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結構可愛いんだけど殺人鬼なのが玉にキズ  作者: 牛髑髏タウン
第一章 「え、私? 殺人鬼」
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第一章 2/8

「そうか殺人鬼か。意外だな」


 ……。


「そっかな。やっぱ意外かな。実を言うと、前に親にもすっごい反対されたんだ。だから諦めたフリしたんだけど、やっぱり諦められなくて……こっそり目指してたの」


「夢だったのか」


 ……。


「幼少の頃からのね。私がまだ初等精霊術学級に上がる前だったんだけど、学内に突然現れた……」


 ……。


「いや、すまん。ちょっと待ってくれ。さらりと話を続けてみたが、どうにもおかしい。場違いな言葉が混ざってた気がするんだ」


「あ、ごめんなさい。幼少の頃って普通言わないか」


「うん、そこじゃない。そこじゃないんだ。話だいぶ戻って申し訳ないけど……え、殺人鬼って言った?」


「うん」


「え、殺人鬼?」


「うん。……あ、人を殺すほうの」


「そっちじゃないほうが良かったな。他にあればだけど。……人を殺す鬼って書いて殺人鬼だよな」


「そうそう」


 俺の聞き違いでも彼女の言い間違いでもなかった。


「色々言いたいことがあるが……まず殺人鬼は職業じゃないだろ」


 そう言うと、彼女は俺の持っている職業リストの最後のほうを指さした。


「おい嘘だろ」


 載ってる。確かに「召喚士」と「計算士」の間に殺人鬼って書いてある。計算士ってのもなんだかわからないが。


「え、何。あるの? どういう職業なのこれ」


「戦闘職の一種。人を殺すためのスキル全般を身につけた複合技能職だよ。殺傷能力の高い武器を扱う技術と、対人格闘スキル、毒薬の知識や、死の魔法。そして人を殺す躊躇の無さ。それら全てを持っているのが真の殺人鬼だよ」


 キラキラした目で言うな。


「これに……なったのか。あんた」


「ティルミアって呼んでほしいな」


 いや、今じゃないだろそういうのは。そういうちょっと仲が進展した感じの台詞は今じゃない。大事な話してるんだから。


「殺人鬼ティルミア……」


「きゃっ。もう、おだてないでよ」


 え、今おだててたのか? 俺。


「なんでこれになろうと?」


「あ、やっぱり……思う? 女の子が選ぶなんて変だって」


 男が選んだって変だ。首を横に振る。


「そう? ありがと。えへ、確かにちょっと裏方っていうか、縁の下の力持ち的な職業なんだけど……」


「え、どこが?」


 そんなものが裏方や縁の下に潜んでたら誰も安心できんわ。


「あは、そんなこと言ってくれるのタケマサくんくらいだよ。……やさしいね」


 俺がおかしいのだろうか。


「俺が知らないだけかもしれないが、この世界では……もしかして結構メジャーな職業なのか?」


「え。……あー、それ聞いちゃう? タケマサくんは知らないか。はい、正直に言います。人気ありません」


 だよな。


「なんでかなって思うんだけどね。女の子からもちょっと不人気で、「一緒にいてほっとする職業ランキング」のワースト1位2位を行ったり来たりしてる感じ」


「女の子どころか老若男女、一緒にいてゾッとする職業ランキング不動の一位だろ」


「そ、そんなこと無いもん。呪術師といい勝負だもん」


 もん、とか言ってかわいこぶるが騙されるな殺人鬼だ。


「そんなものになってあんた……どうする気なんだ」


 人を殺すのか。そう言うのははばかられた。


「もちろん人を殺すんだよ」


 だがティルミアははばかる気ゼロだった。


「やめなさい」


「え、やだよ。どうして? 私、頑張ってライセンス取ったんだから。この力で誰もが心穏やかに暮らせる世界を作るって決めたんだから」


「心乱れる一番の元凶になろうとしていることに気付け」


 ティルミアは笑った。


「タケマサくんって面白いね。変わったことばっかり言うね」


 いやさっきから俺、まともなことしか言ってなくないかな?


