魔女祭り84
「陛下、姫殿下の警護に当たって私の団員を紹介したいのですが・・・お目通り可能でしょうか?」
「ん?この場でよいのか?」
「はい、この場で非公式の謁見のほうが面倒もありませんし、特にカミラ殿には姫殿下の警護に当たる私の団員の顔と名前を憶えてもらうことは必須ですので、できればこの場で・・・」
「カミラ、エルヴィンはそう言ってるがそなたに異論はあるか?」
自分の名前を急に呼ばれたカミラだったが慌てる素振りも見せずに答える。
「私めには異論などございませぬ。陛下の仰せのままに・・・」
洗練された彼女のお辞儀に満足したようにハインリッヒは頷くと
「ということだ、エルヴィン」
「御快諾ありがとうございます、陛下、カミラ殿。では、早速連れて参ります」
エルヴィンはそう言うと、姫殿下の部屋の出入り口にあたる扉に近づきそして外に出るのであった。
エルヴィンは部屋の外に出、あたりを見渡す。少し離れた円柱状の柱の陰に目当ての二人の姿を見つけると彼らに近づく。二人の方も自分に気づいたようだ。
「エルヴィン、姫様の件って・・・」
マテウスの問いにエルヴィンは軽く目だけで頷くと周りを確認する。そして声を潜めながら事のあらましをマテウスとハウサーの二人に告げる。
「そっかあ・・・姫殿下様が聖女様候補にねえ・・・」
エルヴィンの話を聞いたマテウスは何とも言えないという表情でつぶやく・・・。
「それで、二人に頼みたい事がある」
エルヴィンの強い視線に黙って頷く二人に
「お前たちに姫殿下の警護を頼みたい・・・」
「・・・」
「もちろん、ずっとという事ではないんだ。他の部隊の準備ができるまでの暫定的な措置と考えてもらってもいい」
「それって、団長・・・姫殿下様の警護って・・・ここ王宮でって・・・事?」
ハウサーの問いにエルヴィンは答える
「ああ、そうだ」
「そうだ・・・って・・・マテウス隊長、うちの団長が、こう仰ってるんですけど・・・」
「エルヴィン、姫殿下様の警護・・・これは依頼として理解していいのかな?」
「ああ、そうだ」
「仕事ととしての、依頼なんだね、王室からの」
「ああ、その通り。神聖ローマ帝国、現王陛下であるハインリッヒ3世様より直接の依頼だ。まあ、俺の方からお願いしたって事もあるんだけどね・・・」
「なら、しょうがないよね、ハウサー仕事だよ。フフフ・・・」
「仕事かぁ・・・なら仕方ないですね・・・それでいつから・・・って、聞くまでもないですか・・・」
「すまんな、ハウサー戻ってきてすぐのところ・・・。残念ながら今から直ぐに仕事に就いてもらう」
「エルヴィン団長もあいかわらず人使いが荒いなあ・・・」
「悪いな、ハハハ・・・。そのかわりと、言ったらなんだが、うちのノクターン亭で美味しい酒と料理を俺がご馳走してやるからそれで勘弁してくれ」
「うむむ・・・カテリーナ嬢の所で食事・・・了解です、マイン・シュールレイター(我が団長)!」
「エルヴィン、僕にも当然ハウサーと同じようにノクターン亭でのご馳走付きなんだよね」
「マテウス!お前はさっきもうご馳走してやるって言ったじゃないか!!」
「それは、デス・ナイトとの戦いの賭けでしょ、今夜からの手当てとは別じゃない!」
「ああー、わかった、わかったよ・・・」
「やったぁ~~。」
マテウスは苦い表情を浮かべるエルヴィンに素直な喜びの声を上げる。そして、表情を引き締めると尋ねる。
「で、エルヴィン、王室からの仕事の内容だけど姫殿下様の警護だけってわけじゃなさそうだね・・・」
「ああ、その通りだマテウス。二人ともいいか、よく聞いてくれ」
真剣な表情になった二人にエルヴィンは説明を始める。
「まずは、ベアトリクス姫殿下の警護。それに伴い、このゴスラー王宮の警護も含まれる。王宮の警護は基本レオ団長率いる近衛騎士団の仕事だが今夜のような魔物達の襲撃には俺たちが前面に立つことになる。くれぐれも俺たちは陰に回って近衛騎士団を立てるように心掛けること。だが、咄嗟の時の判断は各人の判断に任せる。陛下、並びに皇后陛下の身に危険が及びそうな場合、陛下御夫妻のお命を守る事を最優先に考えてくれ。また王宮内に勤める使用人の人達もこの王宮内では警護の対象だ・・・いいか?」
頷く二人にエルヴィンは更に説明を続ける。
「それと別に、他の聖女候補の護衛、警護の任も王陛下より勅命を頂いた・・・」
「それって、エルヴィン・・・」
「ああ、セシリア殿の護衛、警護もうちの団がすることになる」
「ヒュウーー・・・」
マテウスの問いに答えたエルヴィンの言葉に驚くハウサーが無意識に口笛を吹く。エルヴィンはそれに構わず更に言葉を続ける。
「今後、発見されるであろう聖女候補の人物全てにこの任務が当てはまる・・・」
「団長、その聖女様候補って何人なんですか?」
「セシリア殿の話によると全員で7名と・・・いうことだ」
ハウサーはエルヴィンの答えに目を丸くすると
「あと5人・・・これは・・・大仕事だ・・・」
「ハウサーの言うとおり、この仕事はうちの団の総出の仕事になる可能性が高い・・・。更に付け加えればその聖女候補を狙って、あの狂信者達が襲ってくるのは必定・・・この仕事は危険が高い・・・」
「・・・」
「ハウサーは今夜の襲撃事件について詳しくマテウスから聞いたかな?」
「はい、一通り・・・」
「相手は、一筋縄ではない輩・・・だからこそ俺達がこの仕事を引き受ける」
「いいですねぇ・・・強者の魔物・・・腕が鳴りますなあ・・・」
(やっぱりハウサーは戦闘狂か・・・?)
