魔女祭り56
「はい、パウル・ハウサー本日ハンブルグよりゴスラーに戻って参りました」
ハウサーと名乗った男は微笑を目元に浮かべると静かに剣を鞘に戻す。
「ハンブルグってことは・・・ザクセン公国」
「ええ、あいかわらず冬中くすんだグレーの空ばかりで天気は悪いし山もない・・・本当に面白みのない街ですよ・・・」
「そ そうか・・・。ハンブルグは仕事だったのか?」
「ええっと、ある人物の調査と護衛の依頼を隊長から頼まれまして」
「マテウスからだって?」
「ええ・・・」
「団の仕事ではないってことか・・・」
「まあ、そうですね」
「そうか、ならマテウスの奴からうんと手当てをもらわないとな」
「本当にその通りです。しっかりと隊長に請求させていただきますよ、フフフ・・・」
「ハハハハ・・・」
二人は久々の再会に笑いで答えあったが、やがてエルヴィンが気になっていた事をハウサーに尋ねる。
「ところでハウサー、お前何でこんな所に居るんだい?」
「ああ、それはですね自分が下宿先に戻ったときにフクロウ(月の使い)が飛んできてマテウス隊長から伝言を受け取ったんですよ、今宵、王宮に来られたし・・・と」
「そうか、マテウスの奴が・・・」
「ええ、それで帰ってすぐに洗濯物を取り込んで訳も判らずとにもかくにも急いでここへ」
「洗濯物って・・・なあハウサー・・・」
「え?」
「特務隊って、洗濯好きなのが多いのか・・・?」
「ええ???」
「いや、何でもない、こっちの話だ。ハハハハ・・・」
「はあ・・・」
訝しそうにこちらを見るハウサーの視線から目を逸らせエルヴィンは思い出す。
(マテウスに念話を送った時もちょうどあいつ洗濯物を取り込んでるところだって言ってたなあ・・・。俺が思ってる以上に皆は自分の事は自分でやってるんだ・・・)
エルヴィンが妙なところを感心していると
「団長こそ、どうしてここに?」
「ああ、・・・」
エルヴィンは暗闇の道を歩き出すと、ふと足を止めて屈みこむ。ハウサーはそれを見てエルヴィンの後に続き同じように腰を屈め覗き込む。
「これなんだが・・・」
ハウサーに尋ねるエルヴィンの指が示す場所には小石のような物が集められていた。
「ああ、それは自分が集めておいた物です。全て灯篭の中の蝋燭立てにありました」
「灯篭の中だって?・・・」
「はい」
ハウサーはそう言うと、辺りの気配を注意深くさぐっていたが問題ないと判断したのか右手をかざし
「ラスス・アイフルイフィン(灯りよ)」
小声で灯りの魔法を唱えると、はかなげな灯りが地面に落ちている小石のような物を闇の中に照らし出す。
「やはり、これは・・・」
「ええ、想像通りでしょう。召喚用のマジックアイテムです」
ハウサーはその内の一つを取り上げ手の平に乗せ、エルヴィンに確認させる。小石のような物は何かの骨であった。
「私がこの灯篭の立ち並ぶ場所まで来てみると、いつもなら幻想的な景色を見せる灯りが見えません。不審に思って気配を探ってたところ異常に濃い魔力の残滓がこの辺り一面に漂ってました。それで思い出したように灯りが消えている灯篭を覗き込んだところ・・・これがありました」
「・・・」
エルヴィンはハウサーの説明を聞き終えると地面に落ちている骨の数を数え始める。
「なるほど、11個あるな・・・ソティリオの奴これを使ってデス・ナイト達を召喚したってことか・・・」
「団長、そろそろあなたがこの場所に居合わせた理由をお聞かせ願いたいのですが・・・」
「ああそうだったな・・・」
エルヴィンは今宵起こった出来事の顛末を掻い摘んでハウサーに伝えるのであった。
「それはそれは、何とも賑やかなパーティーになってたんですね。できれば私もそのパーティーに参加してそのソティリオという道化者やデス・ナイト達とも剣を合わせたかったですな」
ハウサーはエルヴィンの話を聞き終えるといかにも残念そうに感想を漏らす。
エルヴィンはそんなハウサーを見て
(マテウスを含め、特務隊の連中は戦闘狂の集まりか・・・)
と、胸中ぼやくとふと思い出す。
「剣を合わすって、そうだハウサー」
気色ばむ声色のエルヴィンに
「な なんでしょうか?」
「お前、いつから俺ってわかって切り掛かったんだ?・・・」
「・・・」
「ほお・・・その様子だと俺の正体に気づいたにもかかわらず剣を向けた・・・ってことだな?」
「いや、待ってください団長!!!最初は分からなかったのですよ、嘘ではありません!!!」
「最初はねえ・・・」
「ええ、ここでこの骨を集めていたところ何か強烈な気配が感じられて慌てて自分は気配を消したんです」
「ふーん・・・それで?」
「団長がその骨を調べ始めたのを見て、てっきり怪しい奴だと判断して・・・襲いました・・・」
「ふーん・・・それだけで襲い掛かるとはねえ・・・」
「い いえ、団長の気配があまりにも強烈だったため自分の身を守るためにもと先にやっつけてしまおうと思いまして・・・」
「ふーん・・・それでいつから俺って分かってたんだ?」
「団長が、話しかけ始めてから・・・だんだんと誰かの声に似てるなってとは思ったのですが・・・」
「ふーん・・・」
「わ 分かりました、分かりましたよそんな怖い目でにらまないできださい。確信を持ったのは団長が抜き打ちの構えを取って時です!!!」
「ほっほう・・・じゃあ、俺って分かっててあんな強烈な突きを俺に入れてきたってことか?」
「ええ、そうです。その通りです、団長が真面目に本気で剣を振るうなんてあまり経験がないものですから、これはいい機会だから是非にも団長の必殺剣を体感したくなりまして。フフフ」
「だがなハウサー、俺は本気でさっきは剣を振ったんだぞ!もしかしたらお前を怪我させる、いや殺しかねなかったかもしれないんだぞ!?」
「ええ、それは覚悟していました。でも団長の返し技の必殺剣の太刀筋は知ってましたから防ぐ自信はありましたから」
何故かうれしそうにそう答えるハウサーの表情に毒気を抜かれたようにエルヴィンは呆れた顔で
「わかったよ、ハウサー。だが、二度とこんな真似はするなよ、これは団長命令だ、いいか!俺は自分の手で仲間の団員を手に掛けたくないからな・・・」
「はい、了解です。マイン・シュールレイター(我が団長)!!!」
特務隊は洗濯好き!!!(笑)
エルヴィンさんとハウサーさんとの今回のお話は面白かったでしょうか?
ハウサーさんがマテウスさんに頼まれた仕事の相手・・・気になりますね・・・。
ハウサーさんはマテウスさん配下の特務部隊の一人でしたね、特務隊は他に何人在籍しているのか?また他の実働部隊の構成はどうなってるのでしょうか?
徐々に、ゴルトヴォルフの全容が明らかになってゆきます。
皆様、乞うご期待を^^
次週は王宮前にてマテウスさんや近衛騎士団の面々とエルヴィン&ハウサーさん達が再び合流する話になります。もちろん、聖女様御一行様との絡みもありますよ^^^
それでは、また来週このお時間にてお会いしましょう^^




