表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/93

魔女祭り21 エルヴィンは私のだから

 エルヴィンの言葉に驚いたホトに更に続ける。


「ヘル爺や俺が知っている召喚魔法の呪文と全然違っているからな・・・」


「その通りじゃ。姫が言われた言葉は聞いたこともない」


「エイワーズ・・・エオー、ベルカナ・・・ベオーク・・・。これは恐らく古代ルーン語のスペルではないかと・・・」


「古代ルーン語だとな!?」


「ああ、たぶん間違いないかと・・・」


「して、その意味は?」


「エイワーズ・・・エオーは死と再生、ベルカナ・・・ベオークの意味は再生と誕生・・・だったと思う」


「死と再生、再生と誕生・・・」


「ああ、それで姫が教えてくれた夢を想像するに何か祭壇のようなものがあり、その周りに何人かの人間が同じ言葉を詠唱しているように思えたのでな・・・。この推理、ヘル爺はどう思う?」


「うむ・・・」


 ホトは暫しの間考え込んでいたがやがて考えがまとまったのであろうか、おもむろに口を開く


「エルヴィンよ、おぬしが言うように召喚魔法の儀式のように思われるな。それもその古代ルーン語を使って複数の人間が詠唱しているということはかなりの高位召喚魔法と想像する・・・」


「さすがは、宮廷魔術師殿。俺もそう考えた」


「ふん、おぬしにおだてられても何もやらんぞ」


 ホトはそう言いながらもまんざらでもない様子でエルヴィンに気になっていることを問う。


「それでじゃ、何故に姫がそのような夢を見始めるようになったのかということだが?」


「姫、何か心当たりはありませんか?」


 エルヴィンは、ベアトリクスに優しく尋ねる。


「全然、わからないの・・・何でこんな怖い夢を見るのか・・・」


「そうですか。では皇后陛下は何かお心当たりはありませんでしょうか?」


「いえ、私もベアがそんな怖い夢を見る理由なんて心当たりは全くないのですけど・・・」


 エルヴィンの問いにアグネス皇后は心配そうな表情で答える。


「そうですか、では質問を変えましょう。姫が夢を見るようになったのはいつ頃だったでしょうか?」


 アグネス皇后はベアトリクスを見ながらエルヴィンの質問に答える。


「確か、今月・・・4月に入ってからだと思いますわ」


「そうですか、ありがとうございます」


 事の推移に注目している室内にいる者全てに語りかけるようにエルヴィンは姿勢を正した。


「陛下、自分の考えを述べさせてもらってもよろしいでしょうか?」


「うむ、遠慮はいらぬ。そのためにそちをこの場に呼んだのだからな」


 ハインリッヒ王は鷹揚に頷く。


「自分が、姫の夢の中の言葉が古代ルーン語ではないかと思い至ったのに理由があります。それは、セシリア司祭殿」


「は、はい」


 急に名前を呼ばれたセシリアは驚きながらも返事をする。


「セシリア司祭殿のうなじの後ろに浮かび上がったスティグマが先ほど私が宮廷魔術師殿に話したように古代ルーン語の形に似ているのではないかと考えていたためです」


「ほう・・・」


 嘆息して声をあげる一同を見渡しながらエルヴィンは続ける。


「セシリア司祭殿が先月3月20日復活祭の晩に大天使ミカエル様より聖託を賜った話を思い出しますとある魔術師のような人物がおのが力を手に入れようとするがためにルシフェル様配下の魔族と契約をしようとしていたとおっしゃってたかと」


