魔女祭り83
「セシリア殿、よろしいでしょうか?」
エルヴィンは自分の発言に注視する同じ部屋にいる一同の視線を受け止めながらセシリアに語り掛ける。
「ええ、どうぞ・・・」
セシリアはプラチナブロンドの髪を揺らしながらエルヴィンの声が聞こえる方向に形の良い唇を開きそう答える。
「ただ今、ハインリッヒ王が仰られた通り今後私の傭兵団ゴルトヴォルフ(金狼)は聖女様、もしくは聖女候補の方々を今後警護、護衛の対象として行動することになります」
「はい」
「という事は、聖女様であるセシリア殿もその対象となります」
「はい・・・えっ?」
「セシリア殿が懸念されるのも無理はありません、貴女にはもうすでに護衛の任にローマ聖教会より屈強な神官戦士であるアルフィオ殿、ヴィオラ殿という二人が仕えてますから我らの護衛など不要と考えられるやもしれませんから・・・お二人の気持ちを考えると要らぬお節介だと・・・」
「い いえ そ そんな」
「それは違うぞエルヴィン殿!!」
その時、エルヴィンの発言に声を張り上げた人物がいた。ヴィオラである。
「エルヴィン殿の申し出に対し我らが不愉快になることなどありえぬ、そうだろアルフィオ?」
「いかにも、ヴィオラが申した通り我等がエルヴィン殿の申し出に違和感など持つことは絶対にありません!セシリア様の御身にあの襲撃者達がまた襲ってくる可能性を考えれば、むしろこちらから進んでお願いした方が宜しいかと」
「アルフィオ・・・」
「セシリア様・・・私は 私は今宵の出来事で自分の力の無さを痛感させられました・・・」
「ヴィオラ・・・」
「もちろん、先ほど言ったやもしれませんがこれからも己自身の修行と研鑽を積んで今以上に実力を着けセシリア様のお役に立とうと考えております。ですが、現状ではセシリア様の御身の安全を考えれば我らより遥かに強者であるエルヴィン殿の申し出を進んで受けるべきかと考えます」
「・・・二人がそういう考えであれば・・・」
セシリアは姿勢を正しエルヴィンに向き合うと
「エルヴィン様、いろいろご迷惑をお掛けするかもしれませんがどうか宜しくお願い致します」
彼女は深々と頭を下げた。
それを見たエルヴィンは
「ありがとうございます、セシリア殿。もし断られるようなら、ハインリッヒ王よりの王命ということで無理にでも承諾してもらおうと思ってましたから、ハハハ」
「そ そんな・・・」
「セシリア殿には、今宵、いろいろと自分がやらかした事が原因で不快な思いをされたと思いますから・・・ご承諾、ありがたく思います」
エルヴィンはそこで視線をヴィオラに向けると
「ヴィオラ殿、あなたがセシリア殿の事を何より一番に考えておられること、私はあなたの先ほどの言動を見ていて十分に感じさせられました。皆が賛同する中、仕える主であるセシリア殿の意向にも逆らうことを知りながらも異を唱えるあなたの態度は尊敬に値するものでした。主の意向より主の御身の立場を考慮して自分の意見を述べる・・・なかなかできるものではありませんから・・・」
「い いや、そ それほどでも・・・」
エルヴィンの称賛の言葉に照れるように言葉を濁すヴィオラである。
「いや、謙遜することはありませんよヴィオラ殿は素晴らしい心根をお持ちだ、そう思いませんかセシリア殿?」
「えっ、ええ。いつも私の事を思ってくれるヴィオラの存在は、とても心強いです」
「セシリア様・・・」
セシリアの言葉にまたもや感激するヴィオラにエルヴィンは更に続ける。
「セシリア殿もそのように仰ってますよ、ヴィオラ殿。そこで、先程の件です。ヴィオラ殿、あなたが最後まで承諾できなかったベアトリクス姫殿下の聖女候補の顕現化の事実を聖教会の使節団の方から問われても報告をしないという約束はできない・・・と、いう事です」
「うっ!そ それは・・・」
急に苦渋の表情に変わるヴィオラに
「セシリア殿の教会内での今後の立場を慮るヴィオラ殿の意思は尊重したいと自分は考えます」
「エルヴィン殿!」
「ですが、部外者の私が考えるにローマの使節団に姫殿下の事実を報告する事がセシリア殿の立場を悪くしないという事に関しては少々疑問を感じる・・・」
「そ それは どういうことだエルヴィン殿?」
エルヴィンの言葉に少し気色ばむヴィオラに
「例えば、使節団の方、そう 枢機卿からセシリア殿に他の聖女候補の所在を確かめられたと・・・その時はセシリア殿は姫殿下の存在の件はお話になりませんよね?」
