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モブキャラ、はじめました。  作者: ドクターみかん
青年編
36/67

第十話 奴隷商人、ドラフ。【009,010】

009.

「とうとう来ましたか。この魔道具を作った者が。」


ドラフは僕を見て嘲笑する。

「しかし、この魔道具は私にも使える。まあ、あなたは自分から墓穴を掘った馬鹿ということですか。」


僕はエレナさんの方に向かって、持ってきた魔道具を投げる。

「ほう。初めて見ましたな。」


ドラフは髭をなぞりながら僕を見る。

「ああ。そりゃそうだ。これは僕が作ったものだからな。」


僕の投げた魔道具は空中で展開し、エレナさんを拘束している縄を切り刻んだ。


「エレナさん。そのままだと僕が恥ずかしいので服を着てください。」

僕は少し赤くなりながら、エレナさんから顔を背ける。

エレナさんは急に赤くなって身を隠し、服を着始めた。


「ふん。まあそんなものはどうでも良い。お前が何者なのかは知らないが、とにかくお前をまずは殺す。」

ドラフは魔法の詠唱を始める。


その瞬間だった。


「オウティル・マグニク・べネツ・イッチ」

エレナさんが魔法の詠唱を行った。


「一度で学ばない奴はこうなるのよ。」

エレナさんはドラフの方を向き、嘲り笑う。

そう言うエレナさんの手には、いつの間にか先ほどまでドラフが持っていたマナ整形機があった。


010.

「ドラフ。さあ、あなたはもうこれで魔法が使えない。自分で墓穴を掘って、自分の術中に嵌ったわね。」


エレナさんはそう高らかに宣言する。エレナさんは、ドラフが魔法を発動させた瞬間に、「略奪魔法」と言われる魔法を用いてドラフからマナ整形機を奪ったのである。


僕はドラフの方を見る。


おかしい。先ほどドラフはエレナさんを拷問にかける前は魔道具を持っていなかったはずだ。でも彼は幻影術をエレナさんに……


ドラフはニヤリと笑い「それはどうですかな?」と言う。

先ほどの、秋月さんとの会話の内容を、僕は思い出す。


そもそも、ドラフが何も切り札を持っていないという考え方からしておかしい話なのである。魔法が使えない環境で、自分自身も土の中に埋まるという決断をする奴はいるのか。そもそもそんな状態で、少なくともこれだけの実力者の前で、あのような大胆な行動をするか?ネビルさんや茜音さんはそもそも魔法を使うことなく、基本的には剣術を用いて対処をする。それなのであれば、ドラフは二人を無抵抗のままに抑え込んだことになるのである。


あいつは、ドラフは、必ず何かの切り札を持っている。



疑心が確信に変わった。



「我が名ドラフにおいて命ずる。その者の首を……」

そう言ってドラフはステッキを持ち上げた。


瞬間、僕は飛び出す。


「エレナさん!」


僕は無意識の内に、エレナさんを庇っていた。

僕の首から、師匠にもらったネックレスが首から外れる。

美しい鏡のネックレス。

そして、師匠の大切な弟子が「大切な誰か」のために残していった、「お守り」。僕はそのお守りを握りしめた。



暗闇の中。

僕は無意識の中に落ちる。

僕の名を呼ぶ声が聞こえる。

「スピカ!スピカ!」

しかし僕の心は黒いもので満たされていく。


「僕は、僕は。」

僕は目を見開き、エレナさんの方を向いてこう言う。




「僕はエレナさんの首を、撥ねて殺す!」

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