魔女祭り67
「えっ?いや いくらなんでも女官長殿に自分の外套の繕いをしてもらうわけには・・・」
「そんなに気にする事はありませんわ、それにこれが初めてというわけではないでしょ、エルヴィン殿」
「は はあ・・・それは そうですが・・・」
「さあ、早くお脱ぎなさい。今夜中には仕上げておきますから」
「では、お言葉に甘えさせてもらいます・・・」
「うん、素直でよろしい。フフフ・・・」
デボラの言われるままにエルヴィンは外套を脱ぐと
「お手数を掛けますが、お願いしますデボラ女官長殿」
恐縮した表情で礼を言いながら該当を彼女に手渡すのであった。
デボラは柔らかい表情でエルヴィンから外套を受け取ると手際よく畳むとそして改めてホトに問う。
「ホト様、ユイーザの件の報告は私の方から陛下や近衛騎士団にお伝えしても宜しいのでしょうか?」
彼女の顔はいつも通り、威厳に満ちた表情になっている。
「うむ、侍女殿の件はわしの方から陛下には報告しようかのう・・・エルヴィン」
「ん?」
「お主もわしと一緒にこの件は陛下にご説明申し上げろ、よいな?」
「了解だ、レオ団長にも報告しておこう」
「うむ」
「あの・・・あの デボラ女官長様・・・」
その時、不安そうな細い声が・・・
「ユイーザ、何かお二人に申しあげたい事がまだあるのですか?」
ユイーザはデボラに問われ、ビクリとしたように一瞬体を竦める。
「あの あの 私へのお咎めは どうなるのでしょうか・・・」
エルヴィンが声の方向に視線を移すと、両肩を震わせながらもユイーザがデボラを見つめている。
「私としては、ユイーザあなたには引き続きこの後もお仕事をしてもらいたいと考えてますが・・・ホト様はどう思われますか?」
「わしとしても、女官長殿のお考え通りで良いかと存ずる。一応、わしやエルヴィンの見立てでも他に邪悪な呪いの魔法も掛けられてはなさそうであったからのう・・・」
ホトはそう言うとエルヴィンに目を向ける。
「ああ、その通りだ!」
エルヴィンはホトの視線に頷くとユイーザの前に立つ。
「ユイーザ、君は何も悪くはないよ・・・さっきも言ったけど君は 被害者だったんだからね・・・だからお咎めなんてあるはずが無い、安心して・・・。それでいいですよね女官長殿」
「お二人が、そう言ってくれるのであれば私としては異存はありません」
「もし君の事を不審に思う人がいたなら自分がきっちりと説明するしね、陛下には宮廷魔術師殿と自分も詳しくご報告するつもりだから・・・大丈夫だよ・・・」
「あ ありがとうございます・・・ありがとうございます・・・ウッ・・・ウグッ・・・」
「よかったね、ユーイ!!!」
「うん、ありがとうクラウ・・・」
手を取り合って喜ぶ二人の侍女の姿を優しく見守るデボラの顔をエルヴィンは見つめている。するとその視線に気づいたデボラは少し驚いたかのように瞳を大きくする。彼女は、うんうんと頷きながらホトとエルヴィンに近づくと頭を下げる、そして
「先程も申し上げましたが、ホト様、エルヴィン殿、お二人のお心遣いに本当に感謝いたします」
デボラは改めて二人に感謝の言葉を述べるのであった。
「いやいや、そんなに大層な事をわれ等はしたわけじゃない、そうじゃろエルヴィン」
「ええ、そうですよ女官長殿。デボラ女官長殿にそこまで感謝されるとこちらの方が恐縮してしまいます」
「ホッホッホ、そういうことじゃ女官長殿」
二人の言葉に更にまた頭を下げるデボラにホトは
「さてと、われ等はこれで戻ることにするかのう。陛下にもご報告をせねばならぬし・・・女官長殿の用件はこれでお終いかの?」
「はい、ホト様。お呼び立てしてしまい申し訳ございませんでした、ありがとうございます」
