第一章 アオとミドリ
こんにちは。
【王国の花名】です!
今回は王子様×召使いの物語です笑
相変わらず趣味に走ってしまいそうな設定ですが(笑)どうぞあたたかい目で見てやってくださいw
たまたま(必死に)探していたら見つけたマザーグースの歌をのせます。
この世界観にちょっとあてはまってるかな、と思いましたので。
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ラヴェンダーは青 ラヴェンダーは緑
ぼくが王さまなら きみは女王さま
だれがあなたに そう言ったの?
それは僕の心が そう言ったのさ
ラヴェンダーは青 ラヴェンダーは緑
もしあなたがわたしを愛してくれるなら 僕は君を愛そう
ラヴェンダーは青 ラヴェンダーは緑
わたしが女王さまなら あなたはわたしの王さま
誰が君に そう言ったの?
わたしがわたしに そう言ったのよ
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*以上・マザーグース/Lavender's blueより。
一部(かなり?)省略している箇所があります。
この詩には何種類もあるそうで、そのなかからつまみ、選びました笑
訳はわたしがない頭で和訳(意訳?)しましたので、お気をつけください笑
もうひとつ、『サイレント・プレア〜溺唄の人魚〜』という小説も書きましたが、それはこの小説の舞台から約六年ほどまえの話です。
『王国の花名』の外伝みたいなものでしょうか?
王子×刺客の話です☆
『王国の花名』を十章ほど書きだめしてから、突如方向転換をして書きはじめたのが、『サイレントプレア』です。
よかったらそちらも読んでみてください^^
長くなりました。
それではどうぞ、『王国の花名』を!
※注意:甘々な恋愛小説ではありません。なので、そういった方面は期待しないでください。
また、歪んだ性格の人物が出てくることがございます(笑)ので、お気をつけください。
それではお楽しみいただければ、幸いです!
アオとミドリ
ただふたり
夢に眠る
◆◇第一部『王宮編』◇◆
第一章 アオとミドリ
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明るい青い瞳が、ふっと歪んだ。
「それでも食えばいいだろう」
その声は、とても残酷に聞こえた。ただ彼女は唇を噛みしめ、屈辱に耐えた。その青い瞳から目をそらさず、じっと見つめて。
「なんだその目は」
キッと眉をひそめ、青い瞳をもった彼は言う。咎めるように、その整った顔を歪めて、つめよる。
彼は彼女の瞳が、だいきらいだった。エメラルドのような、深い緑の瞳。見ただけで苛々とするのだ。
「食べ物が与えられるだけ、幸せだと思え」
ここは城の一室。明かりはなく、窓からの日の光以外はない薄暗いなか、部屋にはふたりだけ。彼は緋色の椅子に腰かけ、彼女は床に膝をつき、うなだれるような格好でいた。
足を組んで、まるで彼はショーを楽しむ人のように彼女を見ていた。彼女の目の前には、床に散らばる小さな焼き菓子。
「食べられません」
ぐっと堪えてから、消え入りそうな声で彼女は言う。
彼女の名は、スー。そう皆から呼ばれていた。
たっぷりとした赤毛は腰までのび、ゆるくひとつに結ばれており、深い緑の瞳によく映えた。よく言えばやさしそう、悪く言えば怯えたような顔つきで、いつもはっきりとものも言えなかった。
それもそのはず、この王宮では彼女に地位と呼べる地位もない。ないのに、まるで姫さまのような扱いを受けることさえあった。
「じゃあ、飢えるしかないのではないか」
ふんと鼻先で嘲るように笑い、彼は冷たく言い放つ。
彼の名は、アルティニオス・ル・ド・カスパルニア。彼はカスパルニア王国の、第六王子として生まれた。
金にきらきらと輝くブロンドの髪に、明るいガラス珠のような青い瞳、凛とした眉に高い鼻の端正な顔立ち、すらりとした身体は、人々の目をひきつけた。
とくに人々は彼の髪色をめずらしがった。太陽の光にきらきらと反射するような、夜空の月を連想させる、うつくしい髪色。ただし、皆惚れ惚れとそれを見るわけではない。なかには、毛嫌いするものさえいた。
「おまえには拒否権はない。食べられないなら、おまえについている侍女にも――」
「や、やめて……」
ぽろぽろと涙を落としながら、スーは拳を握りしめた。もう、やるしかないと思った。
床に落ちた焼き菓子に手をのばし、口に運ぶ。踏まれてぐしゃりとなっていたそれは、口のなかでぼろぼろとくずれた。
甘かった。けれど苦かった。悔しくて、たまらなかった。
「さすがは乞食だな。本当に食べるわけ?」
声をあげて笑いながら、彼は軽蔑のまなざしを遠慮することなく向けてくる。ただスーは目を伏せ、ひたすらに焼き菓子を口へ入れた。
(アルさまはただ、苛々しているだけ。わたしは、逆らってはいけない……)
悔しい。スーにだってそれなりのプライドはあるつもりだ。すくなくとも、突然部屋に呼ばれ、床に撒かれて踏みつぶされた焼き菓子など、食べたくはなかった。
それでも、彼女は逆らえなかった。
彼は王子であり、スーのただひとつの居場所なのだから。もう、ここしかないのだから。
アルは青の瞳を暗く歪めたまま、しばらく薄ら笑って彼女を見ていた。しかしやがてそれにも飽きたのか、急に立ち上がって、彼女の目の前に立った。
ぴくり、とスーの身体が恐怖に反応する。恐ろしさに上も見れない。ただ黙って頭を垂れていた。
目には、王子の紺色の靴が見えた。赤いルビーをあしらった、高価な靴だ。汚れなどなくぴかぴかに磨かれたそれは、薄暗い部屋には妙に明るく見えた。
「――いっ」
突然、髪を一房ひっぱられ、痛みが走る。
「おまえなんか、いなければいいのに」
涙がさらに増す。痛みが増す。
なぜこんなにつらいのだろうと、スーはただ黙って考えた。
(だけど、ここからは離れられない。ここにしか、兄さまはいないから――……)
彼はしゃがみこみ、スーの髪をつかんだまま顔をのぞきこんだ。そこではじめて強くまっすぐに目が合い、スーは無意識に身震いした。
青い瞳が細まり、鋭くなる。スーは涙がたまったままの緑の目を見開き、それを見つめていた。
目が、離せなかった――。