魔女祭り89
さりげなくエルヴィンの傍らに近づいたカミラは妙に違和感を覚える光沢のある黒羽のコートをしげしげと見つめる・・・。エルヴィンの方から覗く伏し目がちなカミラの目元には長く美しいまつ毛が揃っていた。
「エルヴィン様・・・これは 女性の物ですね?」
「・・・」
「エルヴィン様・・・?」
「ん! ああ そうです」
カミラの斜め横顔をぼぉーっと見とれていたエルヴィンはカミラの問いに気づき慌てて相槌を打つ。
そんなエルヴィンの表情に訝しそうな視線でカミラは更に問いただす。
「このような 上質のコートをどなたがエルヴィン様に?」
「女官長殿が・・・」
「女官長様が!!?」
(女官長様ですって!!?)
エルヴィンの答えに驚くカミラの声に、部屋に入って来た時からエルヴィンの格好を気にしていたフィーネもまたあやうく声を上げそうになってしまうのだ。
「いやぁ・・・参ったなぁ・・・、先程、カミラ殿がセシリア殿達を呼びにこの部屋をいったん退出した時にも王陛下からも同じように尋ねられたのですが・・・」
「そうでしたか・・・同じ質問をしてしまい申し訳ありません、エルヴィン様」
「いや そんな事は気にしなくていいですよカミラ殿」
「やっぱり・・・目立ちますか?」
「ええ・・・」
控えめながらも興味深々といった風情で自分を見つめるカミラの他に、別方向からも自分の方を注視するセシリア達一行の視線に促がされるようにエルヴィンは事の仔細を説明し始めるのであった。
「女官長殿の部屋に呼ばれて・・・」
(デボラ女官長様もまた・・・この方のことを・・・)
カミラは少し照れながらその時の情景をとつとつと話すエルヴィンの姿を見つめながら心の中である確信にたどり着く・・・。
(私がこの地にグンヒルダ姫様と参ってから そう もう10年ぐらいになりますか・・・その間にデボラ女官長様もまた このお方・・・エルヴィン様と接する時間はあったのですよね・・・お二人の間にどのような出来事があったのでしょうか・・・)
カミラは常に、きりっとした表情でゴスラー王宮に仕える女官達を統べる黒色の服を身に着けた自分の上役であるその女性の姿を思い浮かべる・・・。
(デボラ女官長様のお人なり・・・常に完璧なお振る舞い、その高潔なお心持ち・・・確かに私は尊敬致します・・・。その女官長様が、自らこの方の外套を繕うことを求め、更に自らの衣服を衆目が多いこの王宮で貸し与える・・・。これは 女官長様 あなた様のエルヴィン様に対するお気持ちの表明と受け取っても宜しいのでしょうね・・・)
そこでカミラは、ふと考え込む・・・
(ですが・・・何故 この時に・・・)
カミラは何気なく自分とエルヴィンの反対側に並ぶ女性達に視線を移す・・・
(ああ・・・なるほど・・・そうですか・・・フフフ、そうですよねデボラ女官長様・・・)
カミラの視線の先にはエルヴィンに微熱を持った視線を向けるセシリア、フィーネ、ヴィオラの3人の姿が映った。もちろん目の不自由なセシリアは瞳を閉じたままだが・・・。
(女官長様のお気持ち・・・何となく解ります。あの方達に対しての・・・そう 『挑戦状!』 そうですよね。エルヴィン様との関係は私の方がずっと古くて親しいのだ と・・・つい今しがた知り合ったあなた方とは違うのですよ・・・と いう事でしょうか、フフフ・・・)
カミラはそこまで考えが至ると凛とした表情になる。
エルヴィンは、ちょうどその時デボラとのやり取りを説明を終えたのだがカミラの表情が変わったことに気づき慌てて尋ねる。
「カミラ殿、どうかされましたか?私の説明に何か・・・」
「いえ、ありがとうございましたエルヴィン様。デボラ女官長様とのやりとりが目に浮かぶようでしたわ」
「そうですか・・・」
「はい。カミラはデボラ女官長様の意思表明・・・確かに受け取りました」
「意思表明???」
「意思表明というか、挑戦状みたいな? ウフフフ、エルヴィン様はお気づきにならないかもしれませんが」
「はあ・・・挑戦状?」
「はい、ですから私もその挑戦状に便乗させていただきます!」
そこでカミラはにっこりと微笑むとセシリア達に視線を向け、そしてゆっくりとエルヴィンに話し掛ける。
「エルヴィン様、私のお願い事を聞いていただけないでしょうか?」
「珍しいですね、カミラ殿のお願いとあれば、自分ができる事であれば何でも」
「ありがとうございます」
とてもうれしそうに笑うカミラの姿にエルヴィンは戸惑いながらも尋ねる。
「いえいえ、それでお願い事とは?」
「私には、まだ両親が居ます」
「あっ!そうでしたか・・・と いうことはまだデンマークに御健在で?」
「ええ、覚えていただいてくれてうれしく思います」
「いえいえ、それでカミラ殿の御両親がどうかされましたか?」
「それで、両親がまだ元気なうちに一度里帰りにと・・・こちらへ来てから一度も戻ってはいませんので」
「それは、是非にも一度帰省されたほうがいい。御両親もお喜びになられるでしょう」
「エルヴィン様にそう言ってもらえると自分の背中を押してもらえるようでうれしく思います。それでエルヴィン様にお願いしたいのが・・・」
「はい」
「私と一緒にデンマークまで行ってはいただけないでしょうか・・・」
「デンマークまでですか・・・まあ、ゲートを使えば一瞬ですし他ならぬカミラ殿の親孝行のためであればお安い御用ですよ、了解です」
「ほ 本当ですか!!ありがとうございます、ありがとうございます」
「カミラ殿にそこまで喜んでいただければ、自分もとてもうれしく思います、ハハハ。それに、少しデンマークのある場所にもちょうど寄りたいと思ってたものですから」
「そうでしたか。それで・・・エルヴィン様のお言葉に甘えて更にお願いがあるのですが・・・」
「どうぞ、遠慮なさらずに。自分でお役に立てれば何なりと、ハハハ」
言葉に出すことをためらうカミラを励ますエルヴィンだったが次にカミラの発した言葉に絶句する・・・。
「その・・・そのですね・・・私の両親の許に行くときに一緒に来てもらえないでしょうか・・・こ 婚約者として!」
「えっ!!!?」
や やりました!!!
カミラさん、ついに宣戦布告です!!!
デボラさんの黒羽コートの意味を悟ったカミラさんは長年閉まっていた彼女の素直な気持ちに気づいたのですよね・・・来週はどのような展開になるのでしょうか・・・?
アクセスをしていただいた方にお礼を申し上げます。
本当にありがとうございました^^
次話も心を込めて書かさせていただきます!!!
それでは、次週もまたこのお時間にて、お会いしましょう~^^




