18話 久しぶりの地上 その4
「あの、ここで料理を作ってもいいですか?」
「ああ、ダメだ。」
「ご主人〜。」
「ダメだったのか。なぁ、おっさん。出店って許可無くても、出してもいいと思うか?」
「それぐらいなら、いいと思うぞ。」
「そうか。なら、どこで、出すかだな。」
「いいところがあるぜ、あんちゃん。噴水広場で出店を出してみたらどうだ?」
「そこは、人が集まるのか?」
「おうよ。沢山集まるぜ。」
「分かった。イムル、噴水広場に行くぞ。おっさん、その噴水広場がどこにあるか教えてくれ。」
噴水広場までの道を教えてもらい、噴水広場まで歩いている途中、イムルがこんな事を言い出した。
「ご主人って、かっこいいよね。」と。
「どこがかっこいいんだ。」
「その白い髪とか、後は………。」
「かっこいいとか思ってないだろ。俺のかっこいいところは、髪だけか。」
「そんな事ないよ。髪以外にもかっこいいところあるよ。えーと、その〜、はっ、その喋り方とか。」
「イムル、お前さっき考え付いたこと言っただけだろ。」
「じゃあ、ご主人は私の可愛いところ言えるの?」
「言えるが。」
「じゃあ、言ってみて。」
「分かった。お前の可愛いところは、まず髪だろ。それに、一つ一つの動作が可愛い。そして、喋り方も可愛い。というか、存在自体が可愛い。これで、いいか?」
「そんなに可愛いって言わないで。恥ずかしいから。」
やっぱり可愛い。
頰を赤く染めて、こっちをチラチラ見てくるのとか、超可愛い。
「恥ずかしがるんなら、そもそも言わせんな。」
こっちも恥ずかしいから。
そこからは、無言で噴水広場に向かった。
「ここか?」
俺たちは、今噴水を中心とした広場にいる。
俺たち以外にも、出店を開いている人がいた。
その人は、クレープみたいなスイーツの出店を開いていた。
元々は、ギルドですると思っていたから、中華にしようと思っていたが、こういうところでは、スイーツの方が向いているな。
だが、スイーツって言ったって何にする?
無難にソフトクリーム?
対抗して、こちらもクレープ?
「よし、クレープにしよう。」
勿論、クレープだけじゃない。
ホットドッグも作る。
まずは、出店を出すには、看板、テントみたいな物、そして机が必要だな。
必要なのだが、どうすればいいんだ?
俺は、考えを放棄して、「よし、生成魔法で作るか。」と言って、必要な物を生成した。
後は、クレープを焼くための鉄板に、ホットドッグを焼くためのトースターが必要だな。
今の俺なら、錬成で簡単に作れる。
指輪を使って異次元空間から、必要な鉱石を取り出し、錬成する。
しばらくして、「完成だな。魔力ホットプレートに、魔力トースター。」
そして、クレープ、ホットドッグに必要な材料を生成し、作る。
「ご主人、これなに?」
イムルは、クレープとホットドッグを指差して言う。
「クレープとホットドッグだ。何だ?食べたいのか?」
「うん。」
「じゃあ、食ってみろよ。」と言って、まずはホットドッグを出した。
ホットドッグは、ロールパンにソーセージとレタスを挟んで、ケチャップとマスタードをかけただけのシンプルな奴だ。
ナンドッグというのもあるらしいが、俺が食ったことないから、俺より先に食わせてたまるか!ということで、作らなかった。
「どうだ?美味いか?」
「うん、美味しい。じゃあ、次はこっち。」
イムルはクレープを口に運び、食べた。
俺は、イムルの食べかけのホットドッグを食べる。
クレープは、生クリーム、フルーツ、ジャム、チョコレート、ソース、アイスクリームをふんだんに使った俺特製のクレープだ。
こういうクレープの事は、クレープ・シュクレというらしい。
どうでもいいが。
「クレープも美味いか?」
「うん、甘くて美味しい。」
そう言って、美味しそうに食べている。
そこからは、客が客を呼び、沢山の人が、クレープとホットドッグを買っていった。
かなりのお金が貯まったのだが、イムルは疲れたのか、眠っていた。
「ったく。仕方ねぇなぁ。」そう言って、出店で使った物を、異次元空間に送り、イムルをおんぶして、宿屋に帰る。