「ええ、その通りでございます」


「私は、その契約の儀式の一旦をベアトリクス姫が夢見されたのではないかと推測してます」


「ええ!!!」


 驚きのあまり、声を上げたセシリアを含めエルヴィンの言に驚嘆しざわめく一同・・・。


「エルヴィン様の想像が事実だとすると・・・、えっ、もしかすると」


 セシリアは、何かに気づいたかのようにエルヴィンにその閉じられた目で問うように見つめる。


「ええ、その可能性は・・・ありますね・・・」


 エルヴィンは言葉には出さない彼女の閉ざされた視線の中にある問いに答える。セシリアはエルヴィンの答えに頷くと


「ベアトリクス姫殿下」


「は、はい」


 セシリアは声が聞こえた方に体を向けると


「失礼を承知でお聞きしたい事があります、よろしいでしょうか?」


 ベアトリクスはセシリアの言葉に不安そうな表情になり、エルヴィンにどうしたらいいの?というような目で見つめると


「御安心してください、姫殿下」


 心配無用とばかりに少女の姫にささやく。その言葉に安心したかのようにベアトリクスはセシリアに答える。


「どうぞ。セシリア司祭」


「はい、ご了承ありがとうございます。姫殿下がその夢を見るようになってからお身体に異変はございましたでしょうか?」


「異変?」


「ええ、極端に言いますとお身体に痣のような物が浮かび上がってきてはないでしょうか?」


「そ、それは!」


 セシリアの問いにベアトリクスの父親であるハインリッヒはまさかと言う様な表情で絶句してしまう。


 アグネス皇后は珍しくも狼狽している自分の夫であるハインリッヒの姿を見て声を繋ぐ。


「私がベアの体を見たときには気づくことはありませんでしたけど、ベアは痣のような物が体に出て来たことはありませんか?」


「いえ、お義母様、そのような痣は見たこともないです・・・」


「そうですか・・・、でも念のために自分では見れない場所に出て来てるねかもしれませんからね。カミラをここへ」


 アグネス皇后は、ベアトリクスの身の回りの世話をしている侍女を呼び出すと部屋の外で控えていた女性が入室してきた。


「カミラ、聞きたいことがあるのです。ベアの身体に最近痣のような物が浮かび上がってはないかしら?」


「姫殿下様のお身体の上に痣のような物ですか・・・、いえ、私は気づきませんでしたが。お風呂でお身体を洗ってさしあげたり、またお風呂上りにお身体を拭いた時にも何も見当たりませんでしたが・・・」


「そうですか、ありがとう」


アグネスは、そう言って侍女を労うと彼女の言葉に安堵したような表情の夫に視線を向ける。その視線を受けてハインリッヒ王は、


「セシリア司祭、残念と言ってもよいのだろうか、娘の父である余にとっては、はなはだ複雑な心境なのであるが・・・」


「いえ、陛下、そのお心持ちよく理解できます故に」


「感謝する。残りの6人の聖女捜し、余も改めて言葉を大にしよう。エルヴィンの想像が事実だとすれば容易ならぬ事態が進んでいるようだからな。よいか、皆の者全力で事に当たるように」


「はっ」


 黒王とも称せられるハインリッヒの威厳のある言葉に一同が頭を下げる。


「うむ、余はこれからくるであろう教皇使節団を迎える準備をしようと思う。皆の者、この場で時間が許す限りくつろぐように、そうだアグネスよ、室外にいる者も含めて、皆に飲み物や軽く摘める食べ物を用意してやるといい」


「仰せのままに、陛下」


「ジャンよ、使節団に対する応対への最後のすり合せを致すとしよう。別室に付いて参れ」


「御意に」


 アリスティッド卿は、エルヴィンに向けてちらりと微笑みながら一瞥をくれるとそのまま王の後に従い別室に退いた。エルヴィンは、彼の後姿を見るともなく見ていると不意に声を掛けられた。


「エルヴィン様、今日は本当にご協力ありがとうございました」


 そこには、フィーネと呼ばれた付き人の女性に手を率いられたセシリアが近くに立っていた。


「いえ、何も自分はしておりませんよ、自分の想像を皆様に述べただけですから。それよりも、そちらにいらっしゃるヴィオラ殿にも強く叱られましたが、本当に悪気はなかったのですけどご無礼の段、申し訳ありませんでした」


