一幕五場
「うん、う……ん?……んン?」
三十分以上話をして、初めて明らかになる驚愕の事実。
家のばあちゃんじゃ無ぇぇぇーーー!!
その後の十数分の間、真っ白になった俺は、何を話たのかは全く憶えていない。
どんな話をして、どうくくって電話を切ったのか。
惑乱した俺は、家を飛び出した!
そして、訳も分からず走った!!
端末と保険証入りの財布を持って! 火の元、戸締りをしてからだ!
何処をどう走ったのか……。俺は、一時期通ったレンタル屋に、居た。
俺は、前から気になっていた一本の映画を、借りて帰った。
宇宙から来たゲル状のお友達が、心の触れ合いを求めて旅するハぁートフルなヤツだ。街でのシーンも勿論イイ! が、再開を約束して別れる北極のラストは堪らない! 思わず堰を切ってしまいそうになる……。つまり、スティーブは最高だ。格好良い。かくあるべし。
……あ、違う。
「違う! そうじゃ、そうじゃ無ァーー」
ーーいっとぉ……? ……何だっけぇ? 曲名が思い出せん。
そう、それで。この映画のディスクが、レンタル一週間で280円。ワゴンに何故か有ったレンタル落ちのヤツが、125円……。
あぁ、無論レンタルしたよ。部屋にモノが多いからサ。
つまり、何が言いたいかというと、そんだけパニクってたって事だ。俺の脳内はぬとっとゲル状化してた。その混乱から醒める為に、スティーブ成分が特に必要だったのだ!
涙を堪えきった俺は落ち着きを取り戻して、再び端末を取り出した。
そう! 俺はクールだ。冷静なのだ。
こんな時に頼りになるのは……『Jikka』!
端末には実家の電話番号が、ちゃぁーんと登録してある。冷静沈着な俺は、三度見。オッケー。
久々に実家へ掛けると……、コレがウっさいのね!まぁ、学校勝手に辞めて、就活も捨ててフラフラしてたんだから、当たり前だ。端末を部屋の端から端へと遠去ける必要があった。それ程にまくしたてるハウンドボイスが炸裂したのだから!
しかし俺はここでも耐えた。3分11ラウンドを耐える。ステップを踏んでブロック、パリィ、デトロイトスタイルだな。
耐えたなら反撃の12ラウンド目だ!
ワンツーからの右ストレートォぉぉぉッ!
① 「海無し県の」
② 「ばあちゃんちの」
右 「電話番号何番?」
えっ?
「……何、……だと」