一幕三場
祖母と孫の、共通の"アレ"とは何なのか……。
新聞の包みを、そっと開いていく。
ふわりと土の匂いがして、都会生まれの都内育ちの俺にノスタルジーを撒き散らす。
……芋?
コレ、何芋よ?
ゴロッと丸くて、触手的な何かが巻き付いてて、赤い……角? 的な突起が有るのな。
回線のくっそ遅いPCを立ち上げる。
煙草に火を付けたら、深呼吸だ。三級煙草も高くなったもんだぜ、まったく……。
「食える芋なんだろーなァ?」
おぉ、あった! コレだな。
何なに……、すり潰して粉にして、水に晒して灰と混ぜる?
ふ、ふーん。こんにゃくって、こうやって作るんだ。
って、こんにゃく芋かいッ!?
どんな祖母と孫の関係なんだよッ!?
こんなにゴロごろゴロごろ沢山送ってきて、どんだけこんにゃく作る予定何だよ!? むしろ、こんにゃく手作りがデフォなのかよっ。
……ふう。
毎回毎度、理解に苦しむぜ……。
狭いアパートの部屋には、さらに狭くするアーティファクトが、雑然と並んで、あるいは壁に掛けられている。
やれ旅行の土産だの、爺さんが手作りしたのと寄越してくるのだ。
消え物と違って処分に困る物も、結構多い。
イル・マサイーの槍と盾のセット、ワニ革のボディバッグ、パレンケの仮面(指輪2個付き)、ブードゥの儀式用粉末、ユルルングの装飾入りブーメラン(大)、鮭革の兜……。
現物は残っていないが、カジキマグロ(一本)や熊の掌。鰊のパイ、鹿の頭部の剥製、雉、鴨、野鳩……。
ワールドワイドに陸・海・空!
一体どんな祖父母で、一体どんな孫達なんだ?
ピンポーン♫
お、まただ。
ちょっと電話して、うんうん頷いて、あれ! アレが欲しいって言うだけで……この通りよ。
気配りの出来る"ばあちゃん"だと、電話しなくても夏冬の二回、律儀に送ってくれる。
最初は一日何十件も電話して、通報されそうな事も何度もあったっけ。
今じゃ、気紛れに一日数件やってみて、当たりを引けばラッキーてなもんだ。
それでも日を置かず、田舎からの荷物は届き続ける。
生活費も小遣いも不自由しないし、何より食い物に困らないのが良い。
全く"ばあちゃん"様々だね。
そういや、何でこんな事し始めたんだっけ……。
あぁ、そうだ。あれは三年前の……。