魔女祭り81
(素敵な女性だ・・・盲目の聖女・・・その評判は嘘ではなかったようだ・・・)
エルヴィンはベアトリクスを優しく包み込むように抱擁するセシリアの姿を見て、しみじみと詠嘆をもらす。
(あの慈愛に包まれた表情をみていると・・・そうだなぁ・・・聖母様のイメージに近いか・・・)
エルヴィンはセシリアに会ってからまだ半日も経ってないというのに彼女に対する自分自身の評価がどんどん上がっていることに気づいていない・・・。
(ん、なんだ?)
ベアトリクスに何か言われたのであろうか、驚きの表情を浮かべたセシリアの顔が、エルヴィンから見てもよく分かるほど紅潮してゆく・・・
(ベア姫がこちらを見てるが・・・)
「ひ 姫殿下様 そ それは どういう・・・」
「うん、セシリアはエルヴィンの事が好きなのかな・・・って」
「・・・」
ベアトリクスはエルヴィンの方に視線を向け、ニコリと微笑むと
「あっ、エルヴィンもこっちを見てるよ!」
「えっ、ええ!!」
セシリアは動揺している・・・思いもかけない質問をベアトリクスより投げ掛けられ、彼女はどうその質問に答えていいのか・・・そもそもハインリッヒ王より呼び付けられこの部屋に入り、王より新たな聖女候補が見つかったと述べられその聖女候補がベアトリクス姫だったとつい先程知ったばかりなのだ・・・。確かに言われてみれば先刻、ベアトリクス姫が悪い予知夢にうなされているという事は聞き及んでおり姫が聖女候補かもしれないとちらりとセシリアの頭の片隅をよぎったのは事実なのだが・・・。
(え エルヴィン様もこの同じ室内に・・・そ その私の ち 近くにいらっしゃるのでしょうか・・・)
ハインリッヒの言葉にまだ少女であるベアトリクスの事が不憫に思えて咄嗟に王の許可を取りベアトリクス姫を抱擁してしまったセシリアだったが今自分が居る室内に誰が居合わせているか目の不自由な彼女はわからないでいたのであった。
「わ 私は え エルヴィン様の事は そ その とても・・・頼もしく思ってますし・・・ですがまだお会いして間もないという事もあって・・・そ その、お互いの事を・・・もっとよく知り合ってからじゃ・・・」
「でも、セシリアはエルヴィンの事、好きなの・・・?、嫌いなの・・・?」
「き 嫌いでは・・・ありま・・・、むしろ そ その・・・」
追い詰められたようなセシリアが小声で、とても小さな声でつぶやこうとしたその時、
「姫殿下様、セシリア様、お話を遮るようで申し訳ございませんが、王陛下様がお言葉をされようとしていらっしゃいますが・・・」
「ふぃ、フィーネ!」
助かったとばかり安堵の表情に変わったセシリアが救い主の名を呼ぶ。
ベアトリクスとセシリアの二人に一番近く控えていたフィーネが困っている自分の主のために助け舟を出したのであった。
「姫殿下様、この話の続きはまた致しましょう」
「う うん・・・」
フィーネはそっと小声でベアトリクスにそう告げると体を向き直し、完璧なお辞儀で二人のやり取りを見守っていたハインリッヒに頭を垂れる。
「セシリア司祭、余の娘のためにそなたが今見せてくれた思いやり、本当に感謝致す。この通りじゃ」
(セシリア様、王陛下様が頭を下げられております)
フィーネのお辞儀に促されたようにハインリッヒがセシリアに感謝の気持ちを述べ、更に頭を下げる。
その有様を、フィーネはそっとセシリアに告げると。
「王陛下様、もったいない仰せでございます!どうか、お顔を上げられてください」
「うむ。その厚情に更に甘えるようで申し訳ないのだがひとつ余からの願いを聞き遂げてもらいたいのだが・・・」
「どのような事でしょうか?」
「この場の事、ベアが聖女候補になってしまった事を他言無用にしてもらいたい・・・。無論、同じ聖教会の人物にたいしてもだ」
ハインリッヒはセシリアにそう告げると視線を彼女の傍にいるフィーネに向け、更に部屋の入り口近くに立っているアルフィオとヴィオラの両神官戦士に移した。
