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王国の花名  作者: 詠城カンナ
《新婚編》&《育児編》
141/150

第六話 乙女の恋バナと陛下お助け議会

いやぁ~、楽しかった(笑)


リクエストありがとうございました^^


長くなったのでわけました。

前半戦は、会話文が多い完全なるギャグっぽいコメディ(?)です。

ちょっと下品かも?


でもいいんだ、エイプリルフールだから、ちょっとふざけたの更新しても……←




第六話 乙女の恋バナと陛下お助け議会



†▼▽▼▽▼▽†



<男子会メンバー>

リオルネ、クリス、ランスロット、ユリウス、レオ、ウルフォン、ヴォルド、ウィル。



 『男子会』はひそやかに、それこそ『女子会』と比べ物にならぬほどひそやかに行われた。


「では議長、提案をお願いします」

「はい!議題はいかに陛下の欲望を抑えるか!いかに執務に集中してもらえるか、です。そこで提案なのですが――なにか?ユリウス議員」


 クリスの声にリオルネが高らかに応えている最中、オレンジ頭の手がそっと挙がった。

「はい、ちょっと言いたいのですが。一応、リオルネさまはお子様の年齢にあたります。よってこの議題に参加するにはふさわしくないと思われます」

「なにを言うのです。むしろ、精神年齢で言えばいちばんのお子ちゃまはあなたでしょう、ユリウス」

 ぴしゃりと言い放ったクリスは、そのままリオルネを促した。


「うむ、話をつづけよう。実は先日、『リオルネ少年の事件簿』として調査したところ――なんだい、ランスロット議員」


「はい、お伺いしたいことがございます。実は先日から、陛下がいやな視線を感じると苦情をもらしておりまして、近衛で捜索したのですが一向に犯人の目星もつかず、尻尾をつかむことができませんでした。今、リオルネ議長のお言葉をうかがい、もしやと思ったのですが、先日の視線の正体は、もしや――」

「お黙りなさいランスロット議員。議長に冤罪をかけることは僕が許しませんよ。それに、嫌な視線くらいなんだというのです?陛下ご自身は常にいやらしい視線を王妃に捧げているではありませんか!」

「誤解だクリス議員!陛下は……!アルは常にスーに危険が及ばないか目を光らせているだけなんだ!そうでもしないと、どこぞのオレンジ頭が王妃に不躾な視線を寄越すものだら、と――」

「おいおい待てよ、それこそ誤解だ!俺がいつあいつをそんな目で見たよ?ま、まぁ、たしかに好ましいと思っていたのは事実だが――そ、それならランスロット議員だって!」

「なにを言うか。俺の目は常にアルに注がれている。他を注視する余裕などないわ!」

「そ、そうか……」


 カッと目を見開き宣言したランスロットに、ユリウスはそれ以上なにもツッコめなかった。

 さてはて、場の空気は剣呑なものになろうとしていた――そのとき。


「どうでもいいけどさぁ~。男が愛する妻を見つめてしまうのは仕方のないことだと思うよ?」

 実際俺もそうだし、とレオンハルトが告げる。同調したのは弟のウルフォンだ。

「そうです!父上も言っていました。欲望を我慢するなと!僕は人より気弱だから、欲に忠実に、さらけ出せと言われたのです!ですから言いつけを守って兄上を見守っています!」

「……すまない、訂正させてくれ。やはり、不躾な視線は対象に怯えを与えるだろう、ああ、ものすごく」

「あにうええ~」


 仲の良い兄弟に生温かい視線を送りつつ、ヴォルドが口をひらく。


「けれど実際、女性とちがって男は抑えがなかなかききませんよね。それに新婚とくれば、しょっちゅうイチャイチャしたくなりますよ。片時も離れたくない。彼女の柔らかい身体を堪能したい。あの愛らしい唇で名前を呼ばれれば、すぐにでも天国へイケそうだ!ああ、まさに彼女は麗しい姫君!愛しています、ソフィア!」

