魔女祭り65
エルヴィンがホトと並んで王宮内にその姿を見せると、小走りに駆け寄ってきた侍女の一人が二人の前に立ち止まり頭を下げる。そして
「ホト様、エルヴィン様、デボラ女官長様がお待ちです。こちらへどうぞ」
その侍女はそう告げると二人を誘うように宮廷内奥の間に歩き出す。人通りがまばらになった一階際奥の部屋の前に彼女は立つと背筋を伸ばし部屋の中の主に了承の確認を問う。
「デボラ女官長様、クラウディアでございます。ホト様、エルヴィン様をお連れ致しました」
「ご苦労様でした、クラウディア。お二人を中にご案内してください」
部屋の中からエルヴィンの聞き覚えのある上品な声が聞こえる。
「失礼します」
クラウディアという名の侍女が部屋の扉を静かに開け、ホトとエルヴィンを部屋の中に案内する。
「ホト様、お手を煩わせてしまい申し訳ございませんでした」
洗練された美しいお辞儀を見せる部屋の主に対しホトは
「いやいや、女官長殿お顔を上げなされ。そこまで丁寧なお辞儀をされるとこちらが恐縮してしまいますぞ」
「そうおっしゃられるなら、お言葉に甘えまして」
女官長は顔を上げるとホトに視線を向けるとホトはその視線に慌てて目をそらし当てもなくキョロキョロと部屋の中を見回す。
「そういえば、女官長殿の部屋に案内されるのは初めてですな・・・」
「ええ、そうでございますね。だからと言ってあまり女性の部屋を凝視されるのは・・・いかがなものかと思われますがホト様はどう思われますか?」
「ややっ、こ これは失礼を・・・女性の部屋をジロジロと見るのは非礼な態度でありましたな。この通りじゃ、申し訳ない・・・」
お詫びをするホトの姿をホトの後ろから見ていたエルヴィンは
(プッ、クックック・・・ヘル爺も女官長の前だと形無しだ、ハッハハハ)
心の中で吹きだしていた。
が、その時
「エルヴィン殿」
「は はい」
突然自分の名前を呼ばれて無意識に構えるエルヴィンに女官長は優しい目で微笑を浮かべ
「あなたもお変わりなくお元気そうで何よりです・・・」
「デボラ女官長殿も・・・」
と言ってエルヴィンは女官長を改めて見つめる・・・。
彼女の主であるハインリッヒ王が黒王と称せられるに合わせるかのようにデボラもまたその身に纏う女官長の制服は黒一色で統一されており、また均整の取れた女性らしい身体つきはあいかわらず美しい・・・。年の頃は30代後半ぐらいか40歳にはまだなってないであろうか・・・彼女の容姿から発する大人の女性の雰囲気にエルヴィンは戸惑いながらもデボラの漆黒の制服姿の一部に目が行ってしまう・・・そう 抗うことなくごく自然に・・・。エルヴィンの視線を釘付けにする彼女のその場所は黒の制服をより引き立てるような銀色のボタンと女官長の位を表わす同じく銀色のバッジが豊かで柔らかそうな又丘の上に輝いているのであった・・・。
「どうかしましたか・・・」
耳に心地よい声色に我に返ったエルヴィンは、慌てて視線を戻すと
「い いえ・・・デボラ女官長殿も相変わらずお綺麗です・・・。いや、以前よりも美しくなられたような気がします・・・」
「まあ、エルヴィン殿、お上手なことを、ホッホホホ・・・」
エルヴィンの不躾な自分の胸元を見る視線を気にすることもなく全てを見透かしたような笑い声を上げるデボラに
「いや、本当に・・・本当にそう感じましたので・・・その・・・申し訳ございません・・・」
ポリポリと目元をかきながら困ったなという表情のエルヴィンを優しく見つめるデボラであったが思い出したように話し掛ける。
「今宵、こうしてお話しするのは初めてでしたわね?」
「はい、女官長殿のお姿は何度か見たのですが忙しそうにしてましたのでつい声を掛けそびれてしまい挨拶が遅れて申し訳ありませんでした」
「それは気になさらずに、それよりあなたの方こそ今宵はご活躍でしたね、私もエルヴィン殿の戦う姿は初めて見ましたけどとても素敵でしたよ、目を見張りました!!!」
「い いやぁ・・・そんな事は・・・」
照れるエルヴィンの姿を見て満足そうにデボラは微笑むと、すぐに表情を引き締める。
「ホト様、エルヴィン殿、わざわざこちらにお呼びした理由ですが・・・」
口調を改めたデボラに頷く二人に彼女は続ける。
