魔女祭り58
「エルヴィン様、今宵のご活躍本当にご苦労様でした!私は殿方が魔物相手にご自身の命を賭けて戦うお姿を初めて目の当たりに見ることができました。御不興を抱かせるやもしれませんが、エルヴィン様の戦う姿はとても・・・素敵でした・・・」
熱の篭った視線でそう訴えるフィーネの瞳にエルヴィンは戸惑いながらも答える。
「そ それはまた過分な言葉です、フィーネ殿」
照れくさそうにしているエルヴィンの仕草を微笑ましそうに見ていたフィーネは
「エルヴィン様、セシリア様がお待ちです」
誘うようなフィーネの視線の先にはセシリアが立っている。
「ああ、セシリア殿、お疲れ様でした」
エルヴィンはセシリアに労いの言葉を掛け彼女に近づくと
「エルヴィン様の方こそ、本当にご苦労様でした」
セシリアもまた同じように労いの言葉をエルヴィンに返す。
「近衛騎士団の方々の治療、数が多くてとても大変だったでしょう、本当にご苦労様でした」
「いえ、それは私の務めですから・・・」
そう言って黙ってしまったセシリアにエルヴィンも言葉を掛けあぐねてしまう。
閉じた目を伏せて顔を上気させているセシリアを見かねたフィーネが助け舟を出す。
「セシリア様、エルヴィン様の治療をするのではなかったのですか?」
「あ、そ そうでした!エルヴィン様、お怪我をされてるとフィーネから聞きましたが」
「あ いやっ、たいした怪我じゃありませんよ。こんなもの唾でも付けてほっておけば」
「だ だめです!しっかり治療しなければ傷が化膿してしまうかもしれませんから」
語気を強めたセシリアの言葉にエルヴィンはたじろぎながらもエルヴィンはお願いする。
「そう そうですね。では、治療をしてもらってもいいですか?」
「はい、フィーネ手伝ってください」
「はい」
フィーネはそう答えると素早くエルヴィンの左手を掴むと袖口を捲り上げる。
(わ、これは思ったよりひどい!!!)
外灯の灯りに浮かぶエルヴィンの袖口は血糊でベットリとしておりまだ出血が続いている。
(こんなに出血していてこの人は・・・)
フィーネは呆れたようにエルヴィンを見つめる。その視線を受けエルヴィンは
「フィーネ殿、すみません自分の血であなたの手を汚してしまう・・・」
「な 何を言ってるんですかエルヴィン様!私の手が汚れるぐらい・・・って、あっ!!!その肩口も血がすごく滲んでるじゃありませんか!!!」
「あ!そ そうですか・・・これは、ソティリオの奴にやられた時の・・・」
「フィーネ詳しい状況説明を!」
セシリアが凛とした声を上げる。
「はい、左手首から手のひらほどの長さの切り傷です。中でも深い傷が・・・そこから出血が。それと右肩口にも切り傷が・・・」
目の不自由なセシリアの代わりにフィーネが患部の症状を的確に把握しセシリアに伝達し治療をするのが彼女たちの治療方法であった。フィーネはセシリアの両手をエルヴィンの傷の箇所の上まで移動させる。
「セシリア様、お願いします」
「慈しみ深い聖なる神よ、我にその癒しの力を与え給え・・・グアリジョーネ(治癒)!!!」
(治癒魔法を受けるのは・・・いつ以来だったかな・・・)
エルヴィンはセシリアの指先から放たれる神々しい光をぼんやりと見ながら思い出そうとしている。
「ハウサー、お前さぁ・・・本当に手加減しなかったんだね・・・」
マテウスはセシリアから治療を受けるエルヴィンの姿を見ながら詰問口調でハウサーを問い詰める。
「いや、だから先程も言ったじゃありませんか、団長だったなんて気づかなかったって・・・」
「ふーん・・・。エルヴィンが大怪我したってジェイミーに言っちゃおうかな・・・ハウサーにやられたってね、フフフ」
「ええ!!!それだけは勘弁してください、お願いしますよ。彼女に知られたら・・・」