 なんだか語り出し熱烈に想いを告げる男を遠い目をしてながめる一同。どこからともなく「わたしもよヴォルド!」と返事が返ってきたものだから驚くというより恐怖だ。



 閑話休憩。



「では、ウィルさんはどう思われます?陛下をこのまま放っておいていいのか、見過ごしてはならないのか」

「そうだねぇ。うーん、見つめるくらいなら問題ないんじゃないかな?それに、アルーは彼女にひどいことはしないよ。絶対にね」

 にっこりと魅惑の貴公子然とした笑みを浮かべて断言するウィル。皆もなぜか納得させられた。


「そりゃあそうだよな。好きな子に無理矢理して、嫌われたくないもんなぁ」

「たしかに。どちらかと言えばせがまれたいよね」

「求めあうからイイのであって、一方的はだめですね。紳士の風上にも置けません」

「アルもスーを溺愛している。だからひどいことはしない……そういうことだな」


 皆がうんうん頷きあい、希望を見出したところ。

 ウィルはにっこりしたまま、「ちがうよ」とのたまった。

 え?と一同に注目されるなか、ウィルは小首を傾げ、それはもう柔らかい笑顔で。


「だって、直接的に血は繋がっていないにしろ、スーは僕のカワイイ妹だよ?彼女が嫌がることをすれば、たとえアルーであろうとも地獄の底に落とされた方がよかったと思うくらいの苦しみを味わわせてやるけど?」


 しーん、と静まり返る。

 沈黙を破ったのは勇者ランスロット。


「そ、それは……アルは、知っているのですか」

「うん。まぁ。アルーってさ、こう、溺れると周りが見えなくなりそうだろう?だからちゃんと、気を付けるように言っておいたよ」

「へ、へぇ……」

 聞かなかったことにしよう。ウィルを除いた一同の考えが一致した瞬間であった。


 それはさておき。


「では、議題はすでに解決したようだな。これで陛下の二重人格もなりを潜めるだろう!」

 満足げにリオルネは言った。

 初対面のころとの変わり様に、当初はひどく臆したらしく、軽くトラウマだそうな。

「そうだろう?陛下には『ウィルさんが仕事に励めと言っていた』と進言すればいいんだ。それだけで、きっと陛下の嫉妬も収まるはずさ」

 たしかに、その通りだろう。

「では、僕から陛下に伝えておきますね」

 ついでに、イイ笑顔のクリスがそう言ってくれたのだから、効果は覿面てきめんであろう。


 そしてまさに文字通り、効果覿面なのであった。







 + + + +



<女子会メンバー>

スー、サイラ、ソフィア、ベロニカ、ハンナ、ドロテア、デジル、ローザ、シルヴィ


 一方、こちらは『女子会』。王宮の庭園で優雅に開かれていた。


「じゃあ、読むわね――『まずはご懐妊おめでとうございます。色気のイの字も知らなかったようなお嬢ちゃんが結婚しこどもを身籠るなんて信じられません。――中略――さて、わたしに言えることはただひとつ!夫は妊娠中、構ってあげないとつけあがることがあります。浮気にご注意ください。ああ、わたしのところは大丈夫ですよ、もちろん。浮気なんてする前にクギを刺しておきましたから……』って、デジルからよ」


「なるほど……その辺、サイラさまはどうしたのです?」

「ああ、レオは昔から手がはやく、放っておくとすぐに女子に囲まれるからね……物理的に釘を、刺しておいたわ」

 ふふん、と自慢げに語るサイラに、妹ソフィアも同調した。

「わたくしも、ヴォルドのことは心配していないのですが、義兄さまのこともありますし、姉さまを見習い物理的に対処いたしましたわ」

「……と、言うと?」

「ですから、手足を縛って磔のようにし、身体に当たらぬようにナイフを投げましたの。時には遠くから、時には至近距離で……大の男が目に涙を浮かべ許しを請う姿は見ものでしたわ!」


 めちゃくちゃ愛している人に対する仕打ちですか!というツッコミはスーの心内にとどめられた。他の者は皆、尊敬のまなざしでシラヴィンドの姉妹を見つめていたのだから。


「ハンナさまからはこうよ。『そうねぇ。わたくしの場合、妊娠してからすぐに報告したわ。うれしくって、いてもたってもいられなかったの。今でも思い出せるわ。いつもこわーい顔のユーグが、報告のときは顔をほころばせて……キスしてくれたのよ!それから――』あとは、惚気ね。ひたすら惚気ているわ」

「さすがは、ですね。隠れてラブラブですものね、あのお二人は……」

「で、では……ドロテアさんは?」

 シルヴィがおずおずと声を出す。この場にいる皆が、ドロテアの夫でるウィルの正体を知っており、聞かずにはいられなかったのだろう。実際スーも、聞きたいような聞きたくないような、複雑な気分であったが、今は興味津々である。


