魔女祭り68
「どうぞ、アリスティッド卿、お入りになってください」
デボラの了承の言葉を聞き終えるや否や女官長室の扉を開けアリスティッド卿は部屋の中に入るとホトとエルヴィンの姿を確認する。その時、黒色の女性用の外套を着ているエルヴィンの姿に怪訝な表情を浮かべたがいつもの穏やかな口調でデボラに謝罪の言葉を述べる。
「女官長殿、案内も乞わず不躾にお部屋に伺ったことにお詫びを申し上げます」
「それは構いませんが、案内も乞わずに来られたという事はこちらのお二人に急用ということでしょうか?まさかまた魔物達の襲撃が!?」
彼女の魔物という言葉に身構えるホトとエルヴィンである。
二人からの無言の問いに頷くと、アリスティッド卿はデボラに答える。
「いえ、それはありません。急ぎこちらに伺ったのはベアトリクス姫殿下の件で参った次第です」
「姫に、何かあったのか卿!?」
慌てて問い質すエルヴィンにアリスティッド卿は眉間に焦燥感を滲ませながら答える。
「ここで説明するよりとにかくエルヴィン、私と一緒に姫殿下様の部屋まで来てもらえないかな?」
「了解だ」
「ホト様もご同行をお願いできませんか?」
「うむ、言うまでもなかろうて」
「では、女官長殿慌ただしくお邪魔して申し訳ございませんでした」
礼儀正しく女官長にお辞儀をして部屋を出ようとするアリスティッド卿に続こうとしたエルヴィンだったがデボラの視線を感じ立ち止まると
「デボラ女官長殿、これはありがたくお借り致します」
エルヴィンはそう言いながら着ている黒色の外套の袖口をつまむ。
「少し窮屈かもしれませんが無いよりはましでしょう、気になさらずに使ってください」
「はい」
「女官長殿、お邪魔したのう。わしも退室すると致そう」
「ホト様、こちらこそお呼びたてしまして申し訳ございませんでした」
「なんの、では。行こうかのエルヴィン」
「ああ」
その時、
「エルヴィン様!お聞きしたいことがあります!!!」
ホトと一緒に部屋を出ようとしたエルヴィンを意を決したようにユイーザが呼び止める。
エルヴィンは声の方向に振り返ると、必死な表情で自分を見つめている彼女の姿があった。
「うん?ユイーザさん、聞きたい事というのは・・・」
エルヴィンに見つめ返され顔を伏せてしまったユイーザを見て何か感じるものがあったのか
「すまない、二人は先に行ってくれないか後で直ぐに姫の部屋に行くから」
エルヴィンは部屋の外に出たアリスティッド卿とホトに断りを入れる。
「なるべく早く来てねエルヴィン」
困惑の表情を浮かべながらもチラリとユイーザの表情を見たアリスティッド卿は普段通り微笑をたたえてエルヴィンにそう念を押すのであった。
「ああ、すぐに行くよ」
アリスティッド卿とホトの二人を見送り部屋の扉を閉めたエルヴィンは顔を伏せたまま肩を震わせているユイーザに再度優しく尋ねる。
「また、何かソティリオの奴の事で思い出した事があったのかな?」
「い いえ違います。その 申し訳ございませんお忙しいところお引止めしてしまって・・・」
「いや気にしなくていい、、じゃあ 自分に聞きたい事というのは・・・」
ユイーザは促されるように顔を上げると
「あ あの エルヴィン様・・・以前というか、かなり昔にヴェルニゲローデの村に立ち寄られたことはありませんか・・・?」
「ヴェルニゲローデ・・・」
ユイーザの突然の質問に戸惑いながらも記憶を呼び起こそうとするエルヴィンにユイーザは
「はい、ヴェルニゲローデの村から少し離れた街道で出会った母親と小さい女の子の二人の親子連れの事を覚えてはいませんか・・・?」
「母親と小さい女の子の親子連れ・・・」
「その親子はそこである通りがかった男の人に助けてもらったのです・・・その人にとって見も知らぬ通りすがりの他人だったはずなんです・・・それなのに・・・そ それなのに・・・ヒクッ ヒクッ・・・」
ややあって、小さく咽び泣き始めたユイーザの言葉を反芻するエルヴィンだったが
「えっ、まさか あの時の・・・あの時の ひょっとして あの時の小さな・・・女の子・・・って!」
思い出したのである、その少女の髪の色は目の前で咽び泣く侍女と同じく赤みのかかった金髪だったことを・・・。
皆さん、連休はどうお過ごしでしょうか?
ユイーザさんとエルヴィンさんの邂逅シーンは次週にて^^
ベア姫のその後の様子も気になりますが、来週までお待ちを・・・
最後にお礼を、この物語を楽しみにしていただいてる全ての皆様に感謝の気持ちを・・・
本当にありがとうございます^^
それでは、次週もまたこのお時間にてお会いしましょう~^^




