表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/28

16話 久しぶりの地上 その2

16話 久しぶりの地上 その2


俺たちは、今ある所を見ている。


奴隷が暴力を受けている所を。


奴隷と言っても、人族ではない。


亜人の一つである、ミイラ族だ。


ミイラ族は、包帯を体に巻きつけているだけで、気味悪がられる。


「おい、そこらでやめとけよ。」と俺は、言った。


亜人には、世話になったからな。


「ああん。何だ、お前。こんな気味の悪いミイラ族を庇うのかよ。頭イかれてんじゃねぇのか?なぁ、お前ら。」


お前らと呼ばれた奴は、全部で3人だ。


そいつらは、笑う。


ケラケラと。


「こいつらミイラ族は、その包帯を外せば美男美女なんだよ。勿論こいつは、女だ。俺たちだって、いろいろと溜まってんだよ。」


「知らねぇよ、そんな事。俺には、関係ないし。だが、亜人には、いろいろとお世話になってな。だから、見逃せないんだ。」


「なら、死ね。」


そう言って、4人のチンピラ共は、ナイフを持って、斬りかかって来た。


「お前が死ね。」


俺は、2丁の拳銃をホルスターから抜き、撃った。


撃った弾は、全て頭に命中し、脳をかき混ぜながら貫通し、後ろの壁にぶつかり、穴を開けた。


俺は、拳銃をホルスターに戻し、ミイラ族の女性に近付き、「大丈夫か?」と手を差し出したが、「こっちに来ないで。」と言って、手をはたかれた。


無理もない。


この人は、今まで人間に酷い目を合わされてきたのだから。


「何ですか、その態度は。ご主人がせっかく手を差し出してくれたのに、それをあなたは。」と、後ろにいたイムルが言った。


「イムル。気にするな。」


「でも、ご主人。」


俺は、イムルの頭に手を置いた。


「今度は、気をつけろよ。」と言って、俺たちはその場を去った。



「ご主人、ちょっと優しくなった?」


「そんな事ないと思うが。」


「絶対優しくなってるよ。だって私と初めて会った時、私の事助けようなんてしなかったでしょ。」


「ああ、そんな事もあったな。」


「それからも、私を囮にしたり、そのまま置いて行こうとした事もあった。」


「悪かったな。」


「怖かったんだから。」


「怒ってる?」


「怒ってないよ。」


「そうか。でも今は、お前の事を大切に思ってるよ。」


イムルと会わなかったら、俺は人間味を完全に失い、多分地上には出られなかっただろうしな。


「本当?」


「あぁ。」


「ありがとう。」


俺たちは話を終え、宿屋を探すために、また歩き始める。



「よし、ここでいいか。」


俺たちは、ある宿屋の前に止まった。


その宿屋を選んだ基準は、お風呂があるか無いかだ。


日本人には、お風呂が必須なのだ。


「入るぞ、イムル。」


「うん、ご主人。」


俺たちは宿屋の中に入り、受付に行った。


「どうかしましたか?」と、受付の女性が言って来た。


「泊まりたいんだが。」


「何名様でしょうか?」


「二名だ。」


「二名様ですね。部屋はどうしますか?」


「一人部屋、二つで。」と俺が言ったら、「ダメ、二人部屋。」とイムルは言ってきた。


「何で、二人部屋なんだ。」


「二人部屋じゃなかったら、一緒に寝れない。」


「知らんわ。」


「二人部屋じゃなかったら、ダメ。同じベッドで寝る。」


「何で俺と一緒に寝ようとするんだ。」


「ヤりたいから。」


「あの、お客様。この宿では、そのような行為は。」


「勘違いするな。それにイムルも、紛らわしい言い方すんな。」


何だよ、ヤりたいからって。


何をすんだよ。


ヤりたいからとか言うから、みんな俺たちの方へ注目したじゃねぇか。


「二人部屋でお願いします。」


俺は、言われた番号の部屋に、みんなから逃げるように向かった。



「おい、イムル。」


「何?」


「最近、調子に乗ってるよな。」


「そんな事ないよ。」


「そんな事あるわ。まだ、地上に戻ってない時、最後の部屋で俺が寝てた時、裸でベッドの中に潜り込んできたし、お風呂入ってる時、勝手に入ってきたよな。」


「だって、ご主人とずっと一緒に居たかったんだもん。」


「泣いても無駄だ。もし、今日ベッドの中に潜り込んだり、お風呂に勝手に入ってきたら、俺が元の世界に戻る時、連れて行ってやらんからな。」


「はい。」


「そういや、昼飯食ってないな。外に行くのは、イムルのせいで、行きづらいしなぁ。どうしようか。」


俺は、イムルを強調して言った。


「ごめんなさい。」


「カレーでも作るか。」


「かれーって何?」


「俺がいた世界の料理だ。」


そう言って、俺は必要な物を、生成魔法で生成していく。


そして、魔力炊飯器、鍋、魔力コンロを、指輪を使って異次元空間から取り出した。


「よし、作るか。」



「作れたな。さて、食べるか。」


カレーは、シンプルにジャガイモ、人参、ルー、そして肉だ。


肉は、牛肉、鶏肉、豚肉を使った。


「美味しい。ご主人、美味しいよ。こんなに美味しい物、食べた事ないよ。」


「そうか、それはよかった。また、美味い料理作ってやるよ。」


「本当に?」


「あぁ、作ってやる。」


「わーい。」


イムルが、喜んでくれてよかったわ。


次は、何を作ってやろうか。


俺も、久しぶりにまともな料理を食べたな。


最近は、魔物の肉ばっか喰ってたからな。


俺たちは、それからは無言で食べた。というか、イムルがカレーに夢中になってるから、話す相手がいなかっただけだけどな。


「ごちそうさま。」


俺は、手を合わせて言った。


「ごちそうさま?」


何で、疑問形なんだよ。


「私、ご主人に会えてよかった。」


「何だよ、改まって。」


イムルは立ち上がり、俺の方へ歩いてきた。


そして、耳元で囁いた。


「アオバ君、大好き。」と。


俺はビクッとして、イムルを見た。


イムルは、笑顔だった。


純粋な笑顔。


あいつが見せた悪い笑みとは、全然違う。


もう名前すら覚えていない、あいつの事はもうどうでもいいか。


今更、復讐したいなんて考えてない。


俺は、やりたい様にやる。


ただ、それだけだ。


そして、思い出す。


イムルみたいなやつが、昔身近にいたという事を。


まだ、名前も顔も思い出せないが、その人は俺にとって大事な人だった事はすぐに思い出した。


俺は、思う。


もしかしたら、俺にも少しは記憶が残ってるのかもな。と。


「ご主人が笑った。」


そうイムルに言われ、気付いた。


俺は、笑っている事に。


久しぶりに笑った気がする。


イムルは、俺にとってとんでもないほどの影響力があるんだと思う。


そして俺は、イムルの頭に手を置き、こう言った。


「ありがとう。」と。























評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