表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/220

ソフィー・リニエールというご令嬢~フェリオ・レクスの邂逅と絶望Ⅲ~


 ソフィーが書類を作るべく部屋を出ていくと、入れ替わるようにクリスティーナが入室する。


「殿下、ソフィーはなんと?」


 婚約者にしては、珍しく声に緊張があった。


 承諾したと言えば、ゆっくりと目を閉じる。長い睫を伏せるその表情には、安堵と、だが少しばかりの失意があった。


「あの子は、きっとこの大舞台の主役となり、華麗に舞って皆を驚かせるでしょう。それがとても楽しみであり、同時に心寂しくも感じます。……もう少しだけ、わたくしの傍でその愛くるしい笑みを見ていたかったですわ」


 この学院で、二人が同じ時を過ごすことはもうできない。


 クリスティーナにとっては、残り少ない学院生活だ。本来なら、そのわずかな時間を、“妹”と過ごしたかったのだろう。


「ですが、これは未来への布石です。ソフィーが、見事大成を果たせば…」


 クリスティーナが、まるで自分に言い聞かせるように言葉を紡ぎ、何かを想うようにまた目を閉じた。


 今ある幸福よりも、先の大きな幸福を得るために決意する。婚約者のそんな表情に、フェリオは考える。


 ソフィーは、クリスティーナとも約束を交わしたのだろうか、と。


 あれだけクリスティーナに心酔していれば、それも十分あるだろう。しかし、解せなかった。


「クリスティーナ、あれはなんだ?」

「あれ、とは?」

「ソフィーのお前に対する献身だ。あれは病気の領域だぞ。本題に入る前に、延々お前の話を聞かされた。本題の方が、短く終わったくらいだ」


 人の話は聞かないわ、自分がクリスティーナの婚約者だという事実にブツクサ言い、認めない、認めたくないとうるさかった。


 そうクリスティーナに愚痴れば、麗しい婚約者は輝くばかりの笑顔で言う。


「申し訳ございません、殿下。ソフィーは、わたくしの言うことはよく聞くのですが」

「だから、悪意しか感じないぞ!」


 ソフィーもだいぶ変だが、目の前の婚約者もかなり変わっていることを、フェリオは知っている。


 だが王妃として素晴らしい素質を持っていることは認めていた。だからこそ、疑わしい行動の意味を聞かねばならなかった。


「クリスティーナ、なぜソフィーと姉妹の契りとかいうやつを交わした? しかも入学初日に行ったそうじゃないか。お前……まさか…」


 なぜか、それを口にするのも恐ろしく、フェリオはクリスティーナを睨む。睨んだところで怯むような女ではなかったので、言葉を続けた。


「変なことを、考えてないだろうな?」

「まぁ、殿下。わたくしが、殿下に仇をなすとでもお思いですか?」

「お前は賢く、王妃の器を持っている。これ以上に無いほどの相手だ」

「光栄ですわ」


 賢い婚約者は、美しい微笑みを返しても、フェリオの真意をあえて汲み取ろうとはしなかった。


 それが、答えとなり、フェリオは言いたくない言葉を言わなければならなくなった。


「だが、立場を考えろよ。側室の有無は、お前が口を出せる範疇ではない」

「殿下、それは違いますわ。王妃が側室の“無”に口を出すことは許されておりませんが、“有”については口を出す権利がございます。殿下の側室となる者は、それにふさわしい者でなくてはいけませんもの」

「お前…やっぱり…」


 入学初日に姉妹の契りを交わしたのは、ソフィーの側室としての資質を見るためだったのだろう。たとえ資質が無かったとしても、クリスティーナは優秀な女だ。どんな愚鈍な女でも、一流に仕立て上げるくらいの力量がある。


「その点、ソフィーは合格です。聡明で、場を読み、機転も利きます。容姿も申し分ないですし。側室としては地位が低いのが難点でしたが、紫星として大成すれば、文句を言う者などおりませんわ。いいえ、言わせません」


 自分の婚約者の恐ろしい言葉に、フェリオは恐れおののいた。


 クリスティーナがソフィーの名を口にした時から、嫌な予感はしていた。


 この女は、未来の王妃として完璧だ。完璧すぎて、恐ろしいほどに。


「お前は俺を殺す気か! あんな、お前に心酔している女に側室になれと言ってみろ、その瞬間殺される!」

「イヤですわ、殿下。殿下に危害を加えるような者などおりません」

「アイツは誰もいなければ、俺の胸倉を掴んで凄むくらいする女だ!」

「そんな、初恋の君に対してあんまりな言いようですわ。ソフィーは、そのような行いは致しません」

「お前の前では猫を被っているだけだろう! それに、アイツには想う相手がいる。側室になどなるわけがない!」


 思わず叫べば、クリスティーナの顔色が変わった。スッと冷淡な顔になる。


「……ああ、あの会えない方ですか。親友と言っておりましたが、男性なのですか?」

「聞きなれない名前だったが、響きからして女ではないな」


 知らないのだと思って言えば、しっかり知っていた。まさか知っていながら、フェリオの側室に推すとは。婚約者の神経が分からない。


「ですが、ソフィーは会いたくても会えない方だと言っておりました。世界の端と端以上に遠いと。会えもしない人間に、怯える必要などどこにありますでしょう。女は記憶を上書きする生き物です。恐れるに足りませんわ」


 美しい笑みを浮かべながら、自信たっぷりに言う婚約者に、フェリオは頭を抱えた。


皆様、評価、ブックマーク頂きましてありがとうございます( ;∀;)

ご感想もありがとうございます( ;∀;)

ポンコツな返信ですが、ポンコツだから仕方ないと諦めて下さると幸いです。

そして誤字脱字報告を下さる方々、いつもありがとうございます!神だと思ってます。


フェリオのターンはあと一回で終わりますので、もうしばらくお付き合い下さいませ(/・ω・)/


※追加情報※

森下は基本どの感想も削除することなくご返信いたします。ですが、卑猥な単語を使われる方は全て削除致します。基本、男性AVに出てくるような単語はNGです!読んで下さる方には、まだ18歳になっていない方がいらっしゃることを考慮して下さい(*^-^*)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生前は男だったので逆ハーレムはお断りしております 完璧淑女への
― 新着の感想 ―
>女は記憶を上書きする生き物です。恐れるに足りませんわ あっあっ
[良い点] 面白い!完全無欠のクリスティーナも、よもや妖精のように愛らしい娘の中身が童貞を拗らせたオッサンだとは思うまい。
[良い点] 全然予想と違ったよ…… 百合畑ではなく政治畑の人間でしたか…… やめてよぉ!百合百合してよぉ!! 百合豚は百合がないと生きていけないんだよォ!
2023/05/19 01:33 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