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魔法少女てぇい  作者: アメミヤ
3/8

3:それは本気で言ってるの?


 まず目に付いたのは白衣を着てネクタイを締めた男。

眼鏡を掛けており手にはファイルの様なものを持っている。

次にその足元で動く黒い物体。

背中に小さな羽を生やした猫の様な生き物。

一人と一匹はドアを潜ると、意外にも足元で肉球を押し付けるようにして木製のドアを器用に閉める。


「やぁやぁ元気なお目覚めな事で、体調の方は問題ないようだね?」


白衣の男がニヤリと笑いながらからかう様に問い掛ける。

手に持っていたファイルの様なものを開き、そこに目線を落としながらベットにゆっくりと歩みを進める。

黒猫モドキの方もその下でまるで大きな欠伸をするような仕草をすると、小さな羽をパタパタさせ宙に浮かびつつその背を追う。


「覚えてるかい?アリナだよ、無事成功したみたいでよかったよ」


宙に浮かんだままの似非黒猫ことアリナが幼女の前までふわふわと飛び声をかける。

その間も白衣の男はファイルに目線を落としたまま何かを呟いている。

続けて言葉を出そうとしたアリナの頭を、幼女は片手で握ろうとして指が届かないと悟ったのか直ぐに両手に切り替えて握ると思いっ切り睨みつける。


「あー!!!あんた思い出したわ、アリナでしょ?アリナよね?

確かさっきもそう名乗ったわ、何してくれてんのよ体すっごいちっこくなってるじゃないの。

ちゃんと説明しなさいよ?

じゃないと唯じゃおかないわよ?判ってる?

本当怒るからね」


上下左右に思いっ切り揺さぶりをかけながら言い放つ幼女はこれでもかと言葉を続ける。


「大体あんた此処何処なのよ?何で私こんななってるのよ?

何処かの高校生探偵じゃないのよ?

怪しい取引見張ってたら頭殴られて変な薬飲まされた何てあり得ないでしょ。

それにえっとアレよアレ、アレどうなってるのよ、本当どうな・・・


「まぁまぁその辺にしてあげて、これ以上シェイクしちゃうとバターになっちゃうよ」


余りの勢いにさっきの笑いを若干引きつらせながら引き離しにかかる。

目の焦点があっておらず、アリナは頭に星を浮かべたままぐったりとベットに落ちる。

某落ちモノゲーで言うバタンキューと言う奴だ。


「まず君のその言葉遣いについて説明しようか、女の子みたいな口調になってるよ?てい君?」


言われてハッとする。

ていと呼ばれた幼女自身自分がそのように語っていると気が付いていなかったのだ。


「え?どう言う事よ・・・あれ?何で?私、え?私?・・・ええ??何で私??ええええ???」


疑問符をいくつも浮かべて何でも一人称を繰り返すが、どうしても言い直せないようだ。

尚も混乱する幼女に向かって正面から顔を向けると、ゆっくりと話し出した。






◇---◇






 「てい君は年齢が1歳にまで成長が逆戻りしています。

なお、女の子に性転換しているようなので、正しくはていちゃんです」


白衣の男はファイルから目を離さずさらりと言ってのけた。

当たり前かのように言葉を続ける。


「君はこれから莫大なカロリーを摂取することにより急激に成長します。

何歳位になるかは人それぞれ個人差がとても大きいので断言できません。

これは魂が元から持ってる力を最大限引き出せる体に作り替える行為、最適化と呼ぶ状況になります。

此処までは良いですか?」


ふと目線を幼女に向ける。

確認を取られた幼女は複雑な顔をしていた。

まるで何を言ってるんだと言いたげにも思える。


「理解できなくてもこれから体験するから大丈夫。

はい、じゃあこれ飲んでみよう!」


幼女は白衣から取り出される小さな瓶を目で追いかけ、そのまま気軽に手渡されるとラベルを読んでみる。

”超激カロリー摂取ドリンク ~タクワエール~”と書かれたそれを声に出さず目視すると裏の成分分析表示を確認する。

そこには”成分は国家機密・100000キロカロリー配合・各種ビタミンミネラル等たっぷり配合”と妙にファンシーな字体で可愛らしい兎のイラスト付きで書かれている。

どう考えてもゼロが多すぎないか?等と思うがきっと表示ミスで良い所1000キロカロリー程度だろうと幼女は現実逃避を行う事にする。


「まーほら、どの道今のままだと碌な生活出来ないしさっさと成長してしまいましょ?

ちまちまご飯食べながら何日もかけて大きくしていくより楽で安全だよ。

ささ、ぐいっと」


白衣の男が一度受け取り直し瓶の外すと、もう一度幼女の小さな手から落ちないよう丁寧に握らせる。

そして手で飲み物を飲む仕草をして早く飲むように促す。


「いやいや、飲むわけないでしょ?

大体怪しすぎるわよ、何よカロリー10万キロって頭おかしいでしょ?

それに国家機密ってふざけてるとしか思えないわ」


首を振り振りイヤイヤとアピールしながら否定する。

先ほどアリナでカクテルが出来そうな勢いに比べると大分ゆっくりとしたものではあったが。

度を越えた悪戯にしか思えない幼女にとってこれを飲むのは勇気がいる行為であろう。

だが、そんな反応お構いなしに白衣の男はファイルから一枚の紙を取り出すと、幼女が見やすいよう位置を低くして片手で持って見せる。


「これ、今の君の状態ね。

身体を何度も何度も作り替え続けてカロリーどころかあらゆるものがすっからかんなんだよね。

今動けてるのは魂が元々保有してる力で誤魔化してるんだけど、それが切れたら君死ぬからね?」


幼女が見せられた紙にはソウルエネルギー量測定結果と表記され、色々な数字が羅列され、一番下にはエネルギー残り3%程と推測される。と赤文字で大きく書かれている。


「これは一時間前に寝たきり状態の時に図った数値。

既に限界なんだよ、動かせない筈の体をこうも動かしている以上、君のエネルギーはものすごい勢いで減っていっている筈だ。

早く飲んだ方が良い、飲めば少なくとも今すぐ死ぬ事は無い。

それは断言するよ」


話が進むにつれて幼女の顔が青ざめる。


「え?ちょっ、とそれほ、ん・・・と・う・・・・・・ぁ・・


何か言おうと口を動かそうとするが言葉にならなくなっていく。

パクパクと餌を求める金魚よりも緩やかな動きで唇を動かそうとするがうまく動かない。

既に体の変調が表れ始めていたのだ。

手が震えだし頭に靄がかかった様に物事がはっきりと判らなくなりだし、音は遠ざかり視界は動かしていない筈なのにグルグルと回りだす。

慌ててドリンクを飲もうとするが、手が動かずそのまま滑り落ちていった。


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