エルヴィンはセシリアに問う。
「はい、申しません」
きっぱりと宣言するセシリアの姿にエルヴィンは頷くと
「その後でも先でもいいのですが、ヴィオラ殿に使節団のどなたかが同じように他の聖女候補の存在を尋ねて来たときにヴィオラ殿が姫殿下の存在を報告してしまったら事実の異なる報告になってしまいます・・・そうなると逆にセシリア殿の立場が・・・」
「あっ!!!」
「ええ、そうです。何故、セシリア殿はその事実を報告しなかったと・・・ね」
「うっ・・・」
「ですが、使節団がこの地を去ってから姫殿下の事実を知ったとしたなら特段に聖教会からセシリア殿を糾弾することもないと自分は考えますが・・・」
「・・・確かに・・・」
考え込むヴィオラの顔を見つめながらエルヴィンは更に続ける。
「それと、直接的な物言いでヴィオラ殿は気を悪くするやもしれませんが、あなたが一番大切な方、セシリア殿の御身の安全をハインリッヒ王が私に命じていることも配慮していただけるとありがたいのですが・・・」
「・・・」
ヴィオラは暫しの間、考え込んでいたがやがて面を上げ
「そうだな・・・エルヴィン殿の申すとおりだ・・・使節団がこの地に居る間は姫殿下様の件は口外はせね・・・」
ヴィオラはそう言うとハインリッヒ王に姿勢を向けると頭を下げる。
「ハインリッヒ王陛下、陛下の御配慮にも気づかず勝手な言上、誠に申し訳ございませんでした。姫殿下様の件、ローマよりの使節団からの問いがあったとしても報告はけっして致しませぬ。陛下に対する非礼な発言、重ねてお詫び申し上げるしだいです」
「よいよい、頭を上げよヴィオラよ。そちが納得してくれれば余も心安いというものだ」
「はっ、ありがたき仰せ、感謝の言葉もございません」
ヴィオラはハインリッヒ王に謝意を述べるると頭を上げエルヴィンに問いかける。
「しかし、使節団がこの地を去った後、教会側から聖女候補の存在を確かめられれば私はその時は姫殿下様の件を報告するやもしれんがそれについては良いのかエルヴィン殿?」
ヴィオラから尋ねられたエルヴィンはセシリアに視線を移すと
「セシリア殿、使節団が当地より去った後にはいつでも聖教会に報告されても宜しいかと」
「宜しいのでしょうか?」
「ええ。陛下、アリスティッド卿、宜しいですよね」
頷く二人を確認してからエルヴィンはセシリア一行の他の二人にも声を掛ける。
「と、いうことですからアルフィオ殿、フィーネ殿も了承のほどを」
「承った」
「はい」
同時に朗らかな声で同意の声を上げた二人にエルヴィンは微笑みかける。
「だが、エルヴィン殿。貴殿は先ほど王陛下にずっと姫殿下様の件は他言無用にしてもらいたいと言っておったのではないか?」
ヴィオラが怪訝そうにエルヴィンに問いかけてくる。
「ああ、今でもそう思ってますよ。ですがいずれ姫殿下の件は世間に流布されてしまうでしょう・・・そうであればこそ姫殿下の警護、護衛の役目を陛下にお願いしたのですから・・・」
「エルヴィン殿・・・」
エルヴィンは何か言いたげなヴィオラに頷くと大人達の会話を黙って聞いていた少女に優しく微笑むと
「姫殿下の御身は、このエルヴィンが、いや我が傭兵団ゴルトヴォルフが必ずやお守り致しますから・・・」
「エルヴィン・・・」
ベアトリクスも嬉しそうに答える。
(本当に、エルヴィン様はベアトリクス姫殿下様のことを大事に思われてますのね・・・)
二人の様子を羨ましく思いながらセシリアの付き人のフィーネは眺めていたのだが、ふと自分の主である聖女様の不審な表情と仕草に気づいた。
(セシリア様・・・どうかしましたか・・・?)
自分の一番の友である付き人のフィーネの視線に気づかずセシリアは自分の心が弾むのが抑えられなくなっていたのである。
(え エルヴィン様が護衛に・・・私の警護で護衛・・・って、それはこのゴスラーから私が去ってからもずっと続くのでしょうか・・・)
セシリアさん、可愛いいですねえ、ははは^^
皆さん、GW、ついに突入ですね平成最後になり令和最初のGWです、どうお過ごしでしょうか?
先週もたくさんのアクセスありがとうございました、感謝!感謝の気持ちをうまく伝えれません^^
この物語を楽しみにしていただいてる全ての皆様にお礼を申し上げます~~^^
本当にありがたく思います^^
それでは、次週もまたこのお時間にて、お会いしましょう~^^




