魔女祭り63
自分の言葉に驚くエルヴィンに構わずフィーネは自分の頬を更にエルヴィンの耳元に近づける。
「エルヴィン様、明日のゴスラー市街の観光案内のお約束・・・忘れないでくださいね・・・」
「え?ああ、そうでしたね。うっかり失念していました、もちろん大丈夫ですよ、承りました」
エルヴィンは自分の耳元に熱さを感じながら、つま先立ちしているフィーネの足元を凝視する。
(なんて、細い足首なんだ・・・それと・・・やはりフィーネ殿からはいい匂い?いや香りかな・・・)
エルヴィンがそんな他愛のない事を考えてると、その時、
「うーむ、コホン!」
咳払いをする声に気づき、慌てて体を離すエルヴィンとフィーネの二人。
「フィーネ殿、もう宜しいかな?」
咳払いの主はホトであった。
「ええ・・・」
声を掛けられたフィーネは自分のした行動が周りの皆から注視されていたのに気づき顔を赤らめながらか細い声で答えるのがやっとである。
「エルヴィンよ、お前はいつまで上半身裸のままでおるんじゃ、寒くはないのか?」
「あっ、そうだった!さ 寒いって・・・マテウスお前俺に水をぶっ掛けやがって」
「ああでもしないと、フィーネ殿の麗しい唇がエルヴィンの毒に侵されそうだったからね、アハハハ」
からかいながらも自分のの服を持ってきたマテウスから受け取るとエルヴィンは着始める。
「気を失った者には、水を掛けると正気に戻るか・・・これは思わぬ発見であった・・・」
「ヘル爺、いやホト宮廷魔術師殿、今宵のお働きご苦労様でした。して、その尊い宮廷魔術師殿はどうしてこの場においでなのでありましょうか?」
独り言を呟くホトにエルヴィンは服を身に纏わせながら皮肉たっぷりに尋ねる。
「ああそうであった。だが、まずはわしの特性ポーションを飲むが良い。強がってはいても実際はフラフラじゃろ」
ホトは視線でフィーネが手にする小瓶を示すと
「エルヴィン様、どうぞ」
フィーネはエルヴィンに手渡す。
「ありがとうございます。これは・・・魔力を復活させるポーションか?」
エルヴィンは受け取った小瓶の蓋を開けると一気に飲み干した。
「・・・、思ったより口当たりがいいなあ・・・」
「そうじゃろ、そうであろう、フフフ・・・。そうだ、エルヴィンよお主に用があってな、女官長殿がお前を捜しておったぞ」
「女官長殿が・・・はて、何だろう?」
と、そこでエルヴィンは思い出したように周りに居る人々に声を掛ける。
「レオ団長、今宵のお働きご苦労様でした」
「自分の働きなどエルヴィン殿達の働きに比べれば・・・恥ずかしいばかりだ、そうであろう皆の者」
「本当に、素晴らしいご活躍でしたエルヴィン殿。私自身の力の至らなさが痛感できました。今後ますますエルヴィン殿と剣の稽古を催促させていただきます」
「私にも、いや自分にも是非!!!!!」
エルヴィンの周りを囲むような近衛騎士団団員からもギレの言葉がきっかけとなったように叫び声が上がる。
「ギレ殿・・・皆さん方・・・。ええ、こちらこそお願いします」
「おお!!!やったぞ~!!!」
野太い男達の歓声が宮廷前に響き渡る、その時
「エルヴィン殿!!!」
「はい?」
「わ 私にも・・・私にも剣の稽古を・・・お願いできないであろうか・・・」
「ヴィオラ殿・・・」
声の主の姿に驚くエルヴィン、彼の前に赤毛の神官戦士の姿があった。
「今日貴殿にした、非礼の数々にはこの通りお詫びを申し上げる。それを踏まえても厚かましいかもしれないがエルヴィン殿!貴殿に稽古をつけてもらいたい・・・だ だめであろうか・・・」
目の前で頭を下げるヴィオラの姿に困惑するエルヴィンである
(いったい、どうして彼女は・・・俺のこと軽蔑して嫌ってたんじゃないのか・・・?)
