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3000年地道に聖剣を守ってきましたが、幼妻とイチャイチャしたいので邪竜になりました。  作者: 延野正行
第2章 竜を守る乙女たち

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第19話 大魔導、召喚。

遅くなってすいません。


 突然、現れた奇妙な鉄の魔獣に、祝勝会場は騒然となっていた。


「すごい。かっこいい」


 ニーアが叫べば。


「むむ。強そうだ」


 デュークはライバル心をむき出しにし、


「なんか怖いです」


 フランは戦いている。

 リンとスライムも遠巻きに見つめていた。


「これはロボットというものだ」

「魔獣なのですか、主よ」

「魔獣とは少し違う。簡単にいえば、鉄に命が宿ったものだと考えよ。こんな姿をしているが、従順で力も強く、さらに頑丈だ」

「従順で、力も強く、そして頑丈……」


 ますますデュークは燃え上がった。

 その3つであれば、こやつも敗れるわけにはいかぬのであろう。


 ぶつぶつと何か呟いていたデュークは顔を上げた。


「主よ。クリーチャーと試合をさせていただきたい」

「立ち合うというのか。しかし、クリーチャーは戦闘用ではなく、ダンジョン作成用のロボットなのだぞ」

「いえ。私にはわかるのです。この者は飛んでもない潜在能力を持っていると」


 完全にデュークは戦闘モードに入っていた。

 まあ、1度戦えば、クリーチャーが戦いに向いていないことがわかるであろう。


「わかった。好きにするがよい」

「ありがとうございます、主」


 デュークは頭を下げると、クリーチャーの方を向いた。


 突然、始まった真剣勝負に、村の者たちは湧く。

 若い衆の間では、賭けが行われているようだ。

 全く人間というのは、相変わらずお祭り好きだな。


 デュークはスラリと剣を抜いた。


 じりじりと距離を詰めていく。


 一方、クリーチャーは沈黙していた。

 目のような緑の宝石を不気味に光らせている。


 デュークがあと半歩踏み込んだ瞬間、突然クリーチャーは謎の音を発した。けたたましい音に、皆は耳を塞ぐ。


 デュークは地を蹴った。


 一気に勝負を付けるつもりだ。


 その時、クリーチャーの瞳が赤く光る。


「テキタイコウドウ ケンチ。ハンゲキ シマス」


 ヒュン、と何か赤い光が通り過ぎる。

 気が付けば、デュークが持った剣が溶けていた。


 さらにクリーチャーの目は迫ってくるデュークに向けられる。


 まずい――。


「クリーチャー、止まれ!」

「メイレイ カンチ。メイレイジッコウ」


 クリーチャーの目が赤から緑に戻る。

 今にもデュークに飛びかからんとしていた体勢を解き、眠ったかのように静まった。


 デュークは刃のなくなった剣を振り上げたまま立ち止まる。


 やがて膝をつき、がっくりと項垂れた。


「私の負けです」

「気を落とすな。我もこやつの性能には驚いておる」


 クリーチャーは古代時代の遺物だ。


 いくらダンジョン拡張用の機械とはいえ、それが持つテクノロジーは雲泥の差がある。おそらくクリーチャーが放ったのは、溶接用のレーザーであろう。だが、この時代の兵器といえるものと比べれば、素手で拳銃とやり合うようなものだ。


 いずれにしろ、この力をただダンジョンの作成に使うのはもったいない。

 ダンジョンのどこかに戦術上の配置を考えても良さそうだ。


 デュークは少しがっかりするかもしれないがな。


 そのさまよえる騎士は、すっくと立ち上がった。


「主よ。私は己を鍛え直したい! 是非、鍛錬場をお作り下さい」


 デュークは我に縋り付いた。

 涙腺でもあれば、たちまち泣いていたかもしれぬ。


 それほど嘆願は真に迫っていた。


「落ち着け、デューク。鍛錬するのはかまわぬが、お主の強さはレベルによる。人間のように鍛錬したところで」

「モンスター ノ レベルアップ ハ カノウ」

「なんと誠か! クリーチャー殿!!」


 とうとうクリーチャーに『殿』を付けたぞ、こやつ。


「バーチャルエネミー ヲ サクセイ。シュミレーション ニ オイテ、エネミータオセバ、レベルアップ ガ カノウ ト スイソクスル」

「主よ。クリーチャー殿のいっていることは難しくわかりませぬ」

「我もあまりよくわかっておらんが、どうやら仮想の敵を作る施設を建造できるらしい。それを倒せば、レベルを上げることが出来るそうだ」

「タンレンジョウ ヲ ツクリマスカ?」

「主よ。是非作っていただきたい」


 デュークは涙ながらに訴える。

 モンスターのレベルアップは確かに魅力的だが……。


 お高いんでしょ?