絶望しそうな表情をするハウサー・・・。
「まあ、反省してるみたいだから僕との稽古だけで許してあげようかな。それに彼女に教えたら僕の方にもとばっちりが来るかも、『何であんたが近くに居て、エルヴィンが怪我してるのよ』ってね」
「ハハハ、そうですね。マテウス隊長だって彼女を怒らせると怖いでしょ」
「・・・。うん、そうだね。彼女に伝えるのはよした方がいいね・・・」
マテウスはそう言いながら、紫色の髪をなびかせる妖艶な美貌と肢体を持つ女性の顔を思い浮かべるのであった。
左手の治療が終わったのか右肩の治療に移ろうとするエルヴィンの外套をフィーネが甲斐甲斐しく脱がせようとし始めた時にマテウスは思い出したように
「じゃあ、ハンブルグの報告を聞かせてもらえないかな」
「あの男は、ザクセン公の諜報員でしたよ。裏を取るまで苦労しましたがね、間違いありません」
きっぱりと言い切るハウサーの表情に満足したようにマテウスは頷く。
「やっぱりね・・・動くか獅子公ベルンハルト2世・・・」
(たくましい・・・)
セシリアの治療の介添えをしているフィーネは心の内でつい、零してしまう。
(そ その血管が浮き上がって見える腕も凄かったですけど、こ この鍛え上げられた上腕から胸にかけての筋肉は・・・はぁ・・・本当に鍛えられてる・・・こんなに張りがあってパンパンで指でつついたら・・ど どんな・・・。さっき外套を脱がせた時に触れたエルヴィン様の肩の感触・・・)
治療を始めた時には、エルヴィンの傷のひどさと出血の多さで気づかなったのだがセシリアの治癒魔法のおかげできれいになってゆくエルヴィンの身体の肉付きの良さに改めて気づきうっとりとするフィーネである。
(セシリア様が、こんなにも一生懸命に治療をなさってるのに本当に私は不謹慎ね・・・)
フィーネの目の近くには、額に汗を浮かべながら治療を続けるセシリアの顔がある。
(でもセシリア様残念でしたね、エルヴィン様の生の上半身が見れなかったのは・・・こんな事を言ったら怒られるかしら、フフフ・・・。あら、あちらではヴィオラ様までもあんなに食い入るような目でこちらを見てる!役得役得です、ごめんなさいねヴィオラ様)
フィーネがそんな事を考えてるとは露知らずエルヴィンは我慢の限界に近づいていたのであった。
(こ これはやばい・・・血がおもったより出すぎたのか魔法を使って戦ったのがまずかったかな・・・。それにしても肩にかけられるセシリア殿の治癒魔法が気持ち良すぎる。そ それとセシリア殿とフィーネ殿の身体が、ち 近すぎる・・・二人から漂うその良い匂いも・・・ああ・・・)
「フィーネ、傷の具合はどうですか?」
「あ あっはい。もう大丈夫です、傷口は完全に塞がれましたセシリア様」
セシリアの声に、我に返ったフィーネはそう伝える。
「あの、エルヴィン様、お加減はどうですか?まだ傷は痛みますか?」
「・・・・・・」
「あ あの エルヴィン様?」
「ひ ヒャ!!!」
セシリアが驚きの声を上げた時、こらえ切れずにエルヴィンはセシリアにかぶさる様に倒れてしまうのであった。
フィーネさんったらねえ・・・(苦笑)
ついに疲労と気持ちよさ?で倒れてしまったエルヴィンさん、この後セシリアさんとどうなるのでしょうか?次話にご期待くださいね^^
それと、マテウスさんの口に出たザクセン公ベルンハルト2世(獅子公)ハインリッヒのドイツ王国内最大のライバルの名前がついに、ついに登場です。今後この人物がどのようにエルヴィンさん達と運命の矛を交わすのか・・・。
来週は所用がありまして更新できません、この物語を楽しみにしていただいてる皆様にはお詫びを申しあげます。
それでは、また再来週このお時間にてお会いしましょう~^^




