魔女祭り28 企む者
「おい、灯篭の灯りが暗すぎないか?」
夜警に当たっていた近衛騎士団の一人が同僚のもう一人に声を掛ける。
「うん?そうか・・・、ああ、確かに少し暗い気がする」
二人は王宮からゴスラー市街へと続く緩やかな坂道の先にある灯篭が建っている場所に目を向ける。
「気のせいかもしれんが、やはりいつもより暗く感じる・・・」
「よし、俺が見てこよう。もしも何箇所も蝋燭が消えているようなら取り替えるよう報告をしないといけないな」
「そうか、じゃあ頼む」
「ああ」
同僚と別れた近衛騎士は、ぼんやりと光量を浮かべる灯篭の立ち並ぶ場所まで向かい風に遮られながらも坂道を歩き続ける。
(うん?なんだ・・・人影が・・・)
近衛騎士は、そう胸中つぶやくと同時に立ち止まる。
灯篭の灯りに映し出された道には、甲冑姿の人影がこちらに向かって歩いてくる。
ガチャ、ガチャ、と不気味な音を立てながら甲冑姿の集団が近衛騎士の肉眼でその姿が確かめられる位置まで近づくと、近衛騎士の顔には、みるみるうちに恐怖の表情は広がってゆく。
「ス、スケルトンナイト(骸骨騎士)だと!!!な、なんで、こんな所に!!!」
近衛騎士は、震える指で携帯している笛を取り出すのであった・・・。
「ディニュ殿と、申されたな。あなたは我が団が昨年の秋、卿の国であるロートリンゲン公国と敵対して戦った事はご存知であろうか?」
「もちろん、フランケン公国マインツでの国境紛争の件ならいかにも存じておる。誠に愚にもつかぬ戦であった」
「それを承知で、我が団を?」
「ああ」
エルヴィンは、堂々とした視線でこちらを見つめる新任のロートリンゲン公国の駐在官の思惑を推し量るように男の瞳を見返す。
どれくらいの時間が経ったのであろうか、二人は無言で睨み合うような姿勢で立っていたのだがその緊張感の漂う雰囲気を破るような音が。
「ピー、ピー、ピピー、ピー」
屋外で警笛の音がかしましく鳴らされている。
うん?と言った表情で窓の外を見るディニュに釣られてエルヴィンも外の様子を覗おうとした時に二人が立つ入り口の扉が、『ダンッ!』と、いう音と共に開け放たれ近衛騎士が小走りに室内に入り込んできた。その近衛騎士は、副団長であるギレの下に駆け寄ると緊張した表情で何事か告げるとギレは分かったというように頷く。ギレは、早足でハインリッヒ王近くに侍る団長であるレオの傍に立つとそっと耳打ちをする。
(うん、あの警笛の音と近衛騎士団の動きからだと何やら不審者の侵入があったのか?)
騎士団たちの一連の動きを見て想像したエルヴィンは、また窓の外を覗いていると急ぎ足の足音が近づいて来るのが分かる。その先頭に立つギレは入り口の扉近くに立つエルヴィンの姿を見つけると、小声で話し掛ける。
「エルヴィン殿、魔物が現れたようです」
「魔物?」
「ええ、報告ではスケルトンナイト(骸骨騎士)だと」
「スケルトンナイト(骸骨騎士)だって?、なんでそんなアンデッドが?」
「詳しいことは、私が見てからまた報告に。それと何体かいるみたいなので私共に手に余ればご協力をお願いしたいのですが」
「承った」
「では」
屋外に出て行くギレ達の後姿を見ていたエルヴィンに、
「ではエルヴィン殿、先程の提案の件、良い返事を待っておりますぞ」
ディニュが、声を掛ける。
「考えておきましょう」
エルヴィンの答えにフッと微笑むとディニュは外の様子を見に行くのであろうか、その身を翻す。
(あの駐在官・・・、いったいどんな思惑があるのやら・・・)
エルヴィンは、ディニュからの提案の件を一旦思考から外そうとして改めて晩餐会の会場を見渡すと、出席者達の間でザワザワとざわめきが聞こえてくる。
その時、ハインリッヒは、おもむろに立ち上がると皆を注目させる。
「招かざる者達が今宵の宴に興をそそられて参ったようだが、丁重にお断りするよう今、余は近衛騎士団に命じたところである。皆は、そのままこの宴を楽しむように」
王の風格が安心させたように、会場の参列者達は再び談笑をし始める。
(さすがは、ハインリッヒ王。一声で場を鎮めたなぁ・・・)
エルヴィンは、ハインリッヒ王の王者の風格に喜びながらも外の様子が気になる。
エルヴィンは、しばらくの間平穏になった広間を眺めていたが、やがて
(俺も、外の様子を見に行くとするか・・・)
と、考えた時に遠くから剣戟の音と叫び声が聞こえる。
(これは、ギレ殿達だけでは手に負えぬ状態か・・・)
外の喧騒が大きくなり始めた頃、叫び声が!
「な、なんだ、あれは!!、骸骨の騎士だ!、ま、魔物だぞ!!!」
窓から外を眺めていた晩餐会参加者の一人が大声で叫んだ。
「な、何だって!!!」
その叫び声を聴いて他の参加者が外の様子が見える窓に向けて殺到する。
「陛下、私も参りましょう」
近衛騎士団団長のレオは、ハインリッヒに冷静な声で許可を求める。
「うむ」
一礼をして、その場から離れようとするレオに
「団長、じ、自分もお供をさせてください」
近衛騎士団になりたてのディートルが直訴する。
「ディートル、お前も含めてこの場に居る者は陛下の下から離れるな、何があっても陛下のお近くに侍るのだぞ、これは、命令だ」
「だ、団長・・・」
レオは、ディートルにそう言い渡すと踵を返し、出入り口の扉に向かう。そこで壁にもたれながらこちらを見ているエルヴィンの前に立ち止まると、
「エルヴィン殿、陛下のこと、お頼み申す」
と、頭を下げる。
「承りました、レオ団長も気をつけて。自分も中の様子を見ながら後で参ります」
「それは、心強いですな」
レオは、エルヴィンの言葉に安心したように頷くと、心配そうに玉座の位置に座るハインリッヒの姿を振り返る。
「なぜか、嫌な予感がします。エルヴィン殿、頼みます」
「はい」
(近衛騎士団団長も退出したようですね・・・)
エルヴィンとレオの姿を広間の反対側で見ていたローマ聖教会の御者であるグイドはつぶやく。
(さて、王陛下にご挨拶をしてさしあげましょう、クックック・・・)
その口元は、凶悪そうにゆがんでいる・・・。
次回のお話で、グイドの正体がついに判明しそうです。
魔物達と戦うレオやギレらの近衛騎士団達はどうなってゆくのでしょうか・・・。
晩餐会会場に残ったエルヴィンの活躍は!?
皆さん、お楽しみに!!!
最後にまたご挨拶です。
ブクマを付けていただいた方にお礼をもうし上げます。本当にうれしくて励みになります。
ありがとうございました。
この物語を楽しみにしていただいてる全ての皆様に感謝の気持ちを、いつもいつもありがとうございます。
それでは、また来週、お会いしましょう^^




