第1章 出会い2
最近バタバタで投稿遅れました。すみません。今後月曜日の10時投稿します。よろしくおねがいします。
休み時間になると明日原の元へ人が波のように押し寄せる。心なしか先ほどよりもじめっとしている。
「明日原さん綺麗。お人形さんみたーい」
「何でこんな時期に転校なの?」
「ジャンプとマガジンならどっち好き?俺断然サンデー」
「結婚してくれーー」
明日原の視線は右へ行ったり左へ行ったり、焦点が定まらず右往左往していて、不意にその視線が俺と重なる。
その顔はどこかで見覚えのある顔で……。
「哲也、おい哲也って」
肩を揺さぶられて、やっととしの声に気づいた。目を引きつけられるような容姿や雰囲気は、彼女本来が持つ気質のようなものがあった。
「んだよ?」
「あれ、ほら外見てみろよ」
言われるがままに目線をずらすと、何人かの女子をひきつれるように先頭を立つ艶やかな女子と目が合う。
「おほほ、黒木君、少しよろしくて?」
自前のピンク色のセンスを口元に当てている。目元を覗くと大きく直線的で、目尻が吊り上っている。金髪は肩甲骨のあたりまで伸びていて、縦ロールをいれた髪は、後ろから見ると3つに分かれている。
「お前4組だろ。ここ2組だぞ?」
「おーほっほっ。わたくし綾小路桜子を差し置いて、目立っている転校生とやらを耳にしたもので。ですので私自らこうしてやってきたわけです」
もう一度おーほっほと言いながら扇子を仰ぐ。
周りの女子は持ち上げるように、合いの手を入れていた。
すると外の騒がしさに気づいた明日原がこちらに寄ってきた。
「そちらは黒木さんのお友達さんですか?」
ぴょこぴょこ跳ねるアホ毛は、器用に俺と綾小路を示している。
「あぁ。こいつとは……」
「おほほ、それはわたくしが説明致しますわ」
言葉と共に綾小路の取り巻きが周りを制した。
「そう、あれは幼子のころ。私の父、ごろ丸社長がわたくしと夏祭りに行った時ですわ。木に引っかかった風船を見上げえんえん泣いていた黒木君を、助けてあげて差し上げたのですわ」
「風船を取ったのは俺だけどな」
よくわかってないような顔をして明日原は何回か首を回すと、急に子供が悪巧みをするような無邪気な笑顔を向けた。
「つまり幼馴染ということですね!」
「ああ」
「ええ」
なぜか恥ずかしくて顔を背ける俺をよそに、明日原は綾小路に向き直す。
「さっきちらりと聞こえたんですけど、もしかしてお金持ちだったりしますか!?」
「こほん、えぇそうね。わたくし、幼き日より社長令嬢としてお茶や踊り、お琴に至るまで一通り嗜む程度にはですけど」
「すごいっ、すごすぎですっっ!」
アホ毛は鰹節のように踊っている。普段はその手の話であまり褒められない綾小路は頰をピンク色に染めている。それを隠すように右手を頰に添えて、髪をかきあげる仕草を見せると、返す刀で振り返った。
「名残惜しくはありますが、そろそろ授業の支度をしなくて。おほほ、そこのピンクの方、お名前はなんですの?」
「あ、自己紹介もまだでしたね。あ、明日原未来ですっ。また話しましょうね!綾小路さんっっ」
「えぇ、よろしくてよ」
スカートをフリフリさせて綾小路は自分のクラスに去っていく。嵐みたいなやつだな。
お読みいただきありがとうございました!