魔女祭り82
「エルヴィン殿・・・」
思いがけないエルヴィンの賛同の言葉にヴィオラの表情に安堵の気持ちやエルヴィンにすがるような視線が浮かぶ。
「ヴィオラ殿がセシリア殿の事を慮っての発言、その言葉には真摯な気持ちが溢れていて聞いていた自分も気持ちが良くなったほどです」
「え エルヴィン殿・・・」
ヴィオラはエルヴィンの言葉に感動のあまり涙ぐみそうになる・・・。
「陛下、僭越ではございますが私の考えを述べさせてもよろしいでしょうか?」
エルヴィンはそこで姿勢を正し、ハインリッヒに発言の許可を求める。
許可を求められたハインリッヒは傍らに立つアグネスをちらりと一瞥すると、彼女は何故かうれしそうに表情を緩めている。それを見たハインリッヒは内心で考える。
(后は、セシリアの説得をエルヴィンから頼めばうまくいくとさっきは言っておったが・・・実際はセシリアは了承したが神官戦士のヴイオラが反対しておる・・・いったいどうするつもりだエルヴィン・・・)
「許可するエルヴィン、お主の存念を申してみろ」
「はっ、それでは・・・。私は姫殿下が聖女候補になってしまったという事実をローマ聖教会使節団がここゴスラーから去るまで知らせないという陛下のお考えには反対です!」
きっぱりと言い切ったエルヴィンに室内に居合わせたすべての人間の視線が集まる。目の不自由なセシリアでさえも閉じられた瞳のままエルヴィンの声が聞こえる方向を見つめている・・・。
(な 何を言ってるんだ君は!!!)
「エルヴィン!君は本気で言ってるのかい?」
アリスティッド卿が珍しくエルヴィンに対して気色ばんだ声で詰問する。
「本気だよ、アリスティッド卿」
エルヴィンはアリスティッド卿の強い口調に意も介さず穏やかな表情で答えるのであった。
二人のやりとりを体を震わせながら聞いていたヴィオラは
(エルヴィン殿は私の気持ちと同じ考えだった・・・)
胸中にてつぶやきながら彼女の心は震えるように喜びがはじけている・・・しかし、続いてエルヴィンの口から出たエルヴィンの言葉に彼女でさえも驚愕することになる。
「陛下、私はベアトリクス姫殿下の御身の安全を第一に考える一傭兵としての立場で申し上げます」
「聞かせてみろ」
「はっ、姫殿下の聖女候補になってしまったという事実を使節団が当地を去るまででは報告しないというだけでは不十分です。できうることならこの姫殿下の事実は今後ずっとローマ聖教会側には伝えるべきではないと」
「そ それは、どういう事だエルヴィン殿!!!」
つい、声をだしてしまったヴィオラの視線は先程までの尊崇の目とはうって変わって非難の視線になっている。
「ヴィオラ、黙りなさい!エルヴィン様のお話の途中です」
「はっ、も 申し訳ありません・・・」
セシリアに叱責されたヴィオラは不承不承にも引き下がる。
エルヴィンはセシリアに向けて目だけで会釈すると更に続ける。
「姫殿下の件は、聖教会だけでなく諸外国は言うに及ばず、帝国内諸侯国にさえも内密にする必要があると私は考えます」
「諸外国や諸侯にまでも・・・続けろ、エルヴィン」
「はっ、その理由は姫殿下の御身の安全ということです」
「・・・」
「陛下、今宵起きた事件の顛末を思い出してください。あのサザーランドの使徒と名乗ったソティリオという狂信者は陛下の御前で魔道王国立国の宣言をしただけでなく公然と魔物まで引き連れてこのゴスラー王宮を襲ってきたのです。またその間にて、あの道化の狂信者は聖女であるセシリア殿の存在を認めるや彼女を連れ浚おうとしました・・・あ奴の口ぶりからすると自分達の尊師であるサザーランドとか申す者の完全復活のためセシリア殿の身体を何か利用するような口ぶりでした・・・」
そこでエルヴィンは少し間をおきセシリアを見つめる。彼女はその時の事を思い出したのであろうか心持ちその身を強張らしてるようだ・・・。
「想像するに、聖女、もしくは聖女候補になってしまった人物は今後、その存在が知れるとあ奴等に狙われる可能性が高い・・・ですから姫殿下の件があ奴等に知れると・・・」
「また、襲撃される・・・ということだなエルヴィン?」
「御意にございます」
「となるとますますベアの件は他言無用・・・」
ハインリッヒはゆっくりとヴィオラに視線を移す。それに気づいたヴィオラは怯んだように顔を伏せる。
「ヴィオラよエルヴィンの申す事、余はもっともだと断じるがそちはいかが思う?」
「わ 私も そ その 仰せの通りかと・・・」
「ならば、ベアの件、聖教会に内密にしてはもらえないであろうか?」
「そ それは せ セシリア様の今後聖教会での立場を考えますと・・・」