「じゃあ、エルヴィンよ」
「ああ」
エルヴィンはホトに相づちをうつとデボラに向き合う
「デボラ女官長殿、その お手数をお掛けします。また伺わせていただきます」
「ええ・・・」
デボラは挨拶するエルヴィンの身体を思い出したかのようにまじまじと見つめると
「エルヴィン殿、少々お待ちになって!」
デボラはそう言って別室に入るとやがて戻ってくる。その手には黒い衣服が・・・
「エルヴィン殿、今夜はこれを外套の変わりに着ていなさい」
デボラはそう言うと手に持った衣服をエルヴィンの後ろにまわり手慣れたしぐさで背中から着せるのであった。
「いくら宮廷内とはいえ、外套が無くては寒いでしょうに、それにその血が滲む傷だらけの衣服はあまりにも・・・見目がよろしくありませんから・・・」
「え!?で ですが、こんな高価そうな女官長殿の上着が汚れてしまいます!それこそ、血の痕や自分の汗とか!!!」
デボラはエルヴィンの言葉に耳を貸さずに彼の前に立つと襟元を揃え始める。
「うーん・・・やっぱり女物では小さいですか・・・これでも私は女にしては大きいほうなんですが・・・」
デボラは口元に指を当て、エルヴィンの姿をしげしげと眺める。
「あの・・・じょ 女官長殿・・・」
「うーん・・・」
デボラ思案しながらはエルヴィンの胸元に近づくと、エルヴィンの両腕を持ち上げる・・・。
「やはり、脇の部分はちょっときつそうね・・・」
エルヴィンは間近に立つデボラの温もりと彼女から漂ういい香りに慌てる
「女官長殿・・・そ その・・・近いのですが・・・」
「うん?あら? ウフフフ・・・」
デボラはそう微笑むと顔を離す。
「まあ、こんなものかしら。さっきよりはましね」
「女官長殿・・・本当に汚れてしまいますよ・・・宜しいのでしょうか?」
「いいんですよ、気になさらずに着てください、フフフ・・・」
何故か嬉しそうに自分を見るデボラの視線を避けるようにエルヴィンは改めて着せられた彼女の上着いや外套を見る。襟元は狐の毛皮なのか銀色の襟巻きがあり光沢のある羽毛が散りばめてある黒色の着衣と相まってその対比の美しさが素人目にもわかる高価な外套であった。
(ユーイ・・・見た???)
(ええ・・・)
(女官長様の・・・あのエルヴィン様にしてあげるあの仕草・・・)
(ええ・・・)
(ええ・・・って、ユーイ?そればっかり!!)
(ええ・・・)
(ゆ ユーイ!?あなた、どうかしたの!???)
(な なんかねクラウ・・・わ わたし・・・)
(ど どうしたの・・・)
(デボラ女官長様と エルヴィン様が あの あのように近い距離で親しくしているのを見ていると・・・)
(ユーイ・・・あなた、まさか、エルヴィン様のこと!!!)
クラウディアが親友の秘めた気持ちに気づきかけたその時、女官長の部屋の入り口の外から慌しくノックの音と呼び掛ける声が
「デボラ女官長殿、失礼する。アリスティッドですがこちらにホト様とエルヴィンが伺ってると聞き及んだのですが」
皆さん、新年明けましておめでとうございます!!本年も宜しくお願い申し上げます。
今週のお話の感想はどうだったでしょうか?デボラさんの大人の女性の魅力にエルヴィンさんのたじたじですね^^それにユイーザさんも自分の気持ちに気づいた?彼女のこれからの動向にも目は離せませんね^^
年末から年始にかけてアクセスしていただいた皆様、本当にありがとうございます。
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それではまた、次週もまたこのお時間にてお会いしましょう~^^




