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拝啓 天馬 またもや私に僥倖が訪れましたⅧ


「お前は、やはり普通の令嬢じゃないな」

「ちょっと、久しぶりに会った私に対して、なんて言いようなの」

「その言葉はそっくりお前に返すぞ」


 言い返せば、ソフィーが言葉に詰まる。


 頬を少し膨らませている少女への、少しばかりの恋心はやはり残っていた。忘れようとした、忘れなければならない想いはまだくすぶっている。


 けれど、今日で終わりだ。


 容赦のない命を聞けば、ソフィーは自分を憎むだろうか。拒否するだろうか。


 それでも、フェリオは自分の立てた計画をソフィーに遂行してもらうつもりだった。自分のこれからの地位のために。それは誰でもない、ソフィーにしかできないことだから。


「ソフィー。俺はこの計画を遂行するにあたって、お前を最高責任者とし、そのために“王の剣”に行ってもらうつもりだ」

「……なんですって?」


 とんでもない単語にソフィーは絶句し、言葉の聞き間違いを疑った。


「お前には“王の剣”の学生たちと共に、事を成してもらう」

「ちょっと待って。“王の剣”は男のための学院でしょう! 貴方、私の胸が小さいからって男だと思っていない? これでもちゃんと第二次性徴期だって迎えたのよ!」

「ば、バカッ、なに言って…ッ」


 男を目の前にしていうセリフかと狼狽えれば、恥など一切知らぬ少女が声を荒らげる。


「バカは貴方でしょう! どうして私が男しかいない場所へ行かなければならないの! 私は令嬢なのよ!」

「まったく令嬢らしくないがな…」

「なんですって!?」

「いや…」

「大体、“王の剣”は、銅星以外は多くが貴族の子息ばかり。黒星(こくせい)なんて、子爵以上の階級を持つ子息一色じゃない。男爵令嬢の言うことなど聞くわけがないでしょう!」

「それは安心しろ。お前を最高責任者にするにあたって、俺はソフィーに紫星(しせい)を与えるつもりだ」

「し…紫星!?」


 その言葉に、ソフィーは唖然と口を開き、固まった。


 オーランド王国には、五つの色の星が名誉としてある。


 どの星が得られるかは、“王の剣”に入学する時に決まってしまう。“王の剣”は、学部毎に分かれているのだ。


 王族を守ることを第一とされる聖騎士団を育成する黒星(こくせい)

 国の経済を担う者を育成する金星(きんせい)

 国の発展のため、研究・開発を行う者を育成する銀星(ぎんせい)

 国と民のためにその身を捧げる騎士を育成する銅星(どうせい)


 これらの星は“王の剣”を卒業すれば得られるものだ。最後の色、紫を除いては。


 紫は王の色とされており、()(せい)と呼ばれる。この色を配下に与えられるのは王か、第一王位継承者だけであり、賜って初めて得られる星となる。


 この星を王が与えるのは稀で、ましてや女性に与えるなど前代未聞だ。いや、どんな星の色でも、まず女性が得られるものではない。


「過去、女性で星を、しかも紫星を賜った者は一人もいない。お前がその初代になるんだ」

「貴方…、正気なの…?」

「ああ」


 迷いの無い返事に、ソフィーの方が混乱した。


 星には一から五までの数がある。“王の剣”では、最高三つの星を得ることができ、卒業してからは武勲や文勲を上げることによって星の数を増やす。


 しかし、()(せい)だけは唯一最初から五つ星が与えられていた。


 この国の稀代の天才と言われる医科学研究所所長ロレンツオ・フォーセルは銀星、星五つを賜っていると聞く。そのはるか上の星を自分がもらうなど、さすがのソフィーも恐ろしさを感じた。


「そこまでする必要など…」

「ある。まず、貴族の中には、俺よりも王と王妃の息子である第二王子の異母弟を王に推す者も多い。俺はそれを一掃するためにも、この計画を大成させる必要がある。俺が計画を推進させ、そのために紫星を与える行為は、国民からの支持にもつながる」


 説明するその顔は、王族のものだった。幼い日、共に遊んだ友人ではなく、王子のものだった。王子らしい、利己主義的な言葉だ。


 だが、ソフィーはそれを批判などしなかった。彼が王子なら当然であり、そうでなければ、彼はいまの身分をとうの昔に奪われていただろう。


「故に、異母弟を王と推す者たちの妨害も入るだろう。その対処のためにも外部からの侵入がほぼ困難な“王の剣”は勝手がいい。“王の剣”の学生は、現王と、次の王に絶対の服従を課せられている。もし、その中で王の代弁者とも言える紫星に手を出せば、極刑は免れない。少しでもおかしな素ぶりを見せればすぐに対処できる。いや、対処する。それに、“王の剣”にいまいる学生たちは、年からいってもゆくゆくは現王ではなく、俺の下に就く者たちばかりだ。事業に協力させ、有望な人材を輩出することは俺の利益にもなる」

「言いたいことは分かるわ。けれど、それは諸刃の剣よ。力の無い女に紫星を与え、事が上手く成就しなければ、貴方は色ボケ王子と言われ、支持は急落するわ」


 クリスティーナが調べさせて自分とフェリオの繋がりを知ったくらいなら、フェリオを王座から引きずり降ろそうとしている者も、同じく紫星を与えられる女のことを調べるだろう。


 そこで幼い時に出会っていた少女だと知れば、真実とは違う噂を流される恐れだってある。


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転生前は男だったので逆ハーレムはお断りしております 完璧淑女への
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