魔女祭り76
「え エルヴィン?」
黙ったままのエルヴィンの顔を不安そうにベアトリクスは覗き込む・・・。
「あ これは 失礼を姫様。カミラ殿、ありがとうございました」
エルヴィンの言葉にカミラは頷くと姫の襟元を優しく整える。
「エルヴィン、私の首の後ろに何かあるの・・・?」
エルヴィンはベアトリクスの不安そうな瞳を見つめ彼にしては珍しく答えに時間がかかる。
「エルヴィン・・・」
そんな彼の姿に更に不安を募らせるベアトリクスがエルヴィンの名前を呼ぶ・・・。
するとエルヴィンは優しい微笑を浮かべながら不安そうな少女に告げるのであった。
「姫様、おめでとうございます」
「えっ!?」
「え エルヴィン!!??」
呆気にとられたように不思議そうな顔をするベアトリクスの呟きと同時に王陛下夫妻もまた同時に驚きの声を上げた。
エルヴィンは王陛下夫妻に顔を向けると ご安心を と言うように二人に頷くと
「姫様、お喜びください。ベアトリクス姫様は 大天使ミカエル様がお認めになられる聖女様にお成りになられました」
「せ 聖女様・・・?」
「はい、その証拠として姫様の首の後ろ部分に聖女様の証となるスティグマ いや わかりやすく言うと痣のような物がうなじの部分に浮かび上がってるのがみえます」
「大天使ミカエル様???スティグマ? 痣???」
「はい」
「その痣は醜くくはない、エルヴィン?」
「人それぞれは感じ方は違うでしょうが、エルヴィンは姫のその痣をとても誇らしく感じられます・・・」
「そ そう?よかった・・・エルヴィンがそう言うなら私も誇らしく思えるかも・・・」
「そうですよ、聖女様は誰もが成れる訳ではないのですから」
「そう そっかあ・・・私が 聖女様かあ・・・え へへへ・・・」
「ただ姫様、エルヴィンは少し心配があるのです・・・」
「心配?」
「せっかくミカエル様が姫様は聖女様だとお認めになられたものの、それはずっと いう訳ではないとエルヴィンは考えます」
「・・・?」
「姫様がこれから聖女様に相応しい女性かどうかミカエル様は遠い天上界からご覧になられてると思いますから、姫様がこれまで通りカミラ殿を困らせることをしたり、言ったりすれば聖女様の証を取り上げることもあるかと・・・」
「え えええ~っ!!!」
「ですから、姫様は今まで以上に素敵なレディに成られないといけませんね、ハハハ」
「もう、エルヴィンのいじわる!!」
(エルヴィン様、ありがとうございます・・・怖くて 不安でいっぱいだった姫様を元気付けてくださって・・・)
カミラは二人のやりとりを見てエルヴィンにそっと感謝するのであった。
「ベアよ、エルヴィンの申すとおりだ」
「ち 父上様」
穏やかな表情になった愛娘にハインリッヒは声をかける。
「カミラをはじめ、お前の付き人たちにあまりわがままを言うでないぞ」
「は はい」
しょぼんとするベアトリクスに
「まあまあ、陛下。ベアは今までも充分周りの人達に気配りしてましたわよね、ベア」
「はい、お義母上様の言うとおりです!わがままばかり言ってません」
「ホホホ、これからもその気持ちを大切にねベア」
「は はい」
血の繋がらない妻と娘の仲の良さを目の当たりにしたハインリッヒも知らずに相好を崩していたが、やがて自分を注視する腹心の視線に気づく。
「ジャンよいかが致した?」
声を掛けられたアリスティッド卿は王に近寄ると声を潜め絶対の忠誠を誓う主に存念を伝える。
「陛下、姫殿下様のこの件 セシリア殿にお伝えすべきでしょうか?」
「うん?それはどういう事だ?。余は彼女に聖女捜索の件に対しては全面的に協力すると告げておるのだが・・・」
「はい、それはもちろんのこと。ただ、今現在ローマより他の使節団がこの地に参っております。セシリア殿一行の口から姫殿下の件が彼等に知られると・・・」