 エルヴィンは、きつい眼差しで自分を睨み付けている護衛の神官戦士の女性の視線に気づき再度セシリアに謝った。


「いえ、お気になさらずともいいのです・・・」


 その場面を思い出したのであろうか、セシリアの頬はうっすらと赤みがかかっている。


「いや、ご不快な思いをさせてしまいましたね。この通り深くお詫び申し上げます」


 と言って、エルヴィンは目の不自由な彼女の前で深く頭を下げる。


 セシリアは、そんなエルヴィンの様子を感じたのであろうか、


「不快だなんて・・・、全然、私は思っておりません」


「そう言っていただけると助かります・・・」


 そういい終えた二人に微妙な間が訪れたのであったが、その間を壊すように


「コホン!」


 ヴィオラの空咳が・・・。


「セシリア様、エルヴィン殿にお聞きしたいことがあったのではないでしょうか?」


「そ、そうね。私としたら・・・」


 辞儀を直すとセシリアはエルヴィンに真剣な表情で質問をする。


「エルヴィン様、ベアトリクス姫殿下の夢見に関してなのですけど・・・本当に痣、いやスティグマは無かったのでしょうか?」


 セシリアは幾分周りを憚って、小声でエルヴィンに尋ねる。


「自分の、愚見ですが今は・・・まだだと・・・。いずれ顕れるかもしれませんね」


「そうですか、今はまだだと・・・」


「セシリア司祭殿、自分は姫の様子を見て気づいたことがあったんです」


「それは?」


「うっかりしてましたが、スティグマは聖職者の女性だけに浮き出るものではないということです」


「あっ、そ その通りですね」


「持論が正しく、姫の身にスティグマが顕れたとすればその証拠となりますが、今はまだ・・・推測に過ぎませんが・・・」


「はい・・・」


 二人の間にまた暫しの間、沈黙の時間が訪れる。


 やがて、重い沈黙を振り払うように明るい声でセシリアが話し掛ける。


「それにしても、エルヴィン様は魔法に関して造詣が深いのですね。あの大魔術師のホト様がおっしゃるぐらいですもの」


 彼女の声には尊敬の気持ちがそこはかとなく出ている。


「いえいえ、それは買い被りというものですよセシリア司祭殿。魔法の知識や発動できる魔法の数においては、私なんかよりはるかにヘル爺、いやホト宮廷魔術師殿のが上ですよ」


「でも、私のスティグマを見てから古代ルーン語ではないかと想像されたり、姫殿下の夢から召喚魔法の儀式ではないかとの推測されるあたり、並みの人では考えつかないと思います!」


「いや、たまたま古代ルーン語に関して興味があったものですから、想像ができたというだけですよ」


「いえ、そんなご謙遜をするエルヴィン様はすごい人だと私は・・・思います・・・」


 何故か、言葉尻を濁しながら閉じた瞳のまま顔を赤らめるセシリアの表情を見てエルヴィンは慌てて


「私なんかより、大天使ミカエル様より聖託を賜ったセシリア司祭殿のほうがよっぽどすごい人だと思います。さすが聖女と世間で称せられる人物だと」


「そんな、私は・・・」


 二人の何とも言いようもない、いい雰囲気に付き人であるフィーネはわくわくとしたような表情で主の仕草を眺め、またヴィオラは面白くないといった表情でエルヴィンとセシリアを見比べている。もう一人の巨漢の男の神官戦士はというと、これもまたにニコニコと笑みを浮かべているのであった。


 するとその時、エルヴィンは背中越しに右袖を引っ張られるのを感じ振り向くとそこには、少女が立っていた。


「エルヴィンは、エルヴィンは、私の・・・私のだから」












 






 










これは、次回は修羅場ですか!  あははは^^


インフルエンザも猛威を増し、立春を過ぎてもまだ本当に寒い日が続きますが皆様はお元気に過ごされてますか?


また、お礼を。ブクマを付けていただいた方、本当にありがとうございました^^


非常にうれしく思っております・・・。励みになりますから。


この物語を楽しみにしていただいてる全ての皆様方にお礼を申し上げます。


ありがとうございました。


また、感想や評価の方もお待ち申し上げていますので・・・。


それでは、また。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