エルヴィンは楽しそうに不敵な表情で微笑むハウサーを見て一抹の不安と頼もしさを覚える。
「危険が高い仕事だから、報酬も期待できそうだね、エルヴィン?」
「そりゃあそうだろう、何と言っても王室からの直接依頼だからな、うんと報酬をもらわないと割が合わないよ・・・」
「うん?という事は仕事の報酬の交渉はヴァネッサが受け持つのかな?」
「うん!?おお!!そうだ、そうだ。この大仕事の報酬交渉はヴァネッサに任せよう~~彼女なら大丈夫だ全て任せられる」
「うん、そうだね。彼女なら安心だね、エルヴィンが交渉すると割に合わない報酬にいつもなっちゃうから・・・ヴァネッサはいつもこぼしてたもの・・・」
「そうだったな・・・彼女にはいつも心苦しい思いばかりさせてた・・・」
「団長、隊長、ヴァネッサ嬢が交渉って・・・それはどういう事なんですか?」
ハウサーの質問にマテウスが答える。
「あっ、そうかハウサーにはまだ伝えてなかったね、ヴァネッサ、彼女は今度うちの団の専属の渉外担当になったんだよ」
「うちの団の専属ですって???」
「うん。彼女ギルド協会の職員を辞めてうちの団に就職することになったんだ」
「おお!?」
「何でも、彼女うれしそうに、うちの団 いやエルヴィンに永久就職したいって言ってたらしい。そうだよねエルヴィン?」
「ああ、そのような事を言ってなあ・・・。今回の仕事の報酬の交渉が彼女にとってうちの団専属の渉外担当としての初仕事になる。うまくまとめて少しでもうちの団の懐・・・いや彼女自身の懐も裕福になってくれるといいんだが・・・」
「エルヴィン団長・・・懐具合が温かくなるのは私も賛成です。それは喜ばしいのですが その ヴァネッサ嬢が団長の許に永久就職したいって本当に彼女がそう言ったのですか?」
「ああ、本当だよ。俺は団の仕事はいつ辞めてもいいからって言ったんだけど、彼女は俺の所に永久就職したいって言うもんだから、俺も喜んで承諾したよ、ハハハ・・・」
「ハハハって・・・団長 彼女の永久就職の意味を」
「ハウサー!!」
そこでマテウスがハウサーの言葉を遮った。
その声に言葉を飲み込んだハウサーに、マテウスはいやいやと顔を横に振る。
「ですが隊長、この事ジェイミーの姉御が聞きつけたら・・・」
「ハウサー!!!」
更にきつい口調でマテウスに窘められたハウサーはマテウスの耳元に近づくと
(本当にいいのですか、マテウス隊長・・・後でジェイミーの姉御に怒られるのはいやですが・・・)
(ジェイミーに知られなければいいよ。それに・・・エルヴィンがどうなるか面白そうだもの ウフフフ・・・)
(はあ・・・)
ひそひそ話しをする二人に訝しそうにするエルヴィンが
「ジェイミーが 何だって?」
「いや、何でもないよエルヴィン!僕たちの傭兵団ゴルトヴォルフの懐具合が良くなればジェイミーも喜んでくれるだろうってことだよ、そうだねハウサー!?」
「え ええ、その通りです」
「ふーん・・・まあ、ジェイミーも喜んでくれそうか・・・そう そうだな・・・」
何となくすっきりしない表情のエルヴィンにマテウスが話題をかわすように問いかける。
「ところでエルヴイン、わざわざ僕たちに仕事の依頼を受けたことの報告をするだけに部屋を出てきたのかい?」
「ああ、そうだった忘れてた。マテウス、ハウサー、お前たち今から陛下の許で非公式の謁見だ。挨拶に向かうぞ!」
「えっ!?」
「王陛下に、謁見って???」
ゴールデンウイークも、あとわずかになりましたね、皆様、どうお過ごしだったでしょうか?
ハウサーさんはジェイミーさんとヴァネッサさんの今後のことを心配されてましたが、隊長のマテウスさん、あなたは楽しそうですなあ・・・。
今後、エルヴィンさんを巡るヒロインたちの華麗な戦い???どうかご期待を!!!
あっ、まだジェイミーさんは本編には登場してませんね・・・
彼女の登場にもご期待ください^^
最後にお礼を申し上げます。
先週もたくさんのアクセスありがとうございました、とてもうれしく思います。
またブクマを付けていただいた方に感謝の気持ちをお伝えします。
本当に、ありがとうございました^^
それでは、次週もまたこのお時間にて、お会いしましょう~^^




