魔女祭り60
ホトはじいっとうつ伏せに倒れているエルヴィンの姿を見つめている。
(これは・・・魔力切れの状態か・・・?はて、エルヴィンめ何でこんなになるまで魔力を使ったのか・・・こやつの魔力の量はおいそれと枯渇するようなものではないはずだが・・・)
エルヴィンの体の下敷きになって、あわあわしているセシリアの表情にホトは気づくと
(ん!!あの時か!?あのデス・メイジが自爆した時か!?)
不安そうに自分を見つめるマテウスやレオをはじめとする近衛騎士団やセシリアの付き人であるフィーネやその護衛であるアルフィオやヴィオラの視線に見返しながら、ホトは納得したように頷く。
(こやつは、あのデス・メイジの自爆の被害から皆を守ろうとして広域防御魔法を発動させたのであろう・・・このわしにも気づかせないほど瞬時にな・・・)
「マテウス、心配ない。エルヴィンめは魔力が少なくなってるために気を失っただけじゃ、無論、出血の影響もあったようだがな」
「エルヴィンの魔力が少なくなってる・・・失礼ながらホト様、うちの団長の魔力の量といったら桁違いな保有量のはずですが・・・?」
マテウスは納得いかないようにホトに尋ねる。
「その通りじゃ、マテウスよ。ただ一度に大量の強力な魔法を使えば、それも瞬時に使用するとすればいくらこやつの魔力が無尽蔵に近いと言えども、このような状態には陥るのも不思議ではないぞ」
「されど、今晩うちの団長が使った魔法ぐらいでは・・・あっ!」
「ふむ、気づいたようじゃな」
「ま まさか僕をあのデス・メイジの自爆から守ろうとした時ですか?」
「恐らくな・・・わしも今気づいたのだが」
「あの時団長は、僕にフラムン・クーゲル(炎弾)を食らわせてそれから・・・」
「おぬしをふっ飛ばしながら更に防御魔法を発動させたようじゃな・・・それもマテウスだけじゃないぞ。ここに居る全ての者を守るために広域防御魔法をじゃ」
「ええっ!!!」
ホトの言葉に驚愕する一同を見渡しながらホトはエルヴィンの顔に自分の顔を近づけ手にしている魔法の杖でエルヴィンの頭をコンっと叩く。
「この馬鹿者が、わしの広域防御魔法だけじゃ心配だったというわけじゃな?見くびられたものだわい、クックックク・・・」
皺の多い顔を緩めてやんちゃな年若の弟弟子を労わるような表情をするホトであった。
「エルヴィン・・・」
マテウスはそう声を掛けながらエルヴィンの許に膝まづくと
「セシリア様、遅くなりました。今、この半裸の不埒者を取り除きますからご容赦を」
「え、ええ!?」
マテウスは無造作にエルヴィンの身体をセシリアから引き離すとあお向けに横たえる。
(本当に、無茶をするんだから・・・)
マテウスは横たわるエルヴィンに向けて呟く。
「セシリア様、大丈夫ですか?」
フィーネはセシリアに手を貸しながら彼女の身を起こす。
「ええ、ありがとうフィーネ」
「セシリア様、エルヴィン様に抱きすくめられた感想はどうでしたか?」
「な 何を言ってるの!わ 私は・・・そ その・・・」
「はいはい、またそのお話は後程ゆっくりとお聞かせくださいね、フフフ」
顔を赤らめながら反論するセシリアの表情を見てからかうフィーネである。
「ホト様、それではエルヴィンは意識が戻るまで寝かせておけば良いということでしょうか?」
マテウスはホトに尋ねる。
「ああ、そうなのだが、こやつにちと用があるのでここに来たのでな」
ホトは懐から小瓶を取り出すと、
「エルヴォンめにこれを飲ますとよい、魔力を増やす携帯用のポーションじゃ。だがそのままの状態では飲ませられんの・・・うーむ・・・いかがいたすか・・・誰か口移しで飲ませてやるか?」
「く 口移し!!!」
ホトの落とした爆弾に同時に声を上げる女性たちの叫び・・・
(く 口移し・・・って、そ それは口づけってことですね・・・と 殿方と初めての・・・それもエルヴィン様と・・・って、きゃあ~~!!!な 何を考えているの!わ 私はあくまで恩人であるエルヴィン様の治療の一環として・・・そ そうです。この行為はやましい心根でなく、あ あくまでも神聖な行為であって・・・)
「あ あの、宜しければ・・・」
セシリアがなけなしの勇気をふりしぼって声を上げようとしたその時、