「王陛下様、では、この地に滞在しているエリプランド枢機卿をはじめとする使節団の方々にも報告はしてはならないとの仰せでしょうか?」
「うむ、その通りだ・・・」
「王陛下様、その理由をお聞かせ願えないでしょうか?」
「正直に申すと、我が娘が聖女候補になったことを枢機卿達との交渉の場において彼等がその事実を利用して聖教会に有利な立場に導こうとするのは困るのでな」
「政の政争の事案になってしまう・・・と、いうことでしょうか?」
「うむ・・・」
「聖教会が姫殿下様の聖女様候補になった事を利用して・・・聖教会にとって利を得ようとするのを王陛下様は危惧されていると・・・そう理解してもよろしいのでしょうか?」
「そう受け取ってもらっても構わぬ。そなたにとっては心外かも知れぬがな」
「・・・」
厳しい表情で考え込むセシリアに、ややあってハインリッヒは語りかける。
「ただ、そなたには伝えておくが何もこれからずっとベアの事を聖教会に黙っておれとは申さぬ」
「それは・・・」
「できれば、使節団がこの地を去るまで黙っておいてくれればと余は考えておるのだが」
「使節団の方々がこの地を去るまでですか・・・」
セシリアが更に考え込む・・・彼女の美しい鼻梁に憂いが立ち込める。エリプランド枢機卿には自分がこの地に来た理由を説明している、聖女候補の捜索にハインリッヒ王の助力を求めていることを。枢機卿からいずれ他の聖女候補の存在を尋ねられるのは必定・・・だが助力を求める相手のハインリッヒ王からの願いを拒絶することは憚られる・・・。やがて彼女は決断したように顔を上げると
「王陛下様、その申し出、承りたいと思います」
「セシリア様!!」
彼女の受託の言葉に色めくアルフィオとヴィオラの神官戦士達にセシリアは顔を向けると
「いいのです。使節団の方々が当地を去るまでベアトリクス姫殿下様の件、他言無用ですよアルフィオ、ヴィオラ」
「しかし、セシリア様!それは聖教会に対して不遜な行為かと!!」
セシリアの判断に珍しく異を唱えるヴィオラに
「よせ、ヴィオラ。セシリア様のご決断だお前が咎める筋合いではない!」
「だが、アルフィオ。この件が後々教会側に知れたらセシリア様の立場がどうなるか分からぬ貴様ではないであろう!」
「いいのですよヴィオラ。私の事を気遣ってくれてありがとう」
「せ セシリア様・・・」
セシリアの事を思いやるヴィオラはまだ承服できてななさそうである。
「セシリア司祭、余の願い聞き遂げてくれた事に感謝する」
「いえ、私のほうこそ陛下に対してぶしつけに質問を返した非礼、お詫び申し上げます」
(やれやれ、何とかセシリア殿は受け入れてくれたか。これはエルヴィンの出番はなさそうかな)
ハインリッヒとセシリアのやりとりを見つめていたアリスティッド卿は一人安堵するが
「セシリア様、私はやはり承服しかねます。自分の方からはあえて申し上げることは誓ってありませんが、聖女様候補者の発見の件は、尋ねられれば私は正直に姫殿下様の事を報告させていただきます!!」
「ヴィオラ!」
「ヴィオラ、お前!」
決然と宣言するヴィオラに驚愕の声を上げるセシリアと同僚のアルフィオに彼女は
「すまぬ、アルフィオ。私はやはりセシリア様の今後の立場やその身を案じると嘘はつけぬ」
(しまった!!、融通の利かぬ人物がここにいた・・・)
アリスティッド卿は悔やむ・・・が、その時
「アハハハ、ヴィオラ殿、あなたが言う事も、もっともです」
(おいおいエルヴィン、君はいったい何を言い出すつもりなんだい・・・?)
困ったような表情のアリスティッド卿の視線の先には上物の女性用の黒羽コートを身につけたエルヴィンの愉快そう顔があった・・・。
さっすがは、ヴィオラさん!!!
彼女の存在が波乱を呼びましたね^^
さて、この結末どうなるのでしょうか?
本日もたくさんのアクセスありがとうございました^^
本当にうれしく思います。
次週もこの物語をがんばって書き込みますのでどうかご期待を^^
それではまたこのお時間にてお会いしましょう~~~^^