「ゲンザイホユウシテイル タカラモノ ノ ハンブン ヲ ショウヒスル」


 やはりか。

 どうするか、考え物だな。


 なおもデュークは我に縋り付き、頭を下げる。


 フランとニーアを見てから、我は決断した。


「わかった。鍛錬場を作ることを許可する」

「ありがとうございます、主」

「すまぬな。フラン。本当であれば、炊事場を先に作ってやりたかったのだが」


 我は頭を垂れる。

 フランは慌てて手を振った。


「そんな大丈夫ですよ。今のままでも十分です」

「お前たちの個室は作るつもりではおるから安心してくれ」

「個室ですか?」


 度々我々が困っているのは雨の時だ。


 この頂上で雨宿り出来るところといえば、ダンジョンの出入り口付近しかない。それも少々長雨であれば、雨水がダンジョンの方に流れ込み、結局びしょ濡れになってしまうという事態になっていた。


 それになんといっても、女の子だ。

 いつまでも、こんなだだっ広い場所で着替えをさせるわけにはいかぬ。

 かねてからフランやニーアの個室は必要だと、我は考えていた。


「クリーチャーよ。個室を2つ分作りたい。可能か?」

「カノウ」


 クリーチャーはピカリと目を光らせた。

 一方でニーアは首を傾げる。


「2つ?」

「ニーアの部屋も作るのだ」

「ニーアはいらない。ニーアのお部屋はここ」

「しかし、今日日の女の子がずっと野宿というわけにはいくまい」

「ニーアはガーディの側にいるだけで幸せ」


 ぺたりと我が腹に頬を押しつけ、スリスリする。

 ポッと頬を染め、宣言通りに幸せそうだった。


 まったく(うい)ヤツよ。


 我はペロペロとなめる。


 確かに我もニーアがいないと寂しいかもしれぬ。


「わかった。ならば、ここに個室を作ろう。それで許してくれ。そなたが雨に打たれる姿を見るのは忍びない」

「ニーアが雨に濡れるとスケスケになるよ」


 いずれ見てみたい気もするが……。

 スケスケになったちっぱい乳首とか、ごくり……。


 いかんいかん。


 最近、どうも緩み過ぎておる。


 皆の前だしな。


 後でそっと見てみよう。


「コシツ ヲ ツクリマスカ?」

「うむ。ここに1つ。ダンジョン内に作ってほしい」

「カシコマリマシタ。ダンジョンナイ ノ ドコニシマスカ?」


 試練の洞窟と生活の空間は分けておきたい。

 そうだ。観光用ルートがあったな。

 出入り口は塞いだが、道はそのまま残っているはずだ。


「観光用ルートに設置するが良い」

「カシコマリマシタ」

「あともう1つ作りたいものがある。図書室を作れ」

「図書室?」


 首を傾げたのはフランだった。


「本が一杯ある部屋だ」

「あ、いえ。それはわかるんですけど、どうしてそんなものを作るのですか?」

「この部屋がないと、召喚に応じぬモンスターがおってな。そして我らにはそのモンスターの召喚が急務なのだ」


 さらに我は試練のダンジョンに魔法の扉の設置を命じた。


 取った財宝は一部を残して、ほとんど消えてしまう。

 財宝はすべて分解され、クリーチャーたちが作るものの材料となったり、彼らの燃料となるのだ。


 あれほどの財宝と武具が、あっという間になくなってしまった。

 しかし、これでかなりダンジョンらしくなるはずだ。




 3日後、図書室と個室が完成した。


 早速、見に行ったフランは驚くべき光景を目にする。

 部屋はあまり広くはなかったが、清潔なベッドと箪笥などが家具など設えてあった。フローリングもピカピカでワックスがかけられている。


 これにはさすがの我も驚いた。


 今の時代の部屋というよりは、古代の人間が使っていた部屋に似ている。


 試しにフランはベッドに飛び込むと、スプリングが小さな身体をぽよんと弾いた。


 なかなか楽しそうだな。

 我もやってみたい。


「なんか凄く綺麗で落ち着かないです」

『ふはははは。しばらくすれば慣れるであろう』

「はい。大切に使います」


 我は近くに出来たニーアの個室も覗いてみる。


