表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

一幕七場

 「な、何ーー」


   ーーなんだ? この生命体は?


 全高1.3m程度、やや屈曲して直立しており、頭頂部は薄すらと白い毛髪に覆われている。顔には体毛が無く、皺がれた皮膚はやや霞んではいるが、人類の肌色だ。


 「居るのなら、さっさと出て来なさい」


 おぉ、何か吠えた!

 その唸る吠え声は、皺枯れくぐもって低い。

 白っぽい布を軽やかな洋装に纏って、手には巾着、腰から下は和服紛いの鼠色したスカートが……。


 「イーーー可(なぁーに)(ほぉ)けて居るか?」


 ……ふぁ? 何? 誰?


「ぼさぁっとせんと、(すん)ぐに出掛ける支度をしなさい」


 ゆっくり、含む様に喋る。

 コイツはまさか……。


「こら? たか()?」


 出かけるって、何?


「ちょっ、ばぁちゃん!?」

「まぁ……えぇ()ら、来なっさぃ」


 低い重心からの思いがけぬ牽引力で、グイと引っ張られて、そのままタクシーへ放り込まれた。


「汽車の駅まで戻ってな」


 それからは正に、疾風怒濤! 目まぐるしく景色が吹き抜けてゆく!?

 どうも俺は、突発的事態とやらには対応出来ないタチらしい。まぁそれも、後になって気付いた反省点だ。




 タクシーから新幹線! 更に電車、バスを乗り継ぎ最後もタクシーで四時間半。棚田を見下ろす一軒家(?)へ到着した。

 あぁ……充電器とかも持って来てねぇや。つか、ここはドコよ?


「世話ねぇがら、えんと(すわって)なっさい」


 靴を脱いで、母屋と思しき家屋に「……お邪魔しまーす」土間、始めて体感するよ。

 もたもたしてる間に、小さなばあちゃんはお茶を出してくれた。しかし移動の間にも、やれ駅弁だの冷凍ミカンだのラスクだのと食わされたからなぁ。とか思いつつも、ネギ風味の煎餅を齧る。意外にいける。


「たかす。風呂さ入っといで。離れに布団しいとぐから」

「いつの間に?!」

「はしっこいさぁ」


 ばあちゃんのドヤ顔を見せられてしまった。


 案内された風呂は、木の香る(ヒノキかな?)大きな風呂。もうすぐ湯が張り終えそうだ。有難く風呂も頂戴しようか。


 広い風呂に一人きり。家人の気配もしない。

 目まぐるしい半日に、思考がぐるぐると回る。

 いかん、湯あたりする。出よ。




「甘ッ!」


 夕飯も食べさせられた。

 白いご飯にお味噌汁、これはまぁ普通だ。しかしこの煮物! 山菜のやつと、根菜と鶏肉の両方とも甘すぎだろ?!

 ばあちゃんはニコニコしながら一緒に食べたが、何も教えてはくれなかった。



 離れで何故かサイズの合うスウェットを渡されて、布団に潜り込む。


「あのばあちゃん……一体何を企んでるんだ……」


 答えの出ない問いが漏れる。

 妙に疲れてしまって、いつの間にか眠りに落ちていった……。




 









暗転

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