が完全に昇る前に、彼らは出発する』
頭のなかで、言葉が響く。何度も何度も、彼は繰り返しその言葉を響かせ、走る糧にした。ここまできて、間に合わなかったら、きっともう、すべてが終わりなのだ。
(馬鹿かもしれない……あいつを信用していいなんて根拠、なかったのに)
彼は自らを嘲るように鼻先で笑う。身体はへとへとで、だるい。
空は今や完全に白く、そして青くなりはじめていた――朝だ。
彼は半ば泣きたくなりながらも、あきらめることなどできなかった。走りつづけ、そこを目指す。
(俺はどうかしている……夢みたいなことを信じて、本当に馬鹿みたいだ)
彼が手に入れたその情報は、とても信じられないものだった。信じるべきものではなかった。それでも、信じずにはいられなかった。
自分がなにをしたいのか、わからない。
だからただ、走る。
(まだ、追いかけているのか……俺は――)
息が荒い。それでも。それでも、なお。
彼は走った。胸が苦しくなる過去を思い出し、残してきたものを思い出し、そうして、目指す。
そこにあるものが、ずっと求めていたものであることを祈って……。
春の終わり。やがて夏がはじまる。緑の木々の勾いが香り、新しい芽吹きに満ちて、世界は広がっていく。
狭い世界に囚われていた。ずっと、見ようとしなかった世界……間に合えば、きっとそれすら手に入れられるような気がした。
(許さない……思い通りになんか、させてやらない)
彼は走りながら、なんとかむかむかしてきた怒りを鎮める。これはなにに対する怒りなのか?
裏切った奴か?緑の目をした憎き人間か?それとも……それとも、なにもできない無力な自分にか?
彼は舌うちをして、さらに足をはやめた。時間は刻々と時を削り、容赦なく進んでゆく。
(いいさ――見極めてやるよ)
ぐっと足に力を入れて地を駆けながら、彼はそっと笑った。挑戦的に、ゆっくりと。
森を抜けて走る彼の髪が、太陽の光に反射して、金色にきらりと光った。




