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1話 弱いのにも意味がある? その1

「ここはどこだ?」


俺ではなく、神崎が言う。


俺は、今起きている状況を把握しようと辺りを見渡す。


俺たちは、異世界に転移させられたみたいだ。


たが、普通の転移ではなく、集団転移だ。


どうせ転移するんなら1人で転移したかった。


「ようこそ、ワシは聖職者のラテアシア=ラウン。この世界に召喚してしまい申し訳ありません。こちらの世界に呼んだにも理由がある。あなたたちには、この世界を、勇者となって救ってもらいたいのです。」


「そんなの、知らねぇよ。早く元の世界に戻せ!」


そんなことを、神崎の友達の結城 真斗が言った。


「まぁまぁ、そんなに怒るなよ。それで、元の世界には戻れるのでしょうか?」


神崎は、結城を落ち着かせ、ラテアシアさんに聞いた。


「言い難いことなのですが、今は無理なのですが、この世界を救ってくださったら、戻す事は可能です。それに今は魔力が足りません」


「そうですか。それで、俺たちは何をすればいいのでしょうか。」


神崎すごっ、あっさり受け入れやがった。


「そうですね、まずは強くなってほしいのです。」


「強く?」今まで黙っていた黒崎さんが聞く。


「はい。この世界の平民のステータスの平均値は10なのですが、あなたたちは、特殊な人達なので、数倍から数十倍は強いのですが、それでも強くなってほしいのです。」


「そうですか。でも、その強さっていうのは、どうすれば、分かるのでしょうか?」


話がどんどん進んでいく。


「このステータスプレートでわかります。一人一人に用意しております。」


そう言って、ラテアシアさんは、ステータスプレートをクラス全員+先生に渡していく。


もちろん俺にも渡された。


ステータスプレートは、金属で出来ており、そのステータスプレートに、触れると青く光り、文字が浮かび上がった。


俺は、ワクワクしながらステータスプレートに目を落とす。


こういうのは、大体が俺TUEEEEEになってるもんだ。


南条 アオバ 14歳 男 レベル1

天職 なし

筋力 1

防御 1

敏捷 1

器用 1

魔力 1

魔耐 1

精神力 1

技能スキル 共通認識

加護 なし

称号 なし


何これ?


