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3000年地道に聖剣を守ってきましたが、幼妻とイチャイチャしたいので邪竜になりました。  作者: 延野正行
第2章 竜を守る乙女たち

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第18話 クリーチャー召喚

いつもより遅くなってすいません。

新章に伴い、タイトルを若干変更いたしました。

今後ともよろしくお願いします。


旧タイトル

「3000年地道に聖剣を守ってきましたが、この度邪竜にイメチェンすることにしました。」

新タイトル

「3000年地道に聖剣を守ってきましたが、幼妻とイチャイチャしたいので邪竜になりました。」

 夕闇のタフターン山頂で、大きな焚き火が揺れていた。

 橙色の炎は優しく周囲を照らし、和やかなムードを演出している。


 数十人ほどの人間とモンスターの手には、酒杯が握られていた。


 我は顔を上げる。


「皆のもの、ご苦労であった。我からの振舞酒である。堪能するがよい」



 乾杯――。



 酒杯が掲げられる。


 あちこちで杯を叩く音が響き、その度に酒の滴が夜の空に舞い上がった。


 今日は、王国の騎士団共を追い払った祝勝会だ。

 ニーア、フラン、そして我が配下はもちろん、ミーニク村の者も参加している。


 皆、嬉しそうだ。


 騎士団を討ち払ったことによって、多少村人は動揺しているかと思えば、そうではないらしい。今の村長であるハーバラドによれば、村の中には国に騙されたと考える者がほとんどで、いつか仕返しをしたいと憎悪を滾らせていたらしい。


 逆に我に向かって、改めて礼をいうものもいた。


「みんな、喜んでる。良かったね、ガーディ」

「うむ。勝って兜の緒を締めよという古代の言葉があるが、今日のところは羽目を外しても良かろう」

「ガーディ、じゃあニーアと羽目を外す」

「どういう羽目の外し方をするのだ?」


 ペロリと我が妻を舐めた。

 我の愛撫にニーアは気持ちよさそうに身を委ねる。


 ちょっと悪戯心を出したくなった。


 いつもニーアの頬を中心にペロリとするのだが、今日は小さなお尻を舐めてみる。


 すると「キャッ」と可愛い声が聞こえてきた。

 お尻を隠す。


 むっと睨んだが、頬を染め満更ではない様子だ。


「ガーディのエッチ」

「そろそろ新たな刺激も必要かと思ってな」

「みんな、見てるよ」

「心配するな。我はここの王だぞ」


 ちらっと宴会場の方を見る。


 みんながこっちをガン見してた。

 赤い眼を光らせると、一斉に視線を外す。

 何も見てなかったよ、とでもいうように、騒ぎを続けた。


 ごほん……。


 確かに大勢の前では少々控える必要はあるか。


「ガーディ様、リクエストのシチューをお持ちしました」


 フランが熱々の土鍋を手に持ち、我に捧げる。

 今日は一段と尻尾を激しく振っている。とても嬉しそうだ。


「会心の作です。どうぞお召し上がりを」

「いただくとしよう」


 フランは土鍋からシチューを掬う。

 木のお玉に入ったシチューを、フーフーと冷ましてくれた。


「熱々だな」

「もう少し冷ましましょうか?」

「ん? 何か方法があるのか」

「えっと……。とっておきの方法があるんですよ」


 フランは一旦お玉を戻す。

 土鍋に、自分のお尻を向けた。


 ゆっくりと尻尾を動かし、熱々のシチューを冷まし始めた。


「んしょ。んしょ」


 顔を赤くし、額には汗が滲んでいる。

 一生懸命、シチューを冷まそうとする姿が健気だ(とうとい)


 だが、我の目には揺れる小さなお尻しか見えてなかった。


「あざとい」


 といったのは、我が妻ニーアだった。

 ようやく満足いく温度になったのか。再びお玉で掬い我に差し出す。


「ガーディ様、あーん」

「あーん」


 我の舌に直接載せる。


 まだ熱かったが、耐えられないほどではない。

 そもそも我は猫舌ではないし、猫ではなく竜だ。

 吐き出す炎の方がよっぽど熱い。


 ただフランがどうやってシチューを冷ますのか気になっただけなのだが、まさかあんな刺激的な方法とは思わなかった。


 またやってもらおう。


 フランは純真な眼で我に尋ねた。


「いかがですか?」

「良い尻であった」

「え?」

「違った。……う、うまいぞ。さすがはフランだ。実にまろやかなだ」

「良かった。たっぷりの牛乳と、少しだけですけどお酒を入れてみました。こくが出ておいしくなるんです」

「肉の味もいつもと違うな」

「折角のガーディ様のお肉ですから、いつもと同じように鍋に入れるのはもったいと思って、下味を付けて煮込んであります」

「腕を上げたな。店を出してもいいぐらいだ。皆にも振る舞うが良い。きっと喜んでくれるであろう」

「ありがとうございます」


 フランはちょこんとお辞儀する。

 我は褒美として、舐めた。


 ニーアの舐め心地もよいが、フランもなかなかよい。


「じ――――――――」


 ニーアがジト目で我を睨んでいた。


「では、ニーアにも食べさせてもらおう」

「ニーアはあんなエッチな食べ方はさせない」

「エッチ?」


 反応したのはフランだった。


 自分がしたことを振り返って、今さら顔を赤らめる。

 肩を縮こまらせると「すいません」と謝った。


 謝る必要などないのだがな。


 可愛かったし。


「それより、ニーアもガーディに食べてもらう」

「お主を……食べる…………」


 まさか性的に、か?


