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魔女祭り51 王と皇后

(言葉もない・・・。エルヴィンよ・・・お前が余の敵になったら・・・)


 ハインリッヒは目の当たりに見た友人である傭兵の戦う姿を見て自分の考えに慄然とする。


(これ程の力をそちは持っておったのだな・・・)


 魔物相手に常人では考えられない戦闘能力を旧知の男から見せ付けられたハインリッヒは改めて感じさせられたのであった。


(以前、余が見たエルヴィンの戦う姿は人間相手だった・・・それでも凄いと感じたが魔物相手にならば遠慮はないということか・・・敵に回れば脅威だ・・・)


 ハインリッヒはエルヴィンの姿を凝視しながら沈思する。自身の握り締める拳から血がにじみ出ている事に王は気づいていない・・・。


「陛下・・・陛下いかがなされました?」


 ハインリッヒは自分の名を心配そうに呼びかける伴侶の声にふと我に返る。


「ああ、アグネスか、いや・・・大事ない」


「そうですか、何やら怖い顔をされてますが・・・、あっ、手から血が!!」


「うん?おっ!、これは・・・少し興奮しておったようだなエルヴィンの戦う姿を見て」


 ハインリッヒは出血している右手の拳を広げその手の平を口元に寄せるとペロリと舌で舐める。


「まあ!、陛下そのような・・・」


「これぐらいの傷、唾を付けておけば大丈夫だ」


 子供のような仕草でニヤリと笑うハインリッヒを見てアグネスもしょうがないと言った表情で苦笑を返す。


「陛下」


「うん、なんだ?」


「エルヴィンが私達の友人で本当に良かったですわね」


 自分の心の中を見透かされたような視線を向けるアグネスにハインリッヒは戸惑いながらも答える。


「ああ・・・そうだな・・・」


「陛下、エルヴィンを手放してはなりませぬ」


「う うむ・・・」


「私の口から申し上げるの憚れますがエルヴィンとの絆を更に強くできるような事が可能でしょうか?。今までは亡きグンヒルダ様との関係でエルヴィンは私たち王家と親しくしてもらっていましたが、現在では陛下との御友誼とベアトリクス姫に対しての親愛の情だけの繋がりです」


「・・・」


「確かに、それだけでも十分だとお考えかと思われるかもしれませんがエルヴィンは・・・」


「そうだ・・・あ奴は傭兵だ・・・」


「そ その通りでございます・・・」


 二人の間にしばしの沈黙が訪れる、が、その時


「畏れながら、申し上げたい事がございますが宜しいでしょうか?」


 二人の傍らに控えていたアリスティッド卿が声を上げる。


「ん?ジャンか、申してみよ」


「はっ、王陛下、並びに皇后陛下様のお話しに不躾にも口を挟む事をお許しください」


「よい、申せ」


「皇后様のご心配、確かにそれがしもいつも胸中にて覚えております。あのエルヴィンは雲のような者にて一箇所に留まるような性格の男ではありません」


「そ それでは!」


 不安そうな声を上げるアグネスに対しアリスティッド卿は安心させるように微笑みながら


「ですが、エルヴィンは以前自分にこう申しておりました」


「な 何と?」


「俺はグンヒルダ様に頼まれて約束をしたのだと・・・ベアを・・・ベアをお願い・・・。彼女からの最後の願い事であるベアトリクス様の行く末を見守る事は俺にとって何よりも重要な事だと・・・」


「そんな事があったのか・・・」


 ハインリッヒは自分の知らない事実に驚く


「そうですか・・・そんな事がありましたのね・・・」


 アグネスも嘆息する。


「臣が愚考するには、王陛下、皇后陛下様におかれてはこれまで通りにベアトリクス姫を暖かく見守りながらエルヴィンにいつもの様に接することが一番肝要かと思われまする」


「フッフッフ、そうかエルヴィンめの心を繋ぎ止めるにはベアを健やかに育て上げ、決して不幸な生い立ちにしなければ良いということだな」


「御意」


「ベアを幸せに育てるという事でしたら、私にも役立てそうですわ、アリスティッド卿」


 安心したような笑みを浮かべた后の表情に満足したハインリッヒは


「ジャンよ、良き事を教えてくれた、感謝するぞ」


「はっ、もったいなき仰せにございます。更に申し上げればエルヴィンの心を繋ぎ止める手立てをいささか現在試している最中でございます」


「ふむ、エルヴィンの心を繋ぎ止める手立てだと・・・」


「はっ」


「ジャンよ、詳しくは聞かぬが期待はもてそうか?」


「その人物なればかなりの期待ができそうにございます」


「その人物とな・・・」


 怪訝そうに問うハインリッツヒの視線を感じながらアリスティッド卿は胸中にてつぶやく


(エルヴィンの心を繋ぐ役はクララなんだけど・・・フッフッフ)


 自分の妹の顔を思い出しながらニヤリとする。


 そのような考えを露知らず畏まり頭を下げるアリスティッド卿の姿をみながらハインリッヒは気持ちを入れ替える。


「さて、この予想外の催しに幕を引かさぬとならぬ」


 ハインリッヒは王の威厳を漂わせながら周りを睥睨すると、


「ジャンよ、セシリア司祭に助力を頼みに参れ。近衛騎士団の治療をお願いするのだ」


「はっ」


 そうハインリッヒは命じると周りを見渡しながら大きく声を上げる。


「さてと、皆の者!今宵の思わぬ催しはこれでお開きである。宴の続きは広間にて行うとしようぞ!!!」


 おおっと言う周りからの声に応じながらハインリッヒは呟く


(魔道王国立国だと・・・ふざけたことを・・・。いずれにしても対応策を考えねば・・・)


 アグネスは自分の夫の背中を見つめながら思い出す。


(そう、そういえばベアはどうしてるかしら?)






 

今回のお話は王夫妻の不安が主題となりました。


人と人の絆というものは目に見えるものではありませんから・・・。


それは、現在も過去も変わりません。


それにしても知らないうちにクララさんはエルヴィンさんの心を繋ぎ止めるという大役を担ってしまって・・・クララさんお兄さんの企ては関係なく頑張ってもらいましょう~^^


最後にご挨拶です。


この物語を楽しみにして頂いてる全ての皆様にお礼を申し上げます。


本当にありがとうございます^^


それでは、来週もこのお時間にてお会いしましょう^^




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