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魔女祭り12 マテウス

「アリスティッド卿、すまないが先に行ってくれ、少し所用を済ませてくる」


「ああ、了解。あまり遅れないようにね」


「ああ」


 エルヴィンは、謁見の間を出ると、2階の王の私的応接室に向かおうとしたアリスティッド卿にそう言うと人目を避けるようにお手洗い場が見える柱の側に向かう。そこで一度辺りを見渡し確認すると目を閉じ右手の人差し指を額に当て意識を集中する。


「エ・ネナゴン(念話)!」


「おおっ!!、エルヴィン!!びっくりしたよ。何度経験しても突然頭の中に呼び掛けられると驚くんだから・・・。で、どうしたんだい?」


「突然に悪いな、マテウス、お前今どこにいる?」


「今?今はバートハルツブルクからゴスラーへの帰り道だよ」


「バートハルツブルク?」


「ああ、頼んでおいた剣の補修が終わったって連絡あったものだから受け取りにね」


「バートハルツブルクにそんないい腕の研ぎ師がいるのか?」


「ああ、そうなんだよ。自分も今回初めて頼んだのだけど、仕上がりは素晴らしいの一言に尽きるよ!」


「ほおー、じゃあ、俺も今度頼んでみるかな。ところでマテウス、ゴスラーに戻ったら王宮まで来てもらいたいのだが」


「王宮だって!?。何だってまたそんな所へ・・・ん?仕事の依頼かい?」


「まだ、何とも言えないんだが、妙に胸騒ぎがしてなあ・・・」


「ふーん・・・。面倒な事に巻き込まれなければいいんだけどねえ・・・」


「悪いな、これは、団長としての命令だ」


「あー、わかったよ。最初からそう言ってくれればいいんだよ、わざわざ念話をよこすくらいなんだから。了解、マイン・シュールレイター!(我が団長)」


「じゃあ、頼む」


「あっ、!!!」


「ど、どうした・・・」


「洗濯物を・・・取り込んでからでいいかな・・・」


「あ、ああ・・・」







 エルヴィンは、マテウスとの念話を終えると2階の応接の間に歩き始める。2階に上がるとそこには巨大な壁画が描かれており、その壮観さに目を奪われしばしの間足を止め見入ってしまう。


(この、壁画はいつ描かれたんだろう・・・すごいなぁ・・・)


 もともと感受性の強いこの男は、美しいもの、荘厳なものを間近にしてしまうと我を失って見とれてしまう癖があり今もつい、その癖が出て立ち尽くしている。


 その時、エルヴィンの至福の時間を破る声が


「おい、そこの男」


 エルヴィンは、自分の至福の時間を邪魔する不快な声をあえて無視しているとさらに、


「おい、お前、聞こえないのか」


 ちらりと、その声の主をエルヴィンは一瞥するとそこには、金色の鷲の羽根を両肩に装飾された赤色を基調にした騎士の制服を着た茶髪の男が目に怒りを湛えて近づいてきた。


「おい、お前、ここで何をしている。ここは、陛下の間に繋がる廊下だぞ、お前のような身なりの人間が入りこむような場所ではない。まったく下の階の近衛騎士達は何をやっているのだ」


(近衛騎士団の制服だな・・・見覚えのない顔だ・・・)


 エルヴィンは、自分の近くで立ち止まった男を見るとわざと歯牙にもかけないと言った体でまた壁画に視線を向けた。


 騎士の男は、エルヴィンのその態度にさらに怒りの表情になり、


「き、貴様は、わざと聞こえぬ振りをしているのだな。ならば、王宮内への不埒な侵入者として外へ引きずり出すまでだ」


 騎士の男がそう言って、エルヴィンの肩を掴もうと一歩足を出そうとした時に、


「俺のことを、呼んでいるのかね」


「な、何!!」


「だから、自分のことをお前と呼んでいるのかと聞いている」


 壁画を眺めながら、突然声を出したエルヴィンに騎士の男は一瞬躊躇したが、


「貴様のことだ、不埒者」


 と、言ってエルヴィンの肩を掴もうと手を伸ばす。するとエルヴィンは男のその伸ばした手首を右手で掴むと、そのまま身を沈めと男の両足を右足で足払いをする。男は自分の手をエルヴィンに掴まれているため受身もとれずその場に仰向けに倒された。


「近衛騎士団の質も落ちたものだな、身なりでしか人間の判断ができないとはな・・・」


 エルヴィンの言葉を聞いた騎士の男は、背中の痛みに顔を歪めながらも立ち上がると、


「貴様、近衛騎士団への嘲り・・・許せん。この場で成敗してやる」


「ほう・・・、この王宮内で剣を抜くか・・・」


 エルヴィンは、立ち上がり剣の柄に手をかけた男に、そう問う。


「王宮内に侵入した不審者が手向かったために切り捨てた。別に咎められることもない!」


 男は、そう答えると鞘から剣を抜く。


「なかなか、使えるようだ。が、まだまだ・・・だな」


「大口を、ほざくな!」


 騎士の男は、その剣の切っ先をエルヴィンの胸元に向ける。


(やれやれ、困ったものだ。ここでこの近衛騎士に怪我をさせると・・・少々・・・まずいな・・・)


 エルヴィンが、暢気にそんな事を思っていると、


「そこまでだ、ディートル!剣を収めよ」


 エルヴィンの背後から低いながら、威のある声が聞こえる。


「レオ団長!」


 ディートルと呼ばれた男は、そう叫ぶ。


 エルヴィンは、振り返り声の主の顔を見て、表情を緩めた。


「エルヴィン殿、お久しぶりですな」


「こちらこそ、お久しぶりです。レオ・ガイヤー近衛騎士団長殿」


 そこには、美髯を口元に蓄えた壮年の男がにこやかな表情でエルヴィンを見つめていた。



















やっと、団員が登場しました!!!。マテウスさん、どんなキャラになるか筆者自身も楽しみです。それと、レオさん!、渋い男性も初登場ですね~、この方も今後エルヴィンたちと、どのように物語の中でその運命が絡み合うことになるのでしょうか?


初冬になり、寒さも厳しくなってきましたね。皆様方、くれぐれもお体ご自愛ください。


最後に、いつもと同じですがこの物語を楽しみにして読んでいただいている皆様方にお礼を申し上げます。


本当に、ありがとうございます。

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