「ガーディの考えていること違う。ガーディは宝物ドラゴン。真の食事は宝物を食べること。そして、今はガーディの第二のお腹であるダンジョンにたくさんの宝物や武具がある」


 おお。そうか。


 フランが作る料理が美味しくてすっかり我の本来の食事を忘れていた。


 我は宝物ドラゴン。

 宝物を食べなければ、生きてはいけないのだ。


 そう思うと、不思議とお腹が空いてきた。

 3000年ぶりに、猛烈な食欲が湧いてくる。


 我は首を上げ、唸った。


「ニーアよ。我に馳走せよ」

「わかったー。今から準備する」


 ビッとニーアは我に敬礼する。


 他の村人やモンスターを連れ立って洞窟に入っていった。




 しばらくして、頂上に武具や山賊たちが奪った金品などが並べられた。


 我はこれを食べるのではない。


 ダンジョンに残した武具などを食べる。

 ここに並べられたのは、後々の召喚に使うためのものだ。


「これで大丈夫」

「うむ。早速いただくとしよう」


 我は吠声を上げた。


 すると、タフターン山が金色に光り始める。


 突如、始まった発光現象に村人や我が配下ものたちが驚き、声を上げた。

 それをじっと見つめていたのは、ニーアだけだ。


 我は作業を続ける。


 視界が真っ白になるほど、タフターン山は光り輝いた。


「いただきます!」


 我は叫ぶ。


 すると、我が開けた口の中に金色の光が吸い込まれていく。

 黄金のスープは喉を通り、多くの宝物が安置されている胃袋へと消えていった。


 スープを飲み干す頃には、光は消滅していた。

 元の穏やかなタフターン山に戻る。


「げふっ。良い食事だった」

「ガーディ、満足?」

「うむ。久しぶりの食事ゆえ、胃が驚いておるよ」


 我はペロリと唇を舐める。


 念のため洞窟を覗いてみた。

 あちこちに転がっていた槍や剣、盾、鎧の一部が、綺麗さっぱりなくなっている。

 血の匂いも消え、清浄な試練のダンジョンへと戻っていた。


 すると、我の頭に直接声が聞こえた。



 ガーデリアルはダンジョンレベルが上がった。

 クリーチャーを召喚できるようになった。

 ニーアは『竜の守護銃(ガンナー)』の祝福を受けた。

 フランは『竜の料理番(ダイナー)』の祝福を受けた。



「ん?」

「なんですか、これは?」


 ニーアとフランを見つめる。


 2人は光に包まれていた。

 しばし周囲に光を放った後、すんと消えてしまう。


「ニーア、声を聞いた。ニーアはガーディの守護者となって守れって」

「私も声を聞きました。竜の料理を作り出し、モンスターを育てよ、と」


 どうやら2人にも何か聞こえたらしい。


 なるほど。


 竜の守護銃(ガンナー)と竜の料理番(ダイナー)か。


 我も少し思い出してきたぞ。


「落ち着くがいい。2人は竜の祝福を受けし人間として、我に選ばれた」

「ガーディに?」

「フランがですか?」


「そうだ。具体的にその力を示すことは我には出来ぬが、おそらく竜の祝福を受けたことによって、そなたらの能力値は飛躍的に上がっておる。その小さき身でも、鍛え上げられた騎士や冒険者と対等に渡り合えるほどにな」


 おそらくニーアが銃を使いこなし、兵士を圧倒できるほどの立ち回りが出来たのも、すでに我の何らかの祝福を受けていたからであろう。


 さらにフランの料理によって、モンスターの能力値が上がったのは、竜の肉を食べたからではなく、フランが調理したからだ。これも祝福の影響と考えられる。


「主よ」


 我の前に傅いたのは、さまよえる騎士のデュークだった。


「差し出がましいのですが、我らには恩恵はないのでしょうか?」

「残念ながら、お主たちにメリットがあることはない。だが、クリーチャーを召喚出来るようになったようだ」


 クリーチャーとは主にダンジョンの拡張や整備を行う魔獣だ。

 ダンジョン内に部屋を作ったり、強化することも出来る。


「おお。なれば、私は鍛錬場が欲しい!」

「出来れば、私は炊事場が……」

「ニーアはね。うーんと……。ガーディと一緒に寝られるベッドがいい」


 我が眠るベッドってどんな大きさなのだ。

 そもそもここから動けないから、我は山頂にいるのだが。


「落ち着け、皆の者。とにかく、クリーチャーを召喚する。ニーアよ。いつも通りに魔法陣を書いて、武具を供えるがよい」


 ニーアはデュークに手伝ってもらい、残しておいた兵士の鎧や武器を我に供えた。


「ダンジョンを創造せしクリーチャーよ。我が命にしたがい、召喚に応じよ」


 魔法円が赤く光る。


 武具が消えると、代わりに地上に現出したのは、鉄の塊だった。


 鈍い灰色の装甲に、4脚の足。

 前方部分には、宝石のようなものが光っていた。


 獣でも、モンスターでもない。

 どちらかといえば、その姿は古代の兵器に通じるところがあった。


 数は4体。


 我の前に並ぶと、緑の宝石を我に向けた。


「ナンナリト、オメイジクダサイ。ゴシュジンサマ」


 抑揚のない声は、山に冷たく響き渡った。


日間ジャンル別14位でした。

もう1話頑張ってあげます!

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