3話 強いのにも意味がある? その1
リリが加わり、4人で暮らすことになった俺たちは宿屋に戻り、もう1部屋借りようと思ったのだけど、却下された。
「なぁ、何で、1部屋で泊まることにこだわるの?」
「さすがにさ、4人で一部屋はキツイよ。」
「無視かよ。…分かったよ。」
「…。」
「なぁ、何で無視するの?」
「…。」
「ねぇ?どうして?」
ここで、気づく。
よく、二次元で見る、ヤンデレみたいな事言っていることに。
そこで、ようやく口を開く少女がいた。
「精霊武器が気に入りません。」
精霊武器は、召喚されし者の魂で構築され、その魂の持ち主にしか扱うことができない武器。
本来なら、この世界に転移される前に、地球と異世界の狭間で精霊武器と初めて会うのだが、それは、神々の加護を与えてもらった召喚されし者だけだ。
つまり俺が最初この世界に転移された時は、精霊武器を持っていなかったと言う事になる。
神々の加護には、神々の加護の精霊武器があるように、魔王の加護には魔王の加護の精霊武器がある。
つまり、俺は今2本の精霊武器を持っている事になる。
その精霊武器とは、本当に短い間だけど、言葉を交わした。
魔界から、下界に戻る数分の間にな。
どのような会話をしたのかと言うと。
「ここは、どこだ?」
さっき、魔界から、下界に送られたはずだ。
「ここは、あなたの精神世界です。本当は、こんなとこではお会いしないのですけど。」
俺の疑問に応えたのは、一二歳くらいの少女だろうか。
その少女の他にもう一人少女がいた。
こちらも一二歳くらいだろう。
「お前たちは誰だ?本当にここが俺の精神世界なら、どうしてお前たちがいる?」
「私たちは、南条 アオバの精霊武器。どうして精神世界にいるのか?と言う疑問についての応えは、私たちがあなたの魂で構築されたからと応えます。」
その疑問には、先程応えてくれた少女とは、違う方の少女が応えてくれた。
「じゃあ、こういうことか?お前たちは俺の魂で構築されているから、お前たちと俺は繋がっているということなのか?」
「察しがよくて助かります。」
「そういや、名前とかないのか?」
「名前はありません。だからあなたがつけて下さい。」
「そうか。」
俺は、まず銀髪の子の名前をつける事にした。
「えーと、お前はエル。」
そして、次は水色の髪の子の名前をつける。
「そして、お前は、リアだ。」
「「ありがとう。この名前は大事にする。」」
さっきまで、全く表情が変わらなかった少女達の顔が、微かに柔らかくなった感じがした。
「あ、そういや、別に普通にしていいぞ。二人して、無理に口調を変えてるだろ?」
少女達の顔がさらに柔らかくなっまように感じた。
その瞬間、精神世界から意識が引き離された。
まぁ、そんな感じの会話をした。
それでエルの精霊武器特有のスキル、【精霊スキル】が、とても有能だった。
エルの【精霊スキル】の名は、【分析】だ。
【分析】とは、この世の中の全てのものの詳細を見る事が出来るというもの。
この【分析】を使う事によって、【魔王の加護】、それに【龍王の加護】の詳細を見ることが可能となった。
【魔王の加護】の詳細。
この世の全ての技能を習得可能。全ステータス+500。即時回復。
【龍王の加護】の詳細。
この世の全ての生物の心が読める。全ステータス+500。状態異常無効。
結構なチートだと俺は思う。
そして、リアの【精霊スキル】は、【創造】。
【創造】
精霊武器の持ち主が一度見たことがあるものなら、全て創ることが出来る。
武器も、防具も、日本にあった、自転車も創ることが出来る。
これもまた、有能だった。
よし、もうこれは一度【分析】で、俺、ララ、ルル、リリ、エル、リアの詳細を見よう。
南条 アオバ 14歳 男 レベル1
天職 魔王 龍王
筋力 1(+1000)
防御 1(+1000)
敏捷 1(+1000)
器用 1(+1000)
魔力 1(+1000)
魔耐 1(+1000)
精神力 1(+1000)
技能 共通認識、支配
加護 魔王の加護 龍王の加護
精霊武器 エル リア
称号 持たざる者
ララ 10歳 女 レベル48
筋力 3521
防御 3438
敏捷 3675
器用 3375
魔力 3947
魔耐 3859
精神力 3268
技能 常時魔力回復
加護 魔王の加護
称号 魔王の娘
ルル 10歳 女 レベル45
筋力 3141
防御 2973
敏捷 3378
器用 2998
魔力 3783
魔耐 3704
精神力 2930
技能 魔力解放
加護 魔王の加護
称号 魔王の娘
リリ 7歳 女 レベル17
筋力 1079
防御 981
敏捷 1042
器用 846
魔力 903
魔耐 994
精神力 1021
技能 全ステータス上昇
加護 龍王の加護
称号 龍王の娘
エル 精霊武器
熟練度 0
魔王の加護の精霊武器の中で一番弱い。
魔力 +30
魔耐 +30
精霊スキル 分析
リア 精霊武器
熟練度 0
龍王の加護の精霊武器の中で一番弱い。
筋力 +30
器用 +30
精霊スキル 創造
精霊武器は俺にお似合いだと思うんだけどさ、ララとルルとリリはおかしいよ。
魔王と龍王の娘だからってやりすぎだよ。
強すぎるよ。
話がだいぶそれてしまった。
「それで、精霊武器のどこが気に入らないんだ?」
俺の精霊武器は、他の精霊武器と比べるとだいぶ劣っている。
本来精霊武器は、二個以上は【精霊スキル】を持っているはずなのに、俺の精霊武器は一番弱いからなのか、一個しか持っていない。
このことが気に入らないのかな。
だが、俺の予想は外れた。
「アオバには、私たちがいます。なので、精霊武器なんていらないと思うのです。」
ララが言ったことは、俺に戦うなと言っているのと同じ事だ。
「さすがにお前らにずっと任せっきりというのな、心苦しいんだよ。そりゃ、お前らにも戦ってほしい。お前らには俺を頼ってほしいし、俺はお前らを頼るからさ。」
「そうですか。わかりました。」
「納得してくれてありがとう。」
「ですが、気に入らない事がもう一つあります。」
「なんだ?」
「どうして、リリを膝の上に乗せてるんですか?」
「どうしてって言われても、乗ってきたからって応えることしか出来ないんだけど。」
「それで、リリとはいつ仲良くなったんですか?」
「仲良くなった覚えは無いんだよ。そりゃ慕ってくれるのは、嬉しいんだけどな。」
「アオバは、ロリコンですか?そうですか。」
「おい、どこでそんな言葉を覚えたんだよ!それに俺はロリコンじゃない。」
俺はロリコンじゃないよな?
たまたま、少女が集まって来ただけだよな?
違うのか?俺はロリコンなのか?
わからん。わからんぞ。
「お兄さんは、ロリコンなんですか?」
俺の心にグサッと、リリの言葉が刺さった。
ロリコンと疑われるようになった元凶に言われるのは、さすがにひどいと思った。
「おーれーはー、ローリーコーンじゃなーい。」
俺は、今まで出した事がないくらいの声で言った。