9話 旅立ち その1
俺は装備を纏い、武器を装備し、レッグホルスターにポーションを入れ、リウルから出ようとしたら、エルフのルーラさんが見送りに来てくれた。
「また、リウルに来てくださいね。あなたのステータスカードは一度来た場所に転移出来るようになっているから。使い方は、わかるよね。それじゃあ、行ってらっしゃい。死なないでね。」
「はい。また、来ます。」
たった一日の繋がりなのに、見送りに来てくれた。
そのことに俺は、驚いた。
人間なら、絶対来ないだろう。
それに、亜人族は、人間を憎んでいるはずなのにな。
本当に、ここにまた来ようと思った。
今よりも強くなって。
リウルから出た俺は、悩んでいる。
地上に出るには、どうしたらいいんだ?と。
「うーん。悩んでも仕方ないか。」
俺は、進んで行く。
「それにしても、暗いなぁ。」
今、俺がいる所は一切光がない、
「【暗視】が無ければ、行動出来ないな。」
【暗視】 暗い所もある程度は見る事が出来る。
ある程度というのは、冬の朝の薄暗さぐらい。
【暗視】は、フクロウ型の魔物を喰った時に覚えた。
魔物を喰った時は体全体が痛み、細胞が急速に作り変えられているような感じだった。
どれくらいの痛みなのかと言うと、骨が何本か同時に折れたくらいの痛みだった。
気絶しかけたのだが、痛みがそれを許さなかった。
ありさの【亜人スキル】である【半減】が無かったら、どれくらいの痛みだったんだろうと思うと、恐怖を感じる。
「ん?何だ。【感知】に引っかかったな。」
【感知】 自分を中心に半径十メートル内に敵が入ると、敵を感知出来る。
敵の種類までは分からないが。
【感知】は、コウモリ型の魔物を喰った時に覚えた。
もちろん、喰った時は痛かった。
俺は、【感知】に引っかかった魔物の方へ向かった。
「あれは、うさぎか?」
うさぎが居たのだが、地球にいるうさぎとは大きさが全然違う。
あのうさぎ型の魔物は1メートルはあるぞ。
「倒して喰うか。」
もう、魔物を喰うことに躊躇しなくなっていた。
魔物を喰う事によって、人間味を失う速度が上がっっているのかもしれない。
俺は、うさぎ型の魔物に突っ込んで行く。
うさぎだから、耳はいいから、俺の存在にすぐ気付き、簡単に攻撃を躱された。
それに、動きが速く空を飛びやがる。
羽はない。
脚力だけで、空を飛んでいる。
多分物凄い勢いで宙を蹴って、その衝撃で飛んでいるのだろう。
剣で倒すのは苦労しそうだな。
拳銃で倒すか。
俺は拳銃を二丁、ホルスターから抜き構える。
そして、左目に着けている眼帯を外す。
義眼は普段から体感時間を長くしたり、相手の動きを予測しているから、すぐに脳が疲れる。
だから眼帯でそれを抑えているのだ。
義眼を露わにした瞬間、体感時間が1000秒に伸びた。
どれだけ動きが速くても、簡単に捉えてしまう。
俺はうさぎ型の魔物の動きを予測して、弾を撃つ。
電気の性質を持つ魔力を吸収した拳銃から、同じく電気の性質を持つ魔力を吸収した弾が秒速4.2kmの速さで撃ち出され、うさぎ型の魔物の頭に命中し、脳をぐしゃぐしゃにしながら貫通し、後ろにある岩壁にぶつかった。
誰も視認出来ない。
俺以外は。
本来の魔物は数秒すれば、灰になって魔石やドロップアイテムを落とすのだが、ここにいる魔物は消えない。
核である魔石を、体内から取り出さなければ。
俺は、もちろんうさぎ型の魔物を喰った。
もうあまり痛みを感じなくった。
が、もちろん細胞は急速に頑丈に作り変えられている。
魔物を喰うことによって、どんどん人間味を失っていく。
それを、アオバは自覚していない。
それからも、魔物を倒しては喰っていった。
現在の南条 アオバのステータスはこうだ。
南条 アオバ 15歳 レベル39
転職 錬成師
筋力 6000
防御 5500
敏捷 6500
器用 5750
魔力 5250
魔耐 6025
精神力 7000
技能 共通認識 錬成 喰奪 分析 胃酸強化 暗視 感知(+魔力感知)(+把握) 空歩(+縮地)畜力 気配 毒耐性
加護 亜人の加護( 亜人達の特性を理解し、自分のものと出来る。全魔法適性、全魔法耐性、魔力操作、全身強化、錬成強化。)神の加護(【神々の加護】と違って、体に馴染みやすい。全ステータス、プラス千。全ての魔法、魔法陣などの、魔力を使ったものを、強制終了する。)
亜人武器 さゆり ありさ
称号 自由人 喰らう者
派生 技能まで、出現した。
派生 技能は、ある技能から、枝分かれした新しい技能のこと。
【魔力感知】で微力だが確かに感じる魔力が俺の近くにあることが分かった。
【魔力感知】 自分を中心に半径10m圏内の魔力反応を感知出来る。
この奈落の底にいる魔物の魔力の量ではない。
少なすぎる。
「行ってみるか。もし、俺に敵対するなら殺す。そして喰ってやる。」
俺は向かう。
そこには、スライムがいた。
上から落ちて来たのか。
そのスライムは岩に押しつぶされている。
「助けてやる義理はない。」
いや、待て。
こいつがどこから落ちて来たのかが、分かれば地上に戻れるかもしれない。
助けてやるか。
俺は、岩を蹴って砕く。
スライムの潰れていた体が元に戻り、俺の前に来た。
スライムは発声器官がない。
何だ?と思ったのだが、聞き覚えのある音声聞こえ、そして文字が浮かび上がった。
(スライムが使い魔になりたがっています。使い魔にしますか?YES/NO?)
そんなん簡単だ。
NOだ。
何も反応しないがその文字が押せることが分かった俺はNOを押そうとしたのだが、手元が狂ってYESを押してしまった。
(スライムが使い魔になりました。名前をつけてください。)
「断る。」
(…。)
反応なし。
名前をつけなければならないのかよ。
はぁ、名前なぁ。
「イムル。」
(スライムの名前はイムルに決定しました。)
それからは、音声は聞こえなくなった。
イムルを【分析】するか。
イムル 妖魔族 幼体 レベル3
主人 アオバ
攻撃 13
防御 9
敏捷 7
器用 8
魔力 12
魔耐 11
精神力 14
技能 変形 物理耐性
加護 なし
称号 恋する乙女
「弱っ!それに恋する乙女って何だよ。お前女なのかよ。俺は人じゃないお前の恋には応えられないぞ。」
スライムは、落ち込んでいるように見えるのだが、俺は、「行くぞ。」と言って歩き出す。
スライムは、ぽよっぽよっとついてくる。
俺は、少しかわいいと思ってしまった。