「私が、そのお役目をさせていただきます、ホト様」
「フィーネ!!!」
「フィーネ殿!!!」
フィーネの決然とした声におもわず同時に声を上げるセシリアとヴィオラ。特にヴィオラはいつの間にかホトの傍らに立っておりホトが手にしている小瓶を凝視している状態である。
フィーネはそう言うやすくっと立ち上がると、自然な立ち振る舞いでホトの前に立つと
「ホト様、そのお役目、私にさせていただけませんか?」
「ふむ、良いのかのうフィーネ殿。その、何じゃ・・・こやつみたいながさつ者にあなたのようなうら若くて綺麗な女性が口移しなどと・・・後々、悪い噂や評判が生じるやもしれんのだが・・・」
「お気遣いありがたく思いますホト様。でも大丈夫です、以前もこういった状況で人命救助のために経験がありますから、それにその行為によっての噂など私は気にもなりませんから」
「あなたがそこまで言うなら」
ホトはそう言うとフィーネに小瓶を手渡す。
フィーネは手にした小瓶を大事そうに両手で包むとにっこりと笑いながら
「ヴィオラ様、いいですね」
「あ ああ、フィーネ殿がよければ、わ 私にも異存はない・・・」
「はい、ありがとうございます」
残念そうな素振りを隠しおおせないヴィオラに頭を下げフィーネは振り返るとちょこんと座り込むセシリアの許に近づき彼女の耳元でそっと呟く。
「セシリア様、申し訳ございませんがこのお役目私に譲ってくださいね。聖女様と世間で評判のセシリア様が異国の傭兵の殿方と口づけをしたなどと噂が立つことになれば後々どんな悪評にさらされるかもしれませんから・・・セシリア様のお立場もお考えください」
「フィーネ・・・わかりました」
落胆したような表情を見せるセシリアにフィーネは励ましの言葉を続ける。
「でもセシリア様、初めての殿方との口づけはお互い同意の上で自然にされるものですから、その時はエルヴィン様をお譲りさせてあげます。もちろん人目のない所でお願いいしますね、フフフ」
「ふぃ フィーネ!!!あ あなた!!!」
(すみません、セシリア様。口づけの経験があるというのは・・・嘘なんです・・・。私にとって初めての経験なんです。ですからここは・・・女として譲れません。ごめんなさい・・・)
「マテウス隊長・・・ちょっといいかな?」
「うん?どうしたのハウサー?」
ハウサーからふいに声を掛けられたマテウスは答える。
「あの、セシリア様達ってエルヴィン団長と知り合いだったのかな?」
「いや、今日初めて会ったと思うけど」
「ふーん、そうなんだ・・・」
「どうして、そんな事を聞くのかい」
「いや・・・なんか俺の勘違いなのかもしれないけど何か団長をあの綺麗な女性陣達が取り合うように見えるんだけどね・・・思い過ごしかな?ハハハ、今日、会ったばかりなんだよね?」
「いや、僕の目にもそう映ってるよ」
「ええ!?やっぱり?」
「まあ・・・エルヴィンの事だからしょうがないかなあ・・・。知らず知らずのうちに接する相手の心を捕らえてしまうからねえ・・・」
「うーん・・・」
目の前で起きた場面を思い出しながら、ため息を付くマテウスとハウサーである。
「あっ、そうだ!エルヴィン団長はただ気を失ってるだけなんだよね?」
「うん、そうだよ」
「なら、意識を戻すだけならすぐにできるのでは?」
「あ!そうか。戦場で気を失った奴に気付けをする方法がある!!!」
「ですよね、その方法で団長を気付けさせれば何も口移しでポーションを飲ませなくても・・・」
「アハハハ、そうだった。僕も意外な事の成り行きで気づかなかったよ、ハウサー」
マテウスはにっこりと微笑むと
(エルヴィンにこれ以上いい思いをさせるとまた彼女に後で知られると事だからねえ・・・)
そう胸中にてつぶやくと
「フィーネ殿、少々お待ちを!」
フィーネさんの始めてのキスの行方は???
今週のお話しはどうだったでしょうか?
皆さんの感想はどうだったでしょうか?
エルヴィンさんはいまだ上半身裸の状態で放置されてますが誰も気づかない・・・(苦笑)
最後にまたお礼を申し上げます。
この物語を楽しみにしていただいてる全ての皆さんに感謝の気もちを・・・本当にありがとうございます。
それでは、来週もまたこのお時間にてお会いしましょう~~^^