「そうねぇ……あたしの場合、周りは海賊たち、つまりは男だらけでしょう?まるで騎士ナイトのように終始そばにいられたわ。それよりも産んでからのほうが大変だったの」

「産んでから、ですか?」

「そう!まずは名づけね。名前の候補、どうだったか知ってる?」

「いえ……」

 と言いつつ、スーは赤毛の小猿・ティティの名づけに関する記憶を思い出していた。ティティもはじめ、スーという名にされそうだったのだ……

 ドロテアは遠い目をして語った。


「今でも鮮明に覚えているわ。出産後でとーっても疲れていたときにね、いつものさわやかな笑顔で『名前を決めたよ!アルティニオスにしよう!』って……二度見したわ、思わずね。で、さすがにそれはない、というかありえないでしょう?だから抗議したの」

「こ、抗議した結果は……!」

 サイラもソフィアも、シルヴィはともかくローザまで身を乗り出して聞いている。


「『仕方ない……じゃあ、アルーで』って……捨てられた子犬のような、キラキラした目でそう言うのよ!なんていうか、とても複雑な気分だったわ。あたしよりも弟を愛しすぎでないかしら、と嫉妬に燃えたり、むしろアルさまが不憫だわ、とか……がんばって却下したら、『そうか……それなら、男の子だけど仕方ないな。スーで。この緑の優しげな瞳なんてそっくりだ』って……!本当に、もう!どこまでも天然なんだから!」


 文字通り頭を抱え、きれいな声を苦渋に染めてドロテアは言った。

「結局決めるのに三日三晩かかったわ!まぁ、結果的に『光』という言葉を入れて、満足できる名前になったけれどね……」

「わらわにも、身に覚えがある」


 そう同調し、深刻そうに話し出したのはサイラだ。


「義弟だがな。子が産まれた翌日にさっそく登城しおって……『ご出産おめでとうございます!玉のような赤子だとか!男児だそうですね、それはすばらしい!つきましては、僕が名付け親になりたいと思いまして』……どこからツッこめばいいのかわからないほどだった。だいたい、メディルサに知らせを出してからそう時間は経っていない時期に来たんだぞ?見張っていたとしか思えないような時間差で……」

「そ、それは恐ろしゅうございますね……」

「あやつはこう言った。『一か月徹夜で考えました。お顔を拝見し、しかし、もうこれしかないと思い立ち……』そこまで言うのだ、聞いてやろうと思えば『レオーンハルト!いかがでしょう!他にはレオンハールト、レーオン、それでもだめでしたら、いっそウルーフォンなんて素敵じゃあないですか?凛々しく、たくましく、そして優しい王子に育ちますよ?』……愛しい者の言葉でもないのに、鮮明に覚えているわ」

「そうね、あのときはすごかったわ。レオンハルトさまが直々に打ちのめしてようやく帰ってくださったけれど……まぁ、赤子ながらに義兄上そっくりでしたしね。将来が楽しみだわ。結局名前には『バルト』のつづりは入ったしね」


 ソフィアも遠い目をして頷く。どこか哀愁の漂ってきたふたりに、気を取り直してシルヴィは口をひらいた。


「では、そもそもどうやってお相手を落としたのです?」

 ふむ、とサイラはトパーズ色の瞳を細め、面白そうな顔をした。

「わらわは、女だって誘いをかけていいと思っているわ。一世代前のシラヴィンドでは、一夫多妻制が当たり前だった……お世継ぎができねば側室を取るのは当たり前。カスパルニアだってそうだろう?」

 サイラの問いかけに、スーはさっと顔を青ざめさせる。トパーズの瞳が射抜くようにこちらを見て、スーはぴくりとも動けなかった。隅にいたベロニカが「あまり虐められてはかわいそうです」と進言したことで視線をそらされ、やっとまともに呼吸ができたくらいだ。

 サイラは余裕綽々と言葉をつづける。

「だからスー、そなたにも教本バイブルを渡したであろう?あれはわらわの母上から引き継がれた直伝の誘惑の仕方だ。結果は如何だった?」


 スーは言葉を失う。シルヴィもローザも口を手で覆い、目をぱっちりと見開く。どうやら知らなかったらしい。だが、心当たりはあるようで、「あの時の……!」と驚愕している。

 顔を髪の毛と同じくらい真っ赤にしてスーは懺悔するように話しはじめた。


「せっかくでしたけれど、失敗しましたわ。返り討ちにあいましたの……」

「か、返り討ち?」

「な、なにがあったのです!?」


 興味津々で聞いてくる面々だが、スーは決して口を割らなかった。

 何度も食い下がったシルヴィたちであるが、頑固なスーの態度にとうとうあきらめ、サイラから教本バイブルを譲り受ける約束を果たし、満足げであった。



 とりあえず。


 アルへの妊娠報告は、緊張するし、すこし怖いけれど。


(よろこんでくれると、いいなぁ……)





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