拝啓 天馬 私はどうやら“王の剣”を甘くみていたようですⅢ
「護衛の件なのですが、ジェラルド様にお伝えしたところ、兄との合議の日まではボクがソフィー様の身辺をお守りさせていただくこととなりました。……よろしいでしょうか?」
勿論よ! と声高く叫びたいところをグッと抑え、あくまで優雅にほほ笑む。
「ルカが護衛で嬉しいわ」
「あ、ありがとうございます! その後の日程はまだ不明ですが、ジェラルド様はそれまでに殿下より下された命を遂行されるとのことでした」
「そうなの、お忙しいのね。あまり急がずに頑張っていただきたいわ」
フェリオの命がどんなものか知らないが、あの物事に動じなさそうな男ならすぐに遂行しそうだ。人間、ゆとりは大事だと思うから、ぜひゆっくりと事を成してほしいと願ってしまう。そう、ソフィーの心の安らぎのためにも。
「でも、ルカは授業の方は大丈夫なの? それだけは心配だわ」
「鍛錬は朝と夜にできますので、ご安心ください」
なんでもないことのように言うが、かなりの体力が必要だろう。さすが、銅星二つを賜っただけあると感心しながら外へ出ると、一人の学生が緊張した面持ちで立っていた。
「あら…」
立っていたのは、ラルスだった。
昨日より顔色が悪く見えるのは、目の下に大きな隈ができているからだろうか。
(あの生地素敵ね。何を使っているのかしら?)
顔色も気になったが、次に目に入ったのがその衣装だった。
昨日見たラルスの装いはやけに派手に見えたが、今日は上下黒に、少しばかりの緑の刺繍が施された服を着ていた。それは一見すると地味に見えるが、目の肥えたものならすぐに分かるほどに上質な生地で作られたものだった。
光沢があるのは絹が織り込まれているのだろう。柔らかそうな生地は皺になりにくい加工がされており、着用じわがまったくないのに感心してしまう。
服に気を取られていると、ラルスがソフィーに近づく。
ルカがスッと、ソフィーの前に立ち、牽制のためか腰に差している剣に手をかけた。しかし、剣を握る前に、ラルスが動く。
「申し訳ございませんッ、僕が間違っていました!」
突然の最敬礼に、ソフィーだけでなくルカも驚いた。
「僕が軽率で愚かでした! ソフィー様からお借りした教本でやっと悟りました! 愛は打算ではなく、心広くあらねばならなかったのに、自分の未熟さを隠したいばかりに浅慮にも人を傷つけて侮っておりました。改心いたしますので、昨日の不敬をどうぞお許しください!」
響くような謝罪だった。普段あまり大きな声を出さないのだろう、最後らへんは声が掠れていた。
「えっと…」
またもや最敬礼をするラルスに、ソフィーは面食らう。
(うーん、あの本だけでこんなに改心するとは思えないから、やはりアラン様の影響かしら)
変わり身の早さは、どう考えてもアランからもたらされたプレッシャーのせいだろう。
元々、紫星に面と向かって中傷するほどの不埒者ではなかったラルスだ。それも当然だろう。だが、それにしてはラルスの瞳は真摯で、そして真剣だった。
「ですから、ソフィー様! どうか、これの続きをお貸しいただけないでしょうか!」
「続き?」
『モテる男の必須条件を獲得するためには!』に続きなど無い。ちゃんと完結させたつもりだったが、ラルスの中では中途半端なものだったのだろうか。
首を傾げていると、ラルスの手に持っている本が、一冊だけではないことに気づいた。
「あ…」
ラルスの手には、二冊の本があった。
本と言うには薄いそれは、ソフィーが写した『咲くも花、つぼみも花』だった。
本来の一巻と違って薄い冊子なのは、男ばかりの環境におかれた可哀想な我が心を和ませてくれる至宝の一冊として、携帯しやすいように一巻の四分の一だけを写したものだったからだ。
どうやら、薄いためか本の中に挟まっていたものを一緒に渡してしまっていたようだ。
(あ~…しまった…)
思わず、空を仰ぐ。
もう、続きは分かりますね?(*'▽')
だから、明日更新休んでいいですか?
休まないけどね!(*'▽')