「知られると何か不都合な事があるとそちは考えるのか?」
「断言はできませんが、姫殿下様が聖女様の一人だということが公にされるとそれをもって聖教会より何らかの取引の材料に使われる事を愚臣は心配しております・・・」
「ふーむ・・・ホトはどう思う?」
ハインリッヒは自分の知恵袋の老人に問いかける。
「アリスティッド卿の危惧も言われてみれば理解できる。確かに当地に参った理由はセシリア殿一行とローマ聖教会使節団では異なるのは明らかじゃが・・・さりとて同じ聖教会という組織に属するという手前、情報を共有するということは別に不自然でもないからのう・・・。ただし、今すぐにそれをもって交渉の材料にするとも思えぬが・・・」
「ホト様のお考えに私も賛同致します。ローマからの使節団に関しては今すぐにどうという事はないやもしれませぬ、が、今後この聖女 いや聖女様と成られた姫殿下様の存在をローマ聖教会が自分たちの利のために利用するやもしれないのです」
「ふむ、なるほどのう・・・」
急に声高になった室内にきょろきょろするベアトリクスを見た皇后のアグネスは場の雰囲気を和らげようと夫である王に提案する。
「陛下、政に口を挟むのは、はばかれますがここは当事者のベアが信頼するエルヴィンの考えもお聞きになられたらと・・・」
「おお、それは余も考えておったところだ。エルヴィン、そちはどう考える?」
「セシリア殿に姫様の件を伝えるべきかということですか?」
「うむ」
エルヴィンはそう聞きなおすと見上げるベアトリクスを見つめそして王に答えるべく姿勢を改める。
「自分の考えは、セシリア殿に姫様の聖女認定の件は伝えた方が良いと。できれば今すぐにでも!」
「おいおいエルヴィン、君は!」
エルヴィンの発言に驚いてしまい陛下の問いに対しての言上中だということをすっかり忘れてしまったアリスティッド卿が口を挟んでしまう。
「し 失礼を致しました陛下!!!」
慌てて己の失態に気づき、深々と頭を下げるアリスティッド卿にハインリッヒは咎めることもなく
「よい、気にするなジャン。それでエルヴィンよお主がそう考える理由を述べよ」
「はっ、ではお言葉に甘えまして陛下。ではアリスティッド卿」
名前を呼ばれたアリスティッド卿は面を上げ友人である傭兵の言葉に耳を傾ける。
「国の政を司る卿の姫様を思う考えには俺も前面的に賛成だ。聖女という存在になってしまった姫様が政争の道具に使われるのは俺も断固として許しがたい・・・それにだ」
と、言ってエルヴィンはベアトリクスに視線を移し優しく微笑み頷くと
「今宵あの晩餐会での事件を思い出してくれ・・・あの魔道王国立国などとふざけたことを陛下に伝えに来たあの道化者・・・あいつはこれからも間違いなく聖女とされた人間を襲い、そして浚いに来る。それを防ぐためにはローマ聖教会だけにに聖女の存在を知らせないだけでなく、他の諸侯や諸外国にもその存在や彼女達の住んでいる場所さえも秘匿したほうがいい」
「君がそこまで分かっているのなら」
「だが、卿よ」
エルヴィンは再び声を上げたアリスティッド卿をなだめるように語る。
「そのために姫の存在をセシリア殿に伝えないという考えには反対だ・・・申し訳ないが・・・」
「エルヴィン、僕は何もセシリア殿にずっと姫の存在を隠すつもりはないんだ。せめてローマからの使節団がこの地から戻るまでだと考えている」
「卿の考えは理解した。されど今すぐにもセシリア殿に伝えたいという理由なんだが・・・」
「うん、その理由とは・・・」
ベア姫は聖女様に・・・彼女は今後どんな過酷な体験をするのでしょうか・・・。
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さて、来週 とても気になるエルヴィンさんが語るその理由とは・・・。
では、次週もこのお時間にてお会いしましょう~^^




