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エンディング~世界樹『シスターブレス』~

【彼の地~星空(スターダスト・境界線スペースゼロ~】にはある種の、サッカーゲームを見終わった後のような【退場】のようなザワザワした静けさが辺りを包んでいた。

「おい、うちらアイテムなんていらねーんだけど」

「まあ私達はエレメンタルマスターだけで来たからね、超能力さえあれば十分って言う」

 それは『全王の概念聖書』『桜の王剣アンドゥリル』『炎の王盾ネブカドネザル』『力王の籠手こてマーベル』『世界樹の種』のアイテムの分け合いの話であった。

「まぁ私ら最前線組はいらないってだけで、あとから続く人たちにとっては居るからね?」

 ミュウが語る。

「む~応戦チームがこれらのアイテム持ってるのはアレだから。やっぱ挑戦チームにあげる形になるな」

「とは言っても使わないぞコレ」

「使わないなら、家にでも飾ってなさいな。家宝ってことで」

「うん、じゃあその方向で行くか」

 というわけで。

 翼遊超気ふゆうたつきは『力王の籠手こてマーベル』

 歌峠鈴花うたげすずかは『全王の概念聖書』

 治護遥和ちごはるかは『桜の王剣アンドゥリル』

 祈巫照礼いのりこてらは『炎の王盾ネブカドネザル』『世界樹の種』

 を、家で飾っておく。ということで話が落ち着いた。正直に言って、これらの武器はバランスブレイカーもいい所だったのでそういう措置にした。


 ミュウはボケーッと突っ立ってて何もしようとしない。初めて負けたのだ。全力を賭して。人生という賭けに負けた焦燥感だった。

「…………」

 治護遥和ちごはるかがミュウに語り掛ける。

「ミュウ、これからどうするんだ?」

「ん? どうって?」

「ミュウが負けた時のエンディングだよ。俺が負けた時はお前への観客の歓声があってそれっきりだったじゃないか」

「…………あ~……、すまん考えて無かった」

 どうやら己が負けることを今の今まで考えていなかったらしい。想像できなかったらしい。こんなに時間があったのに。

「昔の大戦ではその後、宴会だったわね。悔やんだって後の祭りって感じで……」

 湘南桃花が疲れに疲れ切った上体を起こす。祈巫照礼いのりこてらが治癒魔法で回復してくれたのだが、こちらもやはり負けた焦燥感はぬぐえなかったらしい。

 ミュウは悩みながら言う。遥和に語り掛ける所で……。

「すなまい【彼の地】には時間の概念がないからもうちょっと考えさせ、て……」

 そこで『四重奏しじゅうそう』と『達観者達スペクタクルズ』の面々は膝をついてしまった。

 もう体が言う事を聞かなかった。

 その場に居たヒーロー達は彼らを抱きかかえて言う。

「兎に角、地球に帰ろう」

 彼らは、【彼の地~星空(スターダスト・境界線スペースゼロ~】を脱出した。



 ……翌日、の夕焼け頃。全員はとりあえず体を動かせるぐらいには回復していた。

「ただの木を世界樹にする? まぁ、『世界樹の種』は概念系だから姿形は関係ないが~」

「うん、折角見知った木があるんだし? この子をパワーアップさせようかって。ミュウちゃん名前決めてよ」

 場所はルミネ市アドバンス地区冬梅4丁目『シスターの丘』に来ていた。そこには『名前の無いただの木』が世界の中心のようにただのんびりとつっ立っていた。

 祈巫照礼いのりこてらに憑依しているミュウはちょっと考えて、照礼に言う。

「じゃあ、世界樹『シスターブレス』」

「なんで?」

「上手く言えん、次元が違うから」

「何それ電波?」

「違うわ! どっちかというと思念じゃ!」

「ふふふ、ミュウちゃんらしくて良いと思うよ」

「……、おぬし解ってなくて笑ってるじゃろうに……」

 治護遥和が困ったように照礼に言い返す、今回戦った6人全員が居る中で。

「おいおい、お前らだけで自己完結してもこっちが困るって」

「そうよ、これから名所になるかもしれないのよ? 観光スポット」

「その世界樹って飯食えるのか?」

 ミュウが困った顔をしながら。

「えっと……簡潔に言うと。『シスター』と『ブレス』という名の楽曲をくっつけた。これ以上は言えん」

「ふーん。まあいっか。じゃあ『世界樹の種』入れるよ~」

 言うと、照礼は『世界樹の種』を入れ込む。するとただの木が一回りほどすくすくと大きくなり、世界が巡廻するように根をはる廻廊が生まれた。

 もっとちゃんと言うと。世界線と世界線が繋がってゆく回路が生まれた。まるで脈を打つように、1個の生命体のように、世界全体を巡り、廻る。

 色は【蒼】。

 各々8人は次の話題に入る。

「じゃあ記念写真でも撮ろう!」

「折角だからチョキじゃなくてグーにしようぜ!」

「ラブ&ピースじゃないの!?」

「なあなんか飯くれよ、バナナでもいいからさー」

「誰が撮るんだ?」

「ドローン」

「誰か一人顔面アップにしろ! そっちの方が面白いぞ!」

「じゃそれうちやるー!」

「お前かよ! いや別にいいけど」

「蒼葉! あんたも来なさい! 9人になるけど気にすんな!」

「じゃあとるぞ! 3・2・1……!」

 カシャ!

 それが合図とばかりに。

 何処からともなく全世界で花が光り、そこから数多の祝福の花火が上がる幻想的な風景が始まった。

 誰かが、少年少女が言った。

「「きれい……」」

 夜空の中。創造神ゲームマスターミュウ、またの名を星明幸ほしあかりさちは空中を舞いながらボソリと呟く。


「さあ、道筋は照らしたぞ。皆、……頑張れ!」


 みんなの旅はこれからも続いてゆく。

 まだまだ終わる気配がない旅路に、ここに一つの休憩地点が誕生した。

 ここで1つの幕が閉じ、そして新たな幕が上がる。あるいは人生の1ページが。それでいい。

 そうして世界は廻ってゆくんだ。

 終わり。

 補足

◆世界樹『シスターブレス』

 日本のロックバンド『ポルノグラフィティ』から2004年の楽曲『シスター』を聞き、始めて創造された『ただの夕焼けと木と広場』の本作エンディング用に昔、描かれた心象風景。

 再び主人公たちが最終回でこの地に訪れた時には2018年「劇場版ポケットモンスター みんなの物語」から『ブレス』がエンディング用の心象風景としてイメージされ書かれた。

 これら『シスター』と『ブレス』を繋ぎ合わせたものが、世界樹『シスターブレス』である。


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