復讐者達の力技(パワー・アベンジャーズ)
迫りくる4人は解ってないが、先生である湘南桃花はなんとなく解っている。戦えば解ると。
「3の型、ヒルベルト空間! フン!」
途端に桃花は衝撃波を地面に叩きつけてフィールドを変える、いや。世界を変えたと言った方が正しい。
ヒルベルト空間任意全能の力により、天然水が乾ききった世界から。巨大な学校の1教室へと姿を変えた。椅子と机が25名ほど並べられるその教室には。アリのように小さい4人と1人が居た。景色は『黄昏』、否。夕焼けだった。外には大きな木の影が一本揺らいでいる。
その1教室の、1机の上が彼ら彼女らの戦いの舞台となった。
「場面変換にはもういちいち驚かないか、流石だな。だが常識を今一度取り戻して欲しいね」
治護遥和の秋騎士団と、祈巫照礼の冬合気道の波動弾が解き放たれる。認識が実体化したこの世界ではもはやただの色のついた魔法の弾丸にしか見えない。
「1の型、夢幻!」
右目の紋章が呼び起こしたのは、古の吸血鬼が放った。太陽の螺旋波紋の衝撃波だった。『1週間の波紋』は『その時代の無かった歴史を正確にかき消す』。
「どんなに強かろうと、『あの頃の歴史に無かった』弱々しい、軟弱な意志では砕けない」
続いて、追い打ちをかけるように。翼遊超気の夏流空手の拳が火を吹く。『夢幻』の壁を突破して。もう一撃、拳の夏流空手を火が吹く所で。
「2の型、戦鳥!」
超気の理想の先を反転して出し衝突させた。桃花は視界に超気をとらえただけで何も考えてない、オートモードだ。
それを、『見えていない所から』さらに『後追いで』歌峠鈴花の春速蒼動が木刀より炸裂する。これが桃花に命中する。
「っつ!、まぁあんたらならこれぐらい破ってもらわないと、ね」
ゆらりと4人の前に立ちはだかる1人
「あんたのその二つ眼はどっちも防御魔法よ! 他の人間ならいざ知らず、私達4人にその技を超えられない道理はない!」
「そうね、道理はない。だからこそ、この力を選んだのよ。ここに【4の型、型破り】を複合させ、今度こそあんた達に超えてもらう! それが出来なきゃ先へは進ませない!」
まるで教え導くような言い草だった。彼女は最初から、自分が負けることを前提に話を進めている。問題は【どう負けようか】と考えをシフトしている。
祈巫照礼は悟すように言う。
「あなたはそうやってまた自分を犠牲にするんですか! そんなの許せません!」
湘南桃花はカチンと来た。
「黙れ! あんたに何が解る! ずっとフワフワしてたあなたに!」
そう言って、右目の紋章【1の型、夢幻】を発動した桃花は。まるで幻術を使われたかのような錯覚を覚えた後。『現実の痛みを胸に食らう』呼吸困難になり膝をつく照礼。
「同じ痛みを味合わせる気はない、けど。これ以上踏み込む前に。降参した方が身のためよ」
照礼は苦し紛れに、やせ我慢に言い放つ。
「残念ですけど、降参するのはあなたのほうよ。ルーキー」
遥和が愛する彼女へ向けられた怒りをプッツン爆発させて技を繰り出す。
「照礼! このっ! 【英霊・騎士団】!」
黄金の色をした騎士団達が槍を持ち、治護遥和の前方を駆ける。群を成し囲まれる桃花はザクザクザクとくし刺しに成りながら、刺されたまま天へと仰がれる。刺さった槍にぶら下がりながら桃花は一言。
「なるほど、確かにお前らは『面白い』な」
ブオン。途端に騎士団達の胸の奥を緑色の色が針を縫うように。進んでいゆく。桃花を上から観たら蜘蛛の巣のような形状だった。その形状を中心点から導火線に火が点火されたように起爆する。
「3の型、ヒルベルト空間。運命の糸!」
バゴン! と騎士団達は次々と砕け散り。英霊達は砕け、その中心には『面白くないものだけが残った』。桃花は自分が面白くないものにカテゴライズされてるのが、なんとなく嫌なので英霊達が砕け散る様だけを『見せる』。桃花のさっきまで受けた傷は完全に回復していた。
それが終わった後に、遥和は上空へジャンプして。
「復讐者達の力技!」
重い、重い、重い。闇の一撃を上空から下空へ湘南桃花に食らわせようとする。『ただ者じゃない』復讐者達の圧倒的な力が湘南桃花に襲い掛かる。
「2の型、戦鳥!」
右目を閉じて、左目の紋章を浮かばせる。復讐者達の反転、秩序者達の光の重圧が治護遥和の剣芯へと揺さぶられた。教室の木の机は割れ、その下の木の地面も衝撃波により物凄い音を立てながら割れた。力の均衡は互角。そこへ……。
「4の型、型破り!」
遥和の剣先を薙ぐように、桃花の左手が遥和の前頭部を掴む。すかさずその手を放そうと剣を振ると『念じた』その瞬間。『桃花の攻撃は終わっていた』バコン! と治護遥和は地面に叩きつけられる。
「2の型、戦鳥! 遥和の理想の先を反転して先に出し終わった!」
「ぐはっ……!」




