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魔女祭り80

「ヴンターバライッヒング・スバリエラ(結界)!」


 ホトが結界魔法の呪文を唱えると、一同が集うベアトリクスの室内にしばしの間、静寂が支配する。


 やがて、その静けさを破るようにハインリッヒは言葉を述べる・・・。


「セシリア司祭、そなたをここに来るよう命じた理由なのだが・・・」


「・・・」


「実はな、そなた以外の聖女が見つかったのでな・・・その報告を致そうとしたにほかならない」


「へ 陛下!?もしや・・・」


「うむ、おおかたそなたも察しておるであろう・・・我が娘、ベアトリクスのうなじの後ろ部分にスティグマが顕現してしまった・・・」


「陛下・・・御心中・・・お察っし申し上げます」


 セシリアは心をこめてハインリッヒに同情の言葉を述べる。


「そなたの真心のこもった言葉・・・感謝するぞ・・・。さりながら、何故にこのいと幼げな何も特別な力など持っていそうにない我が娘が聖女候補に任じられてしまうのか・・・この子が・・・ベアが不憫でならぬ・・・」


「陛下・・・」


「ああ、すまぬな・・・これは親馬鹿な繰り言として受け取ってもらってもよい。同じ境遇にあるそなたを前に言うべき事ではなかったな・・・許せ・・・」


「陛下、私に謝ることなどありません!一人の親としてご自分の娘の行く末を案じる事に対して誰がそれをとがめだてできるでありましょうか!」


 凛とした表情でそう答えるセシリアにハインリッヒは勇気付けられたのか彼の瞳に力が籠められる。


「そう・・・そうだな、そなたの言うことはもっともだ。弱音はここまでだ、逆に考えればこの世界を守護するために選ばれた聖女の一人が余のすぐ近くに存在するのが分かったのだ、これは僥倖と考えねばならぬ!」


「よくぞ申されましたな陛下!この老骨もまたでき得る限り陛下のためにご助力させていただきますぞ」


 ハインリッヒの言葉に日頃冷静なホトが珍しく意気込むと


「ホト殿だけではありませんぞ、陛下!非才ながら臣、レオ・ガイアーも可能な限り陛下のためにこの身を使わせていただく所存」


 近衛騎士団団長のレオもまたホトの言葉に追随する。


「ホトにレオ!、おぬし達のその気持ち、余はうれしく思うぞ。引き続き余の治世のため、そち達の力を頼りにさせてもらうぞ、よいか!」


「はっ!!!」



「陛下、申し訳ございません」


 高揚するハインリッヒ主従の雰囲気を壊さぬよう控えめにセシリアが声をあげる。


「いかがいたした、セシリア司祭?」


「この場で、お許しをいただければ姫殿下様のお近くに参りたいのですが?」


「うん?ああ、構わんぞ」


「フィーネ」


 セシリアはハインリッヒの承諾を得ると信頼する付き人の名を呼ぶ。


 名前を呼ばれたフィーネはその場で一同に頭を下げるとセシリアの手をそっと引き、ベアトリクスの許まで案内する。


「セシリア様」


 フィーネに促されたセシリアは瞳をとじたままベアトリクスに向き合うと


「姫殿下様、失礼を・・・」


 優しくそうささやくと、両手を広げベアトリクスを抱き寄せるのであった。


「せ セシリア・・・」


 ベアトリクスは突然セシリアに抱擁されて最初は戸惑っていたようだったがやがて彼女の胸元に顔をうずめると小さく・・・小さく・・・嗚咽をあげる。


「セシリア・・・セシリア・・・ウッ、ウッ、ウッ・・・」


 セシリアは彼女の小さな背中をただ黙って優しく撫でている・・・。


「わ 私・・・聖女様に・・・」


「大丈夫・・・大丈夫ですよ、姫殿下様。聖女様候補になったからといって今までの生活が特に変わるという事もありません。ですから、今まで通りにお過ごしください」


「そ そうなの?」


「はい。ですが、その時がくれば一緒に頑張りましょう」


「その時は・・・怖い思いをするの?」


「そうですね・・・怖い思いをするかもしれませんね」


「怖い思いは嫌・・・、セシリアは怖くないの?」


「私も怖いです、今日だって何度も怖い思いをして泣きそうでした」


「せ セシリアも!?」


「ええ、そうですよ。でも私は一人ではありません、いつも私の側に居て目の不自由な私のお世話をしてくれるフィーネや、私を守ってくれるヴィオラやアルフィオが居てくれます。彼女達が私を勇気付けてくれてます、だからどんなにも怖い思いをしても頑張れると思ってます」


「そ そう・・・」


「姫殿下様にはあんなにご立派なお父上様や義母上様がいらっしゃるではありませんか、それにいつも姫殿下様のお世話をされてるカミラ様もいらっしゃいます」


「うん・・・」


「そして何といっても、姫殿下様にはとっても頼りになる強い方がいらっしゃいます」


「頼りになる強い人・・・?」


「はい、そうです。お分かりになりませんか?」


「・・・エルヴィン?」


「ええ、そうです。私が今宵、悪人にさらわれそうになった時に助けてくれた方がエルヴィン様でした・・・」


「エルヴィンが、セシリアを悪人から助けたの?」


「はい。それどころかこの宮殿を襲ってきた凶悪な魔物達もエルヴィン様がやっつけてしまわれました。とても とてもお強いお方ですエルヴィン様は・・・」


「魔物達をエルヴィンがやっつけた・・・エルヴィンって、強かったんだ・・・」


「ええ、それはもう。私は目が不自由なのでこの目で確かめれませんでしたが、フィーネやヴィオラやアルフィオ達もエルヴィン様の強さ、凄さに驚いてました」


「そうなんだ・・・エルヴィンって強いんだ・・・」


「私は、今日ほどこの目が不自由なのを残念に思った事はありませんでした。エルヴィン様の雄姿がみれなくて本当に残念でしたから・・・。そのエルヴィン様が姫殿下様の事を大切に思われてるんですからこれからも姫殿下様が怖い思いをしてもあの方、エルヴィン様ならきっと姫殿下様を守っていただけるでしょう・・・」


「うん、そうだね。エルヴィンが居れば大丈夫だよね、エヘヘヘ」


「ええ、そうですよ。頼もしいエルヴィン様がいらっしゃるのですからどうか姫殿下様、御安心くださいね、私はそんな姫殿下様が羨ましく思えますから」


「うん、分かった。これから怖い思いをしてもきっとエルヴィンが助けてくれると思って頑張ってみる」


「はい。同じ聖女様候補として一緒に頑張りましょう」


 セシリアは元気になったベアトリクスの体温の温かさに安心したように彼女を抱きしめる両腕の力を抜いたその時、ベアトリクスが少し小声で問いかける


「せ セシリアは エルヴィンのこと、好きなの?」


「え えっ!??」



 




 

ここで、ここで、それを聞きますかベア姫(苦笑)


ホトさんがわざわざ結界までしているお部屋で何やらガールズトーク?ですか・・・


どストレートのベア姫の問いに、恋愛経験値が少なさそうなセシリアさんがどう どう答えるのか・・・


次週のお話にご期待を^^


最後に、お礼を申し上げます。


先週もアクセスをいただいた方、全ての皆様に感謝の気持ちを、本当にありがとうございました。


次週もまたこのお時間にて、お会いしましょう~^^





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