 千里眼を使わずに、いつでもニーアを見ることが出来て便利だ。

 ここに作って正解だった。


 ニーアはというと、早速ベッドに寝ころんでいた。


 小さく寝息を立て、眠っている。

 可愛い寝顔だ。

 天使のようではないか。


 我はペロペロしたいが、個室の壁に阻まれた。


 むぅ――。


 今度、クリーチャーに命じて、我がペロペロできる穴を作ってもらわねば。


「ガーディ……。エッチ……」


 ニーアはむずがる。

 こうして個室で眠る我が妻を見るのは、満更でもないか。


 ガラスケースに入れられた人形のような妻を、我はしばし愛でるのであった。




 我はニーアとフラン、配下たちを呼び、召喚の儀に入った。


 図書室が出来上がり、新たな配下を呼ぶためだ。


「デューク。お主疲れておるな」

「少々……。鍛錬場が出来るのが待ち遠しくて眠れませぬ」


 あまり無理をするものではないがな。

 ところで、亡霊であるさまよえる騎士は、睡眠が必要なのだろうか。


「ガーディ、用意できたよ」


 ニーアは魔法円を書き終え、その上に残っていた財宝を置く。

 これで最後だ。

 次からは、また人間を呼び寄せ、試練のダンジョンで血祭りに上げる日々が始まる。


 我は吠声を上げた。


「闇の(みち)を極めし大魔導よ。我が盟約にしたがい、召喚に応じよ」


 魔法円が赤く光る。

 捧げ者がすべて溶けた。


 代わりにせり上がってきたのは、ローブを着た魔導士だった。


「大魔導、召喚に応じまかりこしました。主よ、なんなりとご命令を」

「よくぞ来た。大魔導よ、我が戦列に加わるがよい」

「ありがたき幸せです」


 早速、我は大魔導のレベルを確認する。



 なまえ  :大魔導

 Lv   :8

 ちから  :C   ぼうぎょ :A

 ちりょく :S-  すばやさ :B+

 きようさ :A   うん   :C-

 けいけんち:421 ませき  :A×5 C×8



 おおッ!


 とうとう我が配下に「S」能力値のモンスターが入ったか。


 レベルが低いが、モンスターとしての格が違うのだろう。

 この後、成長すれば、かなりの戦力になるはずだ。


「またしてもライバルが。私も頑張らねば!」


 デュークは闘志を燃やした。


 大魔導を呼んだのは他でもない。


 先の戦いにおいて、我が一番苦心したのは、魔法への対処だ。

 幸い山賊が持っていた“魔法消しの煙”によって封じることができたが、すでに手元にはない。それに何度も通じる戦法とも思えなかった。


 そこで我は魔法系を強化するために、大魔導を呼んだ。


 ただこやつは本がある場所にしか住まない。

 手元になければ、どこかに行ってしまう身勝手なモンスターなのである。

 デュークの忠誠心を見習ってもらいたいものだ。


 さらに、我は大魔導に命じた。


「お前には我らのダンジョンの魔法強化と、もう1つ調べてほしいことがある」

「なんなりと」


 我はデュークに合図する。

 大魔導の前に一振りの剣が差し出された。


「ほう。聖剣級の名剣ではありませんか。かなりの魔力を感じます」

「この調査をそなたに依頼する」


 剣は山賊が持っていた。

 簡単に手に入るものではない。

 おそらく山賊が襲った国の物資の中にたまたま紛れていたのだろう。


 大魔導が言うように、かなりの名剣で強い魔力を感じる。


 我の腹に収めるか、これを使って召喚、あるいはダンジョンの拡張を進めたいところだ。


 しかし、食糧や素材に使うのは、ちともったいない。

 出自も気になる。


 そこで我は、この剣の量産が可能か大魔導に研究させることにした。


「かしこまりました。必ずやご期待に添えましょう」


 大魔導は恭しく頭を下げた。


 さて、次なる案件は……。


 我はニーアとフランを見つめた。


日間ジャンル別で14位でした。

若干、勢いが落ちてきましたが、まだまだ頑張りますよ。

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