24話 これからの事 その2
「なぁ、さゆり。俺たち、順序間違えてないか?」
今は、飴を舐めた日の翌朝だ。
そして、今は俺とイムルとさゆりとありさが一緒にいる。
「何がですか?」
「だって、熟練度で 技能を習得してから、飴を舐めるべきだったんじゃないのかと思ってな。」
そう俺は単純に思ったことを口にした。
「その件は大丈夫ですよ。これからどんな 技能を覚えたとしても、レベル最大になりますから。」
「そういう物なのか。それだったらいいんだ。後、熟練度で習得出来る 技能ってどういう物なんだ?」
「そうですね。主に敵のステータスを一時的に下げたり、それとは逆に私たちのステータスを一時的に底上げ出来る、などですね。」
「つまり、デバフとバフをかけることが出来るって事か。じゃあ、もう今習得出来る 技能を全部覚えておいてくれ。」
「そうですか、分かりました。では、覚えておきますね。」
「さゆりとありさに聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「「いいですよ。」」
「【精霊武器】についてなんだがな。【精霊武器】って、進化出来るって聞いた事あるか?」
「ないですね。そもそも【精霊武器】は、その持ち主の魂で構築されている。だからその持ち主に合わせた武器が出来上がる。なので、進化出来るのであれば、その持ち主に何かがあるとしか思えません。」とさゆりは言った。
「じゃあ、俺に何かがあったという事か。あったとすれば、魔王と龍王とその娘たちと仲が良かったり、天職が魔王と龍王だったという事しかないな。」
「「「……………。」」」
「どうしたんだ、お前ら?」
「いえ、ほんの少し驚いてるだけです。だって物凄い人が私たちの持ち主になってたんですから。」
「まぁ、運が良かっただけだな。そういや、なんかしらんけど、少しずつ記憶が戻ってきてるんだよな。」
俺が戻ってきているのは、俺にとって大事な人たちとの思い出だけだ。
それで俺の知識のなかにある物があったのだ。
深層記憶という物の知識が。
その深層記憶が失われていないとすれば、記憶が戻ってくるのも理解できるのだ。
「やはりそうでしたか。アオバさんの雰囲気が変わったので、何かあるとは思ってましたが、記憶が戻って来ていたのですね。」
「ご主人。記憶が戻っても私の事だけは、忘れないでください!お願いします!」
ベシッ。
イムルは、さゆりとありさから頭をしばかれる。
「アオバ兄さんは私の事だけを覚えていてくれるんです。さゆりとイムルには、そこに入り込む余地はありません。」
「いえ、アオバさんは私だけを覚えていてくれます。ね、そうですよね。アオバさん!」
「「どうなんですか、アオバ兄さん(ご主人)?」」
「イムルもさゆりもありさも忘れないよ。まぁ、最終的にはイムルの事が一番忘れないと思うけどな。」
「「どうして、私じゃないんですか?」」
「どうしてって後、1年もしたら、俺はこの世界から居なくなるからなんだけど。」
「それじゃあ、どうしてイムルの事が一番覚えるんですか?」とさゆりは真剣な眼差しで俺を見て言ってくる。
「だってイムル。俺に付いてくる気だから。」
「「じゃあ、私も付いて行きます!」」
「付いてくるなら、ずっと【擬人化】していなければならないぞ。魔物も魔法もないし、もし剣とか拳銃を持ってたら、すぐに警察に捕まってしまう。そんな世界だから。」
「「それでもいいです!」」
「だそうだ。イムルはどう思う?」
「別にいいですよ。一緒に付いて行きましょう。」
「「はい!」」
イムルとさゆりとありさが仲良くしてる中、俺は言ってやった。
「あのさ、お前らに言いにくいし、申し訳ないんだけどさ、生きて帰れる確率めっちゃ低いぞ。」
「「「え?」」」
おぉ、こいつらの顔が全部表情だ。
「だって、俺らが敵に回そうとしてるのは、魔王と龍王の同盟軍と、異世界から召喚された勇者が率いる軍の両方だぞ。」
「「「ん?」」」
こいつら、分かってないな。
分かってない事が表情で分かるわ。
「何を言ってるのですか?私には、アオバさんが言ってる事が分かりません。」と、さゆりは意味が分からないと言った表情で言ってきた。
「確かに見殺しに出来れば楽だろう。だが、そこまで残酷な事が出来る程、俺は落ちぶれてはいない。それに、魔王と龍王の同盟軍には大事な人がいるし、勇者が率いる軍には、早く元の世界に戻りたいって思っている人がいると思うんだ。だが、二つの勢力に敵対するのは、最悪なパターンの時だけだ。もし、1年以内に全ての迷宮を攻略し、ウァルネスを現界する事が出来たなら、このパターンから逃れる事が出来るはずだ。」
「良かったです。」
さゆりはそう言って、ほっとしている。
勿論、イムルもありさもだ。
だが、最後に一言言っておこう。
「だが、同盟軍とは一戦交えなければならないだろうがな。」と。
だって、俺の記憶と魂を持ってる奴がいるんだ。
そいつに俺は勝って、魂と記憶を解放したいんだ。
もし、出来るなら魂と記憶を返してもらう。
それが、この異世界で俺が最後にやる事だ。