「先程近衛騎士団の方がみえて、今日の灯篭の蝋燭を換える当番の方と話がしたいとの申し出があり確認の上、当番の侍女を向かわせると返事を致しました。それで本日の当番である侍女に問うたところ・・・彼女から大変な事を聞きましたので私の独断でお二人をお呼びした訳です・・・。無論この事はまだ近衛騎士団はおろか陛下の許へも報告はしておりません。私としては今宵引き起こされた騒動の片棒を私の部下が積極的に担ったとはとても思えません・・・どうかお二人にはその点をご配慮の上彼女自身の口から詳細をお聞きになっていただければとお願いいたします・・・」
ホトとエルヴィンは黙ったままお互いに頷き合う。
二人の了解に安心したようにデボラは顔を別室の方に向けると呼び掛ける。
「ユイーザ、こちらへ」
扉の開けられた音にエルヴィンは視線を向けると顔を伏せて一人の侍女が入室してきた。立ち止まる彼女は遠目から見ても気の毒なほど全身を硬直させているのがわかる・・・肩あたりで揃えられた赤みのかかった金髪が揺れている震えてるのであろう・・・。
(ん?あの子は・・・)
エルヴィンが立ちすくむ侍女を見て何か思い出した時に
「デボラ女官長様、申し上げてもよろしいでしょうか?」
エルヴィン達を案内したもう一人の侍女がうかがいを立てた。
「クラウディア、うかがいましょう」
「はい、内密なお話しをされるみたいなのですが私がここに居てもよろしかったのでしょうか?」
「ああ、そうでしたね。クラウディア、あなたをここから去るように命じなかったのは理由があるの。あなたは日頃、ユイーザと仲が好かったと記憶にありますがどうですか?」
「はい、ユーイ ではなくてユイーザとは同じ時期にここ王宮勤めになった事もあり親しくさせてもらっております」
「そう、ならばあなたに命じます。ユイーザの傍らに立って寄り添ってあげなさい、そうすれば彼女も心強いでしょうから」
「は はい! ありがとうございます女官長様」
クラウディアは笑顔でデボラに感謝するとユイーザの許に駆け寄り彼女の両手を取り励ます。
「ユーイ、何があったのか皆様方に話して・・・私も傍に居るからね・・・」
「う うん ありがとうクラウ・・・」
手を取り合って涙ぐむ二人を暫しの間見ていたホトとエルヴィンであったがやがてホトが咳払いをして口を開く。
「さてと、ユイーザ嬢。何があったか聞かせてもらえんか・・・」
「は はい、ホト宮廷魔術師様」
ユイーザはごくりと唾を飲み込むと今日あった出来事を思い出しながら語り始める
「私がいつも通りマルクト教会より頂いた蝋燭を灯篭に持ち寄り交換しようとしたその時でした・・・身なりの良い男の方から声を掛けられました。 その男の方は・・・ろ 蝋燭を見せてはもらえないかと・・・そ それで 私は迷ったのですが今晩の晩餐会にも出席すると言われたので そ その・・・お客様に失礼になるといけないと思って・・・蝋燭を見せたのです・・・。それで その後 気づいた時には自分は道の上で寝てたみたいなのです・・・そう 今 思い出せば何か そう こ 怖い 怖い感じがして気を失ってたようです・・・」
「ふむ・・・」
「それから、私は違和感がありましたがそのまま灯篭の蝋燭を交換した後、宮廷に戻って晩餐会の準備と給仕の仕事を始めたました・・・そして そうです!あの男が大広間内で・・・剣を 剣を振るって会場内の騎士様達を斬る姿 その時の残忍な表情を見て・・・あ あ あああ 思い出して・・・わ わわわわ・・・こ 怖い!!!!」
ユイーザはそう叫ぶと床に座り込み顔を両手で覆い泣き叫び始めてしまう。
「怖い思いをしたんだね、でも、もう大丈夫だよ安心して」
ユイーザはまた同じ言葉を耳にする・・・
(この言葉は、この声は晩餐会の事件の時にも私に優しく語り掛けてくれた・・・ああ 何だろう・・・この優しい口調は・・・私が遠い幼い 子供の頃・・・聞いた事が ある・・・あれは そう そうだわ・・・)
明日の夜はクリスマスイヴですね、皆様はどのようにお過ごしになられるのでしょうか?
今回のお話は、なんと言っても女官長様!!!デボラさんの登場ですね~^^大人の女性の魅力を持つ彼女の容姿はエルヴィンさんも 食い入るような目で!!!
オホン^^
彼女もまたエルヴィンさんの周りを彩る素敵な女性陣達の一角に存在するのは言うまでもないでしょう。デボラさんとエルヴィンさんの関わり、会話にもご期待くださいね^^
アクセスをしていただいた全ての皆様にお礼を申し上げます。
本当にありがとうございました^^
先週は今までになくたくさんのアクセスをいただき驚いております。
今後も一話、一話、丁寧に心の描写をしていこう改めて確認して決心したしだいです・・・。
次話は一日早めの土曜日に更新できればと考えております、またこのお時間にてお会いしましょう~^^




