魔女祭り61
「えっ?」
フィーネはホトから渡された魔力を復活させるポーションの小瓶の蓋を開けようとした時にマテウスから声を掛けられ怪訝な表情で問う。
「ど どうかされましたか、マテウス様?何か不都合な点が・・・」
「アハハ、いや全然不都合な事はないんだけどね、フィーネ殿のような美人さんにそのような真似をさせるってことに少し戸惑う・・・と言うか、これ以上うちの団長にいい思いばかりさせるのはちょっと・・・ね」
「あの、マテウス様、私は別に構いません。エルヴィン様となら・・・」
熱い視線でそう訴えるフィーネの圧力にくじけそうになるマテウスだが
「いやね、戦場では気を失った者に対して意識を戻させる方法があるんですよ。それも簡単にね」
「そ そのような方法が・・・」
不審そうな表情で自分を見つめるフィーネにマテウスは答える。
「ええ、魔法の水と呼ばれる物です」
「魔法の水・・・ですか?」
「はい、そうだ、ハウサー!今、水筒って持ってる?」
「すみません、隊長。今日は持って来てません」
「そうか、どうしようかな・・・」
「マテウス殿、魔法の水というのは普通の水でも宜しいのかな?」
少し困った表情を見せるマテウスにそれまで黙って事の推移を見ていたレオが助け舟を出す。
「ええ、そうですレオ団長」
「ならば、誰か」
「レオ団長、私が水を汲んで参ります」
近衛騎士団団員であるディートルが団長の意を汲み素早く水を求めに駆け出した。
(凄い傷跡だ・・・それに何箇所も・・・。いったいこの男は・・・どんな人生を過ごしてきたのであろうか・・・)
聖女セシリアの護衛の任を受けた神官戦士であるヴィオラは舗装された地面に横たわるエルヴィンのむき出しの上半身に目が釘付けになっているのを本人は気づかないでいる。
「ヴィオラよ、残念だったな・・・」
そんなヴィオラに馴染みのある落ち着いた声が聞こえる。
「うん?ああ、アルフィオか・・・。残念・・・うん、そうか・・・そうだな・・・」
「ヴイオラ、お前・・・」
アルフィオは素直なヴィオラの返事に驚き絶句する。この一回り以上年の違う異性の同僚は以前であれば自分が口にした男女の機微に関する諧謔に対してはそれこそ容赦無い反論を加えてきたはずだったのだが・・・。
言葉を途中で飲み込んだアルフィオは改めて赤毛の女戦士の横顔を眺める。伏し目がちに横たわるエルヴィンの上半身を見るその瞳の長いまつ毛が妙に美しい・・・。
アルフィオはそんな感想を抱く自分の心に動揺したのか慌てて言葉を繋ぐ。
「お前さんの口からそんな素直な返事が聞けるとは驚きだ・・・」
「そうか?」
ヴィオラは困ったような表情の同僚の顔を見ると苦笑を浮かべ、
「そう言う、アルフィオの方こそいつも寡黙なお前が・・・フフフ、いつに無く今夜は饒舌じゃないか?」
「ふむ・・・言われてみればそうかもしれん。こうやってお前に声を掛けるぐらいだからな」
「フフフ・・・」
「ハハハ・・・」
二人は同時に小さく笑う。
「今夜のわれ等は、少しおかしいか?ああ、われ等二人だけでなくあちらのお二人も何かいつもと違う人間を見るように感じられるのだが、ヴィオラよどう思う?」
「うむ、同感だ。セシリア様はこう・・・そうだな普通の女 いや普通の女性らしい仕草がたくさん見れたことに驚いた。いつもの聖女としての気高い表情や仕草とは全く別の素のセシリア様が窺えれた事に驚いた反面、親しみが生じたのは事実だ。また、それ以上に驚かされたのは付き人のフィーネ殿だ・・・あんなに異性の男にグイグイと行動を起こす女性だったとは・・・。いつもセシリア様の陰に回って控えめに過ごしていた感じしか私は思えなかったのだが・・・」
「ああ、その通りだ。フィーネ殿は実際はあのような御仁だったのだな・・・。それにセシリア様も・・・フフフ、年相応の妙齢の女性であったな、ハハハ」
「アルフィオ、あまり笑うのは失礼かと思うのだが」
「これは、失礼。だが、一番自分が驚いたのは他でもない、お主だヴィオラ!」
「わ 私か!?」
「ああそうだ。今までは男を男とも思わない言動は常の事、それどころか敵視するような侮蔑の目を向けていたお前が・・・今はどうだ?エルヴィン殿を見る目は全然違ってるぞ?」
「そ それは!!!その・・・」
(おいおい・・・これは・・・本物か・・・?)
アルフィオは自分から突然指摘を受け狼狽するヴィオラの顔を見つめそんな感想を抱く。
顔を赤らめながら不自然に体を小刻みに動かすヴィオラの姿はいつもの神官戦士の出で立ちなのだが妙に女性らしい柔らかさが感じられる。
「コホン!その そのなんだ・・・いや、この男、いや、エルヴィン殿はどんな人生を送ってきたのだろうかな・・・と。その つ つまり・・・うまく表現できないのだが」
照れ隠しのためか少し早口になったヴィオラが形の良い胸元に手を当てつぶやく。
「エルヴィン殿に興味が沸いた・・・と、言うことかヴィオラ?」
「え?い、いやっ、そうではない!いや そうなのだが・・・」
「フフフ、まあ、どちらでも良い。いずれにしても今宵一晩でわれ等一同4人の心境を変えてしまった原因を作ったこの御仁、エルヴィン殿には自分もかなり興味をもたらせられたのは事実だ。時間が許せば話をする機会を是非持ちたいものだなヴィオラ」
「うむ、そうだな、私としても異存はない」
「ついでに許しを得れば、戦いの稽古もつけてもらいたいものだ。セシリア様の今後の護衛の任を考えるとわれ等の力量不足は今晩の出来事を振り返ってみても厳然な事実であるから・・・」
「おお!!!そうだ。是非ともエルヴィン殿に教授を受けなければ・・・」
二人は横たわるエルヴィンの姿を見つめながら決意を新たにするのであった。
今回のお話は神官戦士コンビの会話が主になってましたね。二人の心境の変化、特にヴィオラさんの変化は見逃せません。彼女が男性不審症になった原因も気になりますね。今後、可愛くなる?ヴィオラさんの活躍にご期待ください~^^
それと、マテウスさんにお預けをされたフィーネさん・・・どうなるのでしょうか・・・。
今回、出番のなかったセシリアさんの気持ちの変化も丁寧にご紹介できればと考えております。
それにしても、エルヴィンさんは未だ上半身裸のままで放置されてます・・・早く誰か気づいてあげないと(苦笑)
それでは、また来週もこのお時間にてお会いしましょう~~^^
アクセスをして頂いた方、全ての皆様にお礼を申し上げます、本当にありがとうございました^^




