セミファイナル~策なんかねえよ、殴り合うだけだ~
「上空はレジェンドマンとミュウに任せるとして、さぁじゃあ始めましょっか。チェーンデスマッチ」
湘南桃花はオーバーリミッツに『吸血鬼』を持たせて。自分は肉弾戦に持ち込む気だ。
「3の型、特殊能力無効の空間」
ぎゅるるると空間に不思議な波が発生して。歌峠鈴花の春速蒼動。治護遥和の秋騎士団。祈巫照礼の冬合気道が使えなくなった。全員生身である。
桃花はニヤリと笑う。
「この空間の中で更に。4の型、型破り! 吸血鬼を使わせてもらう!」
幸か不幸か、湘南桃花は指輪のコルデーも。竜尾も銀の炎も使い方を知らなかった。準備不足と言わざる負えないが勝負は待ってくれない。
桃花の大剣と鈴花の木刀が当たる。幸い木刀は斬れずに済んだ。桃花は剣道初心者、鈴花はベテランである。年齢の差があるとはいえ。大人の体格さという意味で、桃花の方が若干有利であった。鈴花は問いただす。
「何か策があるの?」
「策なんかねえよ、殴り合うだけだ」
大人1人と子供3人とのただの喧嘩になった。すぐさま桃花の吸血鬼は引っぺがさされ手の届かない所まで飛ばされる。ボコスコバコと殴り合いの末、湘南桃花は仰向けに倒れた。
鈴花と遥和と照礼はハイタッチをして勝利宣言をした。
「よし!」
「やった!」
「これで……」
が、桃花の正念場はここからだった。倒れている状態で桃花は語る。
「あんた達解ってないわね、何故あの『人間として多元宇宙迷宮を脱出できたかを……』」
ヒルベルト空間により、時間を止める。0秒だ。0秒で4人とも動けるので殴り合いが続行される。
3人は動揺する、まだ動揺ですんでいるがそれが驚愕に変わるのも時間の問題だった。
1ダウン、2ダウン、3ダウン、4ダウン、5ダウン、6ダウン、7ダウン、8ダウン9ダウン10ダウン。
20ダウン、30ダウン、40ダウン、50ダウン、60ダウン、70ダウン、80ダウン、90ダウン、100ダウン。
1000ダウン、10000ダウン、100000ダウン。
もはや3人に笑みは無く驚愕を通り越していた。チェーンの音が鈍くジャラジャラと響く。マゾプレイ以外の何物でもなかったが。脱出率10%だか5%だかの多元宇宙迷宮を脱出した力量は本物だった。
「はぁ……諦めの……、悪さよ……。何度でも、何度でも立ち上がる。それが、あたしよ……!」
3人は殴り疲れ果ててしまった。体力の方が限界に達し膝をついについた。
3人の心が折れそうだった、もはやどっちが敵味方か解らなかった。
「それでも」
遥和が右足を抑える。
「私達3人は……」
照礼が左足を抑える。
「あなたを! 超える!」
鈴花がトドメの右パンチをお見舞いした。
脳震とう、今度は気力じゃどうにもならない『気絶』という手で倒した。鈴花は喝を入れるように言う。
「あんたの敗因はね、そこに居るオーバーリミッツを信じられなかったことよ!」
歌峠鈴花は湘南桃花の心を完全に折って超えていった。
時械炎型の効果は解け、そして時は動き出す。
上空では超気とレジェンドマンの激しい打ち合いが続いていた。