10話 旅立ち その2
スライムであるイムルと出会ってからも魔物を殺しては、喰っていた。
時間の感覚も忘れて来ている。
魔物ばっかり喰ってるのにどうして腹を下さないんだと思ったら、技能である【胃酸強化】が関係していた。
イムルにどこから落ちて来たのか聞いてみたが、言葉は通じてるようだが、発声器官がないため意思疎通出来ない。
テレパシーとか使えたらいいのに。
不便だ。
俺は強くなっているのだが、ただそれだけ。
強くなる以外、何もない。
もう、この辺りの魔物には負けないだろう。
負ける理由がない。
イムルもレベル3から上がっている。
イムルは魔物を倒していないが、俺の使い魔になったおかげか俺が倒した魔物の経験値が入っている。
羨ましい限りだ。
俺たちのステータスの詳細はこうだ。
南条 アオバ 15歳 男 レベル79
天職 錬成師
筋力 12500
防御 12000
敏捷 13000
器用 12250
魔力 11750
魔耐 12525
精神力 13500
技能 共通認識 錬成 喰奪 胃酸強化 暗視(+透視) 感知 (+魔力感知)(+把握)空歩(+縮地)(+神速) 畜力(+魔力畜力)(+二重畜力)気配(+透明化)(+幻影) 毒耐性 麻痺耐性 石化耐性 硬質化(+付与) 再生 無効化
加護 亜人の加護 (亜人達の特性を理解し、自分のものと出来る。全魔法適性 全魔法耐性 魔力操作(+魔力放出)(+魔力圧縮)(+魔力強化) 全身強化 錬成強化。)神の加護 (【神々の加護】と違って、体に馴染みやすい。全ステータス、+1000。全ての魔法、魔法陣などの、魔力を使ったものを、強制終了する。)
亜人武器 さゆり ありさ
称号 自由人 喰らう者 奪う者
イムル 妖魔族 幼体 レベル47
主人 アオバ
攻撃 109
防御 104
敏捷 78
器用 86
魔力 127
魔耐 115
精神力 146
技能 変形 物理耐性
加護 なし
称号 恋する乙女
さゆり 13歳 女の子
熟練度 7640
主人アオバとの相性 100/100
筋力 +700
防御 +700
敏捷 +700
器用 +700
魔力 +700
魔耐 +700
精神力 +700
亜人スキル 半減 擬人化
ありさ 11歳 女の子
熟練度 7320
主人アオバとの相性 100/100
筋力 +700
防御 +700
敏捷 +700
器用 +700
魔力 +700
魔耐 +700
精神力 +700
亜人スキル 効率 擬人化
イムルは最弱の魔物だからか、ステータスの伸びが悪い。
それに幼体っていうのも、気になる。
もしかしたら、進化とかするのかもしれない。
それでこれから何をしようかと思っていたのだが、すぐに異様な魔力を感知した。
人間の魔力と魔物の魔力を融合したような気味の悪い魔力だ。
俺は魔物の魔力を取り込んでいるが、自分に合った魔力に変換している。
だが、この魔力は変換出来ていない。
魔物の魔力をそのまま取り込むのは、体によくないしそれに廃人と化す。
近づかないのが、吉だ。
しかし、気になるのだ。
こんな所に人間がいる事に。
「近づいてみるか。」
俺は【気配】の派生技能である、【透明化】を使う。
【透明化】 名前の通り、透明になれる。【感知】を習得している人でも気づくことは出来ない。
「あいつは、誰だ?」
白髪に容姿が整っており、スタイル抜群の女性が立っているが、服と白髪は血で赤黒く汚れていた。
だが、その周りには数多の魔物の死骸が転がっていて、何よりその女性は魔物に火も通さずに、喰っていた。
俺でも、火を一度は通してから喰べるのに。
「ア……君、ど…………の?」
何だ?何か言ってるのか?
「ア…バ君、ど…にい…の?」
上手く聞き取れない。
「もう少し、近づくか。」
さっきまでいた、岩陰から出る。
「アオバ君、どこにいるの?」
あいつ俺を、探していたのか?
