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ジェラルド・フォルシウスの陰鬱

今回は短めです('◇')ゞ

 

 ジェラルドは館内の扉を背に、鋭い視線を奥へと向けていた。


 ソフィーを見送ってから、まだそれほど時間が経っているわけではない。銀星講師、ヴィンセントとの対戦なら、まだ中盤に差し掛かった程度の時間だ。


 そう頭では理解していても、普段よりも時の流れが遅く感じられ、歯がゆさにわずかに身じろぐ。


(何事もなくゲームが終了してくれればいいが……)


 だが昨日の今日だ。あの二人が和やかにゲームを終わらせるとは到底考えられない。

 

 不安は尽きないが、それでも今朝のソフィーの様子を思い起こせば、過度な心配は不要にも思えた。

 それほど朝のソフィーの表情は落ち着いていたのだ。


 毎朝迎えに行く度に、彼女は無表情だったり、怒りを放っていたり、なにかを悟ったとばかりに長舌を振るったり。


 そんな風に毎日忙しく表情を変えていたが、今日はまるで憑き物が落ちたかのように大人しかった。


 朝のあいさつを交わし、目的地を告げ、歩き出す。道中も会話はなかった。


 しかし、それは彼女が感情を押し殺しているからでも、なにかに思考を奪われているからでもない。

 ただ自然に、不要な会話を無理にする必要性をもう感じていなかったのだろう。


 言葉も感情も静かな彼女は、まるで空気に溶け込むかのようで。

 それは護衛中であることを束の間忘れさせるほどに、静穏な時間だった。


 そんなことを思い出していると、奥からつかつかと足早にこちらへ向かってくる姿が見えた。

 意外にも、それはソフィーではなく、レミエルだった。


「レミエル様……?」


 普段の彼は、常に早いとも遅いとも言えぬ速度で優雅に歩く。けれどいまは、まるで何かから追われているかのように足の運びが早い。


 あまり見ることのないレミエルの姿に虚を突かれていると、彼はジェラルドの真正面で足を止め、声を荒げた。


「ソフィーはおかしい!」

「なにを……」


 思わず口から零れそうになった言葉を、すんでのところで呑み込んだ。


 つい自分の立場も忘れ、「なにをいまさら仰っているのですか?」と、うっかり本音をもらすところだった。


 口元を押さえていると、次にやってきたのは当人だった。

 憤怒の声が、館内に響く。


「待ちなさいっ、レミエル! まだ説明は終わってないわよ!」


 こちらもドレスを翻し、歩調が速い。

 なぜか手には大量の紙の束を持っており、それを見るなりレミエルが気色ばむ。


「君のあの女に対する願望はもういい!」

「願望じゃないわよ真実よ! ほらみなさい、最後まで私の話を聴かないから理解できていないじゃない!」

「聴いたところで理解できるものではない。なら聴くだけ無駄だ!」

「なぜ無駄だと諦めるの?!」

「君の口からあの女の名が出るたびに虫唾が走る!」


 口論する二人の間に入ろうとしたジェラルドの足が、レミエルの一喝にピタリと止まる。


(え、それはどういう……)


 これにはソフィーも驚いたようで。

 しばらく場に沈黙が落ちたが、すぐに何かに思い当たったように口を開いた。


「まさか……レミエル……貴方……、――――クリスティーナお姉様に懸想しているんじゃないの?!」

「――は?」

「それほどクリスティーナお姉様を毛嫌いしているのは、本当は愛しているからなのではない!?」

「……なるほど。君はあの女が関わると、度し難い馬鹿になるんだな。それだけはよくわかった」


 冷ややかなレミエルの声が飛ぶが、ソフィーの方は腑に落ちたとばかりにブツブツと呟きだした。


「ヴィンセント講師もやたらロレンツオ様を敵視しているけれど、あれはもう一周回って好きなのだと思うのよね。そうでなければ、あれほど他人に強い感情を持たないでしょう。本来、好きの反対は無関心であるはずだもの。――――つまり、レミエル。貴方も、本当はクリスティーナお姉様のことが好きなのでしょう!」

「もう君は口を開くな。おぞましい」

「でも駄目よ! クリスティーナお姉様のお相手は優雅で知的で大人で、クリスティーナお姉様のすべてを支えられるような男性でなくてはならないの! 殿下ですら許せなかったのを、友人の欲目をプラスしてギリギリセーフで認めてあげたのよっ。いくら気になる相手だからといって、軽率に暴言を吐くようなお子ちゃまなんて、私の目が黒いうちは絶対に許せないわ!」

「君の目は緑だろう」


 嚙み合わない口論はしばらく続く。その姿はぎゃんぎゃんと吠える子犬同士のケンカだ。


「……お二人とも、ここがどこかお忘れですか。館内ではお静かに願います」


 この二人が自分の忠告を聞くとは思えなかったが、それでもジェラルドは諫めた。


 もっとも、二人の口論がそれで止まることはなかったが――――。





【わりとどうでもいい森下の呟き】

前回あと1話.2話で終わると記載いたしましたが、この章が終わるという意味で、物語はまだしばらく続きます(;^ω^)

さすがに、なろうで『俺たちの物語はこれからだ!』みたいな終わり方は致しませんので(; ・`д・´)(たぶん)


あと、若干ソフィーに夢を見ていらっしゃる方がおられますが、

ほらちゃんとよく見てごらんなさいな、

そいつの中身、ただの食虫植物だよ(*'▽')

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転生前は男だったので逆ハーレムはお断りしております 完璧淑女への
― 新着の感想 ―
[一言] 「君の目は緑だろう」 良いツッコミです
[一言] この章の漫画化の難しい事この上なさすぎて 文字表現と漫画表現の限界線を観察する気分になってしまうこころ
[一言] いや…食虫植物も愛嬌があって可愛い……でしょう?ムシトリスミレ系とか。 あ、ハエトリグサなの?そう……
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