数倍から数十倍強いんじゃなくて、十分の一弱くなってるんですが。


体全体から、嫌な冷や汗が噴き出てくる。


俺は、おそるおそるクラスのみんなの方を見る。


みんな、俺みたいに冷や汗をかいてる雰囲気はなく、目を輝かせている。


逃げようか。


俺がいたって意味ないだろうし。


どっかに逃げよう。


そうしよう。


そう解釈した俺は、そっとこの祭壇から出ようとしたのだが、気付かれた。


「そこの君、どこに行こうとしてるんだ。」


「いや、早く外に行きたくて。そのダメですか?」


俺は、しれっと嘘をついた。


だって本当は逃げようとしてるだけだから。


「そうか。1週間後もう一度ここに集まってくれれば、問題ない。それと、少しのお金を。」

と言って、お金を渡された。


俺は一礼して、この祭壇から走って、走って、走って、逃げた。



逃げて来たのはいいけど、これからどうしよう。


俺は、今人通りが少ない路地裏みたいな場所にいる。


そこで、俺は看板に書いてある文字、檻に目が行った。


俺は、檻に歩み寄り、看板に書いてある文字を読む。


「奴隷屋?」


「おや、気になるのかい?ただいま、値引きをしております。特に、この少女は安いよ。訳ありですが。」


その奴隷商人は、銀髪の少女を指差す。


可愛い。


俺は即判断した。


奴隷商人なんかに、関わらないのが、良いのは分かっている。


だが、この奴隷少女が気になって仕方がないのだ。


「この少女はいくらだ?」


「それでいいのかい。その子は、100 Gギルだ。」


100 Gギルは、日本円でいうと、1万円だ。


人が1万円で売ってるのは、おかしいと思う。


先ほど貰ったお金は、ちょうど100 Gギルだ。


「よし、買った。」


俺はお金を渡し、奴隷少女を買った。


「もしその子があなたに害を加えたら、手の甲にある刻印が罰を与えますので。ご安心を。」


俺は奴隷少女と共に奴隷商人から離れ、この国から出た。



「なぁ、お前の名は何なんだ?」


「…ララ。こっちがルル。」


俺は、目を疑った。


さっきまで1人しかいなかったはずの少女が2人いたからだ。


ドッペルゲンガーかと思ったが、よく見ると、目つきと髪型が違った。


ララの方が目つきが鋭く、髪が長い。ルルの方は目つきがおっとりとしており、髪が短い。


「それで、あなたは何で言葉が通じるの?」


「あなたというのはやめてくれ。俺は南条 アオバ。何で言葉が通じるの?って、質問の答えは、多分技能スキルの共通認識が関係してると思うよ。」


この技能スキルのおかげで、さっきの文字が読めたんだろう。


「そう。それでアオバ。なんで私たちを買ったの。私たちは魔族。この世界を滅ぼすことが目的だった。」


ララは、10歳前後だろうが、言葉遣いが大人びている。


「だった?」


だったという言葉が、気になって聞き返す。


「私たちは、魔王の娘。だからパパの命令を受けて、この世界を滅ぼそうとしたのです。でも、私たちは勇者に敗れた。それでも生きようとして勇者から必死に逃げたのですが、奴隷商人に捕まり奴隷にされた。」とララの妹?のルルが言った。


ん?話が見えてこない。


俺はどうして、この世界を滅ぼすことが目的なのに、それが過去形になったのかを聞いたんだけど。


俺が首を傾げていると、ララが「私たちは、死んだことになっていて、今は私たちじゃなくて、違う魔族が世界を滅ぼすことになった。」


なるほど。


「それで、お前らはどうしたいんだ?」


「わからない。何をしたらいいのか。」とララが言ったのを聞いてからルルの方を見たのだが、ルルはわからないと言わんばかりに首を振った。


「ふーん。じゃあ、俺と一緒に冒険しようぜ。俺は、元々聖職者に、異世界を救うためにこの世界に召喚されたんだけど、俺弱すぎるからさ、異世界なんて救うのなんかやめたんだ。だから一緒に冒険しようぜ!」


「ふふっ。面白い人ですね。分かりました。」


「おぉ、いいのか?よっしゃー。」


と喜んでいたのだが、俺の背後にとてつもないオーラを肌で感じた。


俺は、後ろを振り向くと、そこにはドラゴンが立っていた。


が、そのドラゴンは一瞬で灰となって消え、牙や爪、そして大きな石のような物を落としていった。


何が起きたのか、分からなかったが、すぐに分かった。


ララとルルの体に、翼と角、尻尾が生えていたからだ。


「大丈夫ですか。アオバ。」とララが言った。


「大丈夫。お前ら強いのな。」


「魔王の娘ですから。」とルルは言った。


もしかしなくても俺、凄いやつと仲良くなっちゃったんじゃねぇか。


と考えていたら、ルルとララがドラゴンが落としていった、牙や爪を持って来た。


「アオバ。これを売りに行きましょう。」


「売れるの?」


「はい。」


俺は、ララの言う通りにした。



「いやぁ、こんなに高く売れるとは思わなかったな。」


「そうですか?これくらいが妥当かと。」


ドラゴンの爪と牙を売ったら、1万 Gギル、日本円にしたら、100万円もした。


それで、今はというと装備を選んでいる。


例え、どんなにお金を持っていたとしても、無駄遣いはしない。


だから、動きやすい防具とコートそして、軽くて斬れ味のいい剣を買った。


全体的に黒い。


これらはララが選んだ物だから、なぜ黒ばっかりなのかは分からない。


もちろん、ララとルルの装備も黒ばっかり。


でも、カッコイイからいいや。


南条 アオバは、若干中二病なのだ。


それからは、俺とララとルルの普段着を買い、宿泊する宿を見つけて、今は宿の部屋にいる。


それで、2つ部屋をとろうとしたのだが、ララが1つでいいと言ったので、一つしかとらなかった。


ご飯はさっき外で食べて来ていたので、寝ることにした。


今日1日で、いろいろなことがあった。


この世界では楽しくやって行けそうな気がする。


ベッドに寝転びながらそう思い、もう一つのベッドで寝ているララとルルの方を見る。


「これから、よろしくな。」と、2人の頭を撫でた。


俺が弱いことを証明するステータスプレートに、目を落とした。


南条 アオバ 14歳 男 レベル1

天職 魔王

筋力 1

防御 1

敏捷 1

器用 1

魔力 1

魔耐 1

精神力 1

技能スキル 共通認識、支配

加護 なし

称号 持たざる者


「ん?天職が追加されてる。魔王。」


いやいやいやいや、何かの間違いだろう。


俺は目を擦り、もう一度見る。


「魔王。何でだよ!おかしいだろ!」


つい叫んでしまった。


だって、この異世界を救うために召喚されたのに、滅ぼす側になってどうすんの。


もしかしてというか絶対、ルルとララのせいだろ。


「魔王か。」


カッコイイな。


こうして、あっさりこの事実を受け入れてしまった、アオバであった。









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