魔女祭り72
(木のいい匂いがする・・・)
若者は案内された席に座りながら食事を取るこの部屋を見渡している・・・。
(全て、新しい角材か・・・かなりお金がかかったんだろうな・・・)
彼はこの宿の女将とその娘が隣村まで金策に行った帰りに野盗に襲われたことを思い出す。
(宿としてはそう大きくはないが、ご亭主やあの奥さんの思い入れがよく伝わってくる造りだ・・・)
同じ色合いの角材で統一された部屋の色彩は見る者の目を楽しませ、それでいて安らぎを与えてくれる構造になっておりこの宿の主や女将の心がこもったもてなしの気遣いがこの若者には充分伝わってくるのであった。
(ん、 風が出てきたかな?)
コトン、コトンと窓の外からかすかに聞こえる物音に若者は窓の外を眺める。窓の軒さしにでも吊るされていた飾り物が風にあおられて音を立てているのであろうか・・・。
(うん?これは!)
何気なく外の景色を見ていた彼は突然驚きの表情を見せる
(この窓・・・ガラス張り・・・ガラスで出来ている・・・)
この時代はガラス自体が高価なもので窓ガラスを使用している場所といえば教会か王室、もしくは諸侯の領主クラスの邸宅ぐらいにしか使われてない時代だったのである。
(驚いた・・・まさか まさかこんなひなびた村の小さな宿屋でお目にかかるとはね・・・)
若者は改めてまじまじとガラス窓を見つめる・・・と その時、
「気づいていただけましたか?」
「あっ、ええ!!」
若者のそばにエールとつまみが盛られた小皿を持った女将が声を掛けてくる。
「フフフ、ありがとうございます、気づいてくれなかったら少し残念でしたので。でもエルヴィン様が気づいていただいてくれて安心しました、案内した甲斐がありました」
「ええ、自分も今、気づいたばかりです。この ガラスの窓・・・珍しいですよね・・・?」
「はい、主人と私の二人の強い意向でして。ちょっと無理をしたのですが どうでしょうか・・・?」
「いや、驚きましたがとても素敵です。今は夜ですが日中であれば外の景色が眺めれますしこれは評判になる事、間違いないでしょう」
「まあ、エルヴィン様にそう言ってもらえれば主人もさぞ喜ぶことでしょう。もちろん、私もですが・・・あ、申し訳ございません、エールとおつまみをお持ちしました、遅くなりすみませんでした」
「いや、お気になさらずに。何せ突然の宿泊者の登場でしたから、支度もされてなかったでしょうから。ああ、それとこの窓ガラスだけではありません、この食事を取る部屋の内装の、なんとも言えない落ち着きがあってそうだな・・・統一された木目の優しさに・・・うーん・・・うまく表現できないけど・・・やすらぎ そう やすらぎを覚えます。とっても良いお宿だと自分は思いますよ」
「そのように言ってもらえると・・・本当にうれしく思います・・・本当に・・・」
「い いや、それほど感謝されると・・・」
若者は潤んだ熱い瞳で感謝の言葉を述べる彼女の視線に耐えかねたかのように視線を外すと
「では、せっかくですのでお酒をいただきますね、ちょうど、喉も渇いてきたもので、ハハハ」
「はい、お食事をお持ちするまでゆっくりとお召しくださいね、それではまた・・・」
お辞儀をして戻る彼女の後姿を見つめながら若者は思い出す。
(そういえば、この宿の名前を聞いてなかったなあ・・・)
彼はエールの杯を口に寄せ、一口飲み干すと窓ガラスの外を眺める。
彼しか居ない部屋には他に物音も聞こえない・・・ただ、窓の外からコトン、コトンとかすかに壁をたたく飾り物の音が聞こえるだけであった・・・。
少し短めでしたが、書き手が好きな時間がゆっくりと流れるシーンでしたので・・・区切りよくさせていただきました。
読み手の皆さんに今回のお話しの情景はどのように映ったのでしょうか・・・?
ブクマを付けていただいた方にお礼を申し上げます。
ありがとうございました^^
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最後にこの物語を楽しみにしていただいてる全ての皆様にお礼を申し上げます!!!
今週もアクセスありがとうございました~^^
次週もまたこのお時間にて、お会いしましょう~^^