エルヴィンは暫しの間彼女を見つめていたが、頭の後ろで束ねた髪の間から見えるうなじが小刻みに震えているのが分かると
「ヴィオラ殿、顔を上げてください。私は非礼な態度だったとは思ってはいませんよ」
ヴィオラはエルヴィンの優しい口調の声に顔を上げると
「そ そうか。で では私の願いは聞き届けてくれるのであろうか・・・」
不安そうな表情で改めて尋ねる。
「こんな私でよければ、お相手させていただきますよ」
「か 感謝する」
ヴィオラはまたエルヴィンに頭を下げる。
「ヴィオラ殿、顔を上げてください。でないと私の方が恐縮してしまいますから。それに申し上げればあなたのような美しい女性の神官戦士殿と手合わせできる機会はめったにありませんので私の方が光栄の至りですよ。むしろこちらが感謝すべきですかね、アハハハ」
(う 美しい・・・わ 私が う 美しい・・・)
呆然とした表情で顔を上げたヴィオラの視線の先には、微笑むエルヴィンの顔が・・・。
「エルヴィン様!」
何か不機嫌そうな口調のフィーネの声にエルヴィンは振り返ると未だに腰を下ろして座ったままのセシリアと彼女を労わるように傍らに侍るフィーネの姿が見える。
「セシリア様が、もう少しエルヴィン様とお話ししたいと」
「ふぃ フィーネ!わ 私は、そ そんな事一言も言ってはいません。で でも・・・もう少し・・・お話しはしたいような・・・」
エルヴィンは消え入りそうな語尾で反論するセシリアの許に近づくと彼女と同じ視線の高さになるように腰を下ろすと
「セシリア殿、今晩の一番の功労者はあなた様でしたね。聖女という世評に全くもって偽りの無いお人柄でした。今宵の出来事で御身に降り掛かった災いにも拘わらず常に周りの人々の安否を気遣い、精神的にも肉体的にも治癒を施すあなた様の姿はまさしく・・・聖女様でした。その美しく気高く優しい佇まいに対して私のような傭兵ごときが言うのもはばかれますがあえて言わさせていただきますね」
エルヴィンはそこで一息入れ、瞳に力を入れ続ける。
「セシリア殿、貴女はその容姿だけでなく内面の心までとても、とても美しくて清らかなお方です。このエルヴィン、尊敬させていただきます・・・」
「え エルヴィン様、そ そんな風に言われると、わ 私はどんな表情をすれば・・・」
「明日は、フィーネ殿から声を掛けられましたので私がセシリア様達をゴスラー市街の観光に案内できればと考えております。セシリア様達の慰労をとも思っておりますので差し支えなければ是非ご一緒できればと」
「は はい!是非にもお連れ下さい、ご迷惑をお掛けしますが・・・」
「迷惑だなんて、とんでもない。明日は私の方が楽しみにしておりますので・・・。それでは後程また、女官長殿が私を捜しているみたいなので失礼させていただきます」
そう言い残して立ち上がり、ホトと一緒に連れ立って宮廷内に向かうエルヴィンの後ろ姿を閉じられたセシリアの瞳は追い続ける。
(私のことを、とても とても美しくて・・・清らかな方って・・・)
エルヴィンさんは匂いフェチ?(笑)
今回のお話はエルヴィンさんをめぐる3人の女性の心の移り変わりがメインでした。
翌日のゴスラー市街観光はどうなるのでしょうか?お楽しみにしてください^^
次週はあのお嬢さんが主役になりそうですね、彼女の再登場をお待ちの方はご期待くださいね。
それではまた来週もこのお時間にてお会いしましょう~^^
アクセスをしていただいた皆様、ありがとうございました^^