「ヴィオラ、私の身の事を案じてくれるのはうれしく思いますが、ここは王陛下様の御心に沿うようにしてくれませんか?私達が何故にこの地まではるばるローマよりまかり越して来た理由を思い出してください。大天使ミカエル様よりの聖託を叶えるため聖女の候補者を捜していただくための御助力をお願いするためだったでしょう・・・幸いにも王陛下様は快く聖女候補者の捜索を受諾していただけました、その王陛下様のたってのお願いを私の教会内での立場などという些細な事でお断りする理由にはなりません・・・わかってくれますかヴィオラ」
「・・・」
ハインリッヒの願いにも頑なな様子を崩さないヴィオラにセシリアは言葉を尽くして説得を試みるが彼女は承服しきれてないようだ・・・。
「陛下、お願いしたいことがあるのですが!」
その時、エルヴィンがギクシャクしたその場の雰囲気を払拭するような明るい声でハインリッヒに言上する。
「うん?なんだエルヴィン、申してみろ」
「はっ、ぶしつけで厚かましい申し出なんですが・・・」
「はっ!?今更なんだエルヴィンよ」
「我が団、傭兵団ゴルトヴォルフを姫殿下の警護役に仰せ使ってはいただけないでしょうか?」
「お前の団をベアの警護に・・・」
「はい、図々しいお願いですが・・・今宵の出来事を省みますとあの狂信者達が再度ここ王宮を襲撃するような事態になるとレオ団長の前で心苦しいのですがこの王宮の守備力に不安を感じています」
エルヴィンはそう言うと、レオに向かって申し訳ないとばかりに頭を下げる。それを見たレオは
「おお!それは心強い!!!エルヴィン殿旗下のゴルトヴォルフが姫殿下様の警護を引き受けてくれれば何と安心なことか!!!」
レオは姿勢を改め、ハインリッヒに向き直ると
「陛下、我が近衛騎士団の力不足で今宵の襲撃者に対する対応の拙劣さ・・・誠に申し訳ございません」
レオは、そう言うとハインリッヒに深く頭を下げる。そして
「王陛下のご家族を守護する役目の我ら近衛騎士団の実力の無さを棚に上げ陛下に対し不遜なお願いをすることに誠に心苦しいのですがエルヴィン殿、エルヴィン殿旗下のゴルトヴォルフに姫殿下の警護役への申請、近衛騎士団団長レオ・ガイアー、切にお願い致すしだいでございます」
「レオ団長・・・ありがとうございます・・・」
エルヴィンはハインリッヒに真摯な気持ちで頭をさげ、お願いするレオの姿にうたれる・・・。
レオはエルヴィンの言葉に顔を上げると
「いや、お礼を言うのは自分達の方だよ、エルヴィン殿。貴殿やマテウス殿がたまたまこの場所に居合わせなかったら今晩のあの魔物達の襲撃によるこの王宮の被害がどんな事になっておったか・・・最悪、王陛下のお命の危機さえあった・・・それを防いでくれたのはエルヴィン殿、貴殿のおかげだ」
「レオ団長、褒め過ぎですよ。たまたま魔物達に対して自分達が戦い慣れてたというだけであって、近衛騎士団も魔物達に対する戦いを準備して慣れれば自分達より遥かに強いと、正直に思いますが・・・」
「いや、どんな相手にも対応して戦えるというのがエルヴィン殿達の強みであろう」
「二人はこう言っておるが、エルヴィン達をベアの警護役にと要請するにあたって何か問題はあるか、ジャンよ?」
レオとエルヴィンの話を聞き終えてハインリッヒはアリスティッド卿に問う。
「いえ、特に何も問題は無いかと。ただ付け加えれば、エルヴィン達の役目は姫殿下の警護はもとより、この王宮の警備までもその仕事として要請を上げれば更に万全かと」
「それはそうだな、エルヴィン、それで良いか?」
「はっ、ありがとうございます。それでまた更に、お願いしたい事があるのですが」
「うん?なんだ?」
「陛下は、セシリア殿の依頼を受けて聖女捜しに協力されることをお約束されました」
「そうだ」
「その聖女捜索の役目に更に発見した彼女達の保護と護衛の任も自分達にその仕事を要請してはいただけないでしょうか?」
エルヴィンはハインリッヒにそう言うと、何となく気まずそうにしているセシリアとヴィオラ達の方に視線を向ける。
「それは・・・構わんが」
「ありがとうございます、陛下!!!本当に陛下は名君です!!!」
「はっ!?どういうことだエルヴィン?」
本当に嬉しそうに自分を褒め称えるエルヴィンにハインリッヒは不審そうに尋ねる。
「陛下の、今のご英断でセシリア殿やヴィオラ殿も今感じておられる苦衷から開放されるやもしれませんから、ハハハ」
「えっ!?」
エルヴィンの笑い声に呆気にとられる一同であった。
セシリアさんやヴィオラさんの悩みを救う手立てとは・・・何なんでしょうか?
次週もご期待ください~^^
ブクマを付けていただいた方にお礼を申し上げます、本当にありがとうございました^^
うれしいです^^
この物語にアクセスしていただいた全ての皆様に感謝の気持ちを!!!
すごく励みになります!!
ありがとうございました~^^
それでは、次週もこのお時間にてお会いしましょう~^^