アオバって名前の人、この世界には俺以外にはいないだろう。
俺は【透明化】を解き、近づく。
「おい、そこのお前。ここで何をしている。」
「人を探してるの。私の好きな人を。」
「へぇ。そいつの名前は?」
「南条 アオバって言うの。」
やっぱり俺か。
でも、こんな奴と関わりたくないし、嘘でもつくか。
「南条 アオバって言う奴は、死んでるぞ。」
俺は南条 アオバのステータスプレートを見せた。
このステータスプレートは、死んでいた俺の近くに落ちていたようだ。
「ほんとうだ。ふふっ。あはははは。死んだんだ、アオバ君。」
こいつイかれてるな。
こいつから、離れよう。
「そんじゃあな。」
「待って、ください。私を一人にしないで。」
「黙れ。そんな言葉、笑顔で言うもんじゃねぇよ。」
この女性は笑っている。
気味が悪い。
「じゃあな。お前みたいな奴と一緒になんか居たくねぇよ。」
「待って、ください。待って。………待てって言ってるでしょ!」
「ウザいな。俺に楯突くと殺すぞ。」
「殺せると思ってるの?私はこの世界に呼ばれた勇者。ただの一般人の君なんかに殺されるわけないでしょ。」
「マジでウザいな。どうなっても知らねぇぞ。」
俺は二刀の剣を構え、相対する。
イムルは安全なとこに避難させ、念のために【透明化】をかける。
そして風の性質を持つ魔力を二刀の剣に纏わせ、刃を鋭くし、斬れ味をよくする。
そして【硬質化】で、二刀の剣を黒刀のように硬くする。
【硬質化】する事によって、刃こぼれが無くなる。
まぁ、元々刃こぼれなんてしないくらいの金属を使ってるのだが。
念のためだ。
俺は反応出来ないくらいの速度で相手にの懐に入り斬った。
が、すぐに再生した。
異常な程の再生能力だ。
再生するのが、速すぎる。
俺の持っている【再生】を遥かに凌駕している。
もう、こいつは人間じゃない。
人の事は言えないが。
人間味が少し残っている俺は、もう廃人寸前の女性が哀れで仕方がない。
俺の人間味が無くなる直前で、イムルに出会った。
もしイムルに出会わなかったら、俺もこんな風になっていたのかもしれないんだな。
もう素直にイムルに感謝だ。
スライムに感謝するのは、どうなんだろうと思うが。
「ふふっ。やっぱり弱い。そんな浅い傷じゃ、すぐに再生しちゃうよ。」
「黙れ。」
俺は眼帯を外し、義眼を使い、俺は女性の肩目掛けて、一直線に走り喰った。
魔物の味に、ほんのりと甘い味がした。
魔物の味は、苦くて臭い。
つまり、あのほんのりと甘い味の正体は人肉だ。
なぜ、喰ったのかと言うと【再生】を強化するためだ。
一度習得した技能でも、たとえそれと同じ技能だったとしても、その技能を凌駕するものを喰うと、強化されるのだ。
そして、喰ったと同時に女性の技能を無効化した。
技能、【無効化】でな。
【無効化】 触れた相手の技能を無効化出来る。無効化した技能は、二度と使えなくなる。ただし、例外はある。
「死ね。」
俺は女性の右肩から左脇腹にかけて斬った。
その女性からは、案の定血が噴き出した。
「じゃあな。白崎。」
俺はかつて同じクラスで、同じ時間にこの世界に召喚された、白崎 鈴香に言った。
「待って。一緒に連れて行って下さい。アオバ君。」
白崎は、生きていた。
さすが、魔物を喰った事だけの事はあるな。
すごい生命力だ。
「チッ。気づいてたのかよ。それで、何でお前と一緒に行動なんてしなくちゃならんのだ。俺は、お前が嫌いなんだよ。世話ばっかり焼きやがって。お前のせいで、俺はいじめられ、ここに落とされた。たとえ、記憶を失ったとしても、俺の知識がそれを覚えてる。」
「気付きたくなんかなかったよ。死にたかったのに。でも、あなたがアオバ君だって事に気付いてしまった。それでまた、生きたいと思ってしまった。アオバ君と同じ道を歩みたいと思ってしまった。ごめんなさい。私知らなかった、私のせいでこんな事になってしまった事を。ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
イかれてたのに、こんな簡単に正気に戻れるものなのか?
俺には、関係無いからどうでもいいが。
「本当に許してほしいと思っているのなら、俺の目の前から消えろ。」
「嫌です。私はアオバ君と、ずっと近くにいたいです。アオバ君が何て言おうと私は、あなたが大好きです。」
「黙れ。お前がどんなに俺を好いてようと、俺には関係無い。俺には俺の道があるように、お前にはお前の道がある。それに、一度は俺に敵意を向けた。だから、ついて来んな。イムル、行くぞ。」
そう言った瞬間、イムルは姿を現し、俺の後ろにぽよっぽよとついて来る。
「やっぱり優しいんだね。アオバ君は。」
涙を流し、ポツリと言葉をこぼした白崎は、俺と別の方向に進み始めた。




