プロローグ
プロローグ 『美しいひと』
着飾った姿を褒められると
私ではなく服に価値があるような気がして、私は美しい服に嫉妬しました。
魅力のある友人と過ごしていると
友人の光のせいで私が影となるような気がして、私は孤立しました。
美味しい食べ物を食べると
その食べ物に侵されてしまう気がして、私は食を制限しました。
心躍る場所へ足を踏み入れると
その場所に縛られてしまうような気がして、私は外への興味を失いました。
そうして私は、素朴を覚えました。
そうして私は、孤独を味わいました。
そうして私は、貧相な体つきを手に入れました。
そうして私は、軽蔑の目を獲得しました。
そうです。
価値があるのは服でした。
本当に魅力があるのは友人でした。
自由への道は食べ物にありました。
縛ったのは、場所ではなく自分の意志でした。
そのものには、価値も、魅力も、自由も、感情もありません。
着飾りましょう。頼りましょう。恐れないで、自分に縛られないで。
私は、自らの価値は自分で決めるものだと思い込んでいたのです。
価値は、相対的に決まるもの。 価値は、他者が勝手に決めるもの。
自らの価値は、鏡です。周りを映しますし
常に半分しか自分の姿は見えません。
鏡に映った自分は、着飾らないと美しくなりません。
鏡に映った自分の姿を、1人では後ろを見る事が出来ません。
鏡は、常に表面だけを映しますから、内側まで見てくれません。
鏡ばかりを見ていると、一点しか見えません。
着飾りましょう。頼りましょう。恐れないで、自分に縛られないで。
そうして、それに気付けた私は
世界で一番 つまらない女性から
世界で一番 素晴らしい女性へとなったのです。
まだ自分を知らない純白の少女は、とある絵本を読みました。
題名は、『美しいひと』
今ではもう、そのような古くて残酷なものが
どこにあるかも把握せず、少女は自分を知りました。
感化されやすい今の少女には、必要なものでしょう。