6:てぇい誕生
画面に文字が表示される。
アリナはそのままの表情で固まり、西沢は何があったの?と言いたげな表情のまま額から一滴の汗が流れる。
「一つしかないんだけど、二つあるはずじゃないの?
しかもなんか星のマークがついてるんだけどこれは何?」
良く判っていない表情で問い掛ける少女。
確かに画面には一つのタグが並んでいた。
固まって動かない二人を尻目にそれを読み上げる。
「魔法少女てぇい・・・何よこれ?」
言葉にしながら疑問符を頭に浮かべる。
先ほどの説明のような判りやすいタグではなく、これだけでは意味が判らず困惑するのも無理はない。
「・・・ユニークタグ!?」
西沢が声を絞り上げる様にして呟く。
そして頭を軽く振ると、笑顔を浮かべて少女の手を取り喜びの声を上げる。
今度はその反応を見て少女がぽかーんと口を開けて呆けてしまった。
「まさかの超絶レア引き抜くなんて運が良い・・・のかな。
さてさて、その意味は何だろうか調べないとね」
アリナは画面ではなく呆けた少女の瞳を覗き込む。
何かしらの能力でそのタグの意味を調べる様だ。
そして直ぐに元の位置に戻ると、移動させたホワイトボードを西沢に持ってくるように伝える。
少女はアイスの当りでも引いた位の認識でいるが、周りの二人はそんなのお構いなしだ。
やがてホワイトボードを持った西沢が戻ってくると、マーカーを宙に浮かせてボードに何か書き始める。
―――魔法少女てぇい―――
―――生まれながらにして魔法少女である存在がついに目覚めた―――
―――かの存在は全てを空想により成り立たせる―――
―――想像せよ、そして創造せよ―――
―――そしてそれらをこの世界へと投げ放て―――
やがてマーカーが動きを止め地に落ちる。
そして二人はため息をつく。
取り残されたように少女は疑問符を浮かべっぱなしだ。
「えっと、これはユニークタグって言います。いいですか?」
マーカーを拾い上げ、ホワイトボードの空きスペースにユニークタグと書きながら説明を始める。
少女はその説明を聞く事にする。
取り敢えず予期せぬ事態であった事だけは理解できたからだ。
「通常のタグは用いる人が居れば何個でも存在します。
そう言ったタグは見ただけで意味が判るようなものばかりです。
ですが、今回出てきたこのタグの様に、一見意味が分からないものも存在します。
実はそう言う種類のタグも何人の人が持っている可能性はありますが、今回は明らかに違います。」
ここまで説明して理解度を確認するように少女に向き直る。
「うーん、とにかく珍しいモノってのは判ったわ」
困ったような顔をする少女に説明が続けられる。
「そうですね、珍しいです。
なにせこの星印はユニークタグと言って、どの世界を探してもあなたしか持っていないという印なんですからね」
「そう、ユニークタグと言うのは君だけのオリジナルタグであって、どの世界でも君しか持つことが出来ないものだ。
そしてこれを持つものは何らかの特別を得る、君は特別なんだ」
急に特別と言われる少女。
行き成りの事で理解が追いつかない様子だ。
それもそうだろう、突然あなたは特別な存在ですなどと言われても、大抵の人はそう感じないもので、それを鵜呑みにするのは相当な自信を持った人かナルシストかであろう。
「私が特別・・・どんな風に特別なのかしら?」
自分自身で確認するように問い掛けるとアリナはあっさりとこう言った。
「まぁ、取り敢えず今日から君の名前は『てぇい』だね」