「やっぱり異世界から来たばかりの人と話すとカルチャーギャップがあって面白いな」


 その台詞に、不安になる。ティルミアが頭おかしいんじゃなくてこれがこの世界の常識だったらどうしよう。


「ねえ、良かったらしばらく一緒に行動しない? どうせ、行く場所も知り合いもいないんでしょ?」


「どうしてわかる」


「異世界から来た人はみんなそうだもん。初めはここが夢じゃないかと疑って、その後まずどうやったら帰れるのか尋ねてまわって、最後に住む場所を探し始める」


 俺はまだ夢だと疑っている段階だ。


「この町の人は親切だし、簡易宿泊所もあるし、食べるのに困ったら職業訓練所に行けば衣食住つきで修行させてくれるからね。のたれ死ぬことはないけど。でもどうせだったら、こっちの世界の住人である私と一緒に行動したほうが早くこの世界に慣れると思うよ?」


 俺のような立場の人間は他にもいるのか。


「大丈夫。私、お金もそこそこ持ってきてるから、しばらく君と二人分の宿代を出すくらい余裕だし。実は私、別の都市から来ててさ、この町にまだ知り合いがいないんだ」


「だが……俺がいて邪魔にならないか? あんただって何もすることが無いわけじゃないんだろう?」


「ああ、人殺し? 大丈夫大丈夫。人殺しのほうは、いきなりそんな忙しくならないから」


 そんなもの忙しくなってたまるか。まるで仕事のような言い方だ。いや、職業としての殺人鬼なんだから、仕事といえば仕事なのか? この世界の「職業」って概念はイコール身につける能力の種別や傾向を表すものであって、商売を必ずしも意味しない、と神殿で聞いたが……。


 俺は返事を迷っていた。

 本来なら、悪い話ではない。ティルミアの言うとおり、俺は途方に暮れている。どこに行って何をすればいいのかわからない。つきたい職業がない。やりたいことがない。明日が見えない。このまま死ぬまで無職なんじゃ……。

 ……おっと危うく現実を思い出しそうになってしまったが、今現在この世界で知り合いもなく一人で心細いのも事実だった。ティルミアが宿代まで出してくれるというなら、しばらく一緒にいてこの世界のことを色々教えてもらうのは悪くない。

 だが……殺人鬼と一緒にいていいものか。問題はそこだ。いや、彼女が冗談で言っているだけで、実際にはそんな物騒な職業じゃないのかもしれない。このリストにあるのも何かの印刷ミスとかかもしれない。

 第一彼女は可愛い。第一印象では俺はちょっと惚れかけた。殺人鬼とか言い出さなきゃこのまま恋に落ちていたかもしれないとさえ思う。

 だから悪い話じゃない、悪い話じゃないのだが……。


「せっかくだが……。首を縦には振れない」


 俺は正直に言う。ヘタレだと自分でも思うが、ここがもしかしたら夢の世界じゃないかもと疑い始めている今、そう簡単に殺される危険に飛び込むわけにはいかない。

 だが、次の瞬間の彼女の顔を見て、後悔した。


「あ……そ、そうだよね。あははっ。ごめん、私だけ盛り上がっちゃって。そうだよね、やだよね、殺人鬼なんて……」


 違うんだ、そう言おうとしたが、何も違わなかったので言えなかった。確かに嫌だ。殺人鬼なんて。


「わかってた。人気ないってことくらい。私と一緒にいたら思われちゃうもんね、殺人鬼なんか連れてるよアイツって。ダサいって思われるもんね」


 ……うん? ダサいとかそういう問題なのか?


「やっぱり女の子連れて歩くなら、もっと可愛い職業がいいもんね。踊り子とか回復魔術師とか、賢者とか、選ばれるのはいつもそういう職業の子だしね」


 何か話がずれている気がする。


「ご……ごめんね、殺人鬼ごときが一緒に行こうなんて誘ったりして。恥ずかしかったよね」


 いや恥ずかしいんじゃなくて、怖いんだけど。


「でも私、この職業に誇り、持ってるんだ。今の時代には必要ない職業だとか、なんで殺人鬼なんてなりたいの? とか、もっと将来性のある職業にすればいいのに、とかよく言われるけど、私はこの職業で、殺人でみんなを笑顔にしたいの! 「パーティに連れて行きたくない職業ランキング」でいつも上位にランクインしちゃうけど! 私は殺人鬼をやめたりしない。いつか、殺人鬼を格好悪い職業だって言わない人と出会って、一緒に冒険するの。それが夢なの」


 ……俺は、右手をパーの形にして彼女の前にかかげた。「待て」の意味だ。


「俺は、殺人鬼が格好悪い職業だと言ってるわけじゃない」


「でも心の中では思ってるでしょ?」


「いや、思ってない」


 そもそも職業だと思ってない。


「ほんとに?」


「ああ、本当だ。俺は殺人鬼をバカにしているとか、そういうことじゃないんだ。これからも無いと思う。バカにするなんて恐れ多い。そんな恐ろしいことできない。なんというか、そういう問題じゃなく……」


「嬉しい!! そんなこと言われたの初めて……。嬉しくて泣きそう」


 俺が言おうとした言葉はかき消された。


「じゃあ、一緒に来てくれる?」


「……いや待ってくれ。それとこれとは話が別でだな……」


「あ、もしかして……。二人きりだとまずいとか、そういうこと考えてるの?」


「ん、まあそれも無くはないが……」


 確かに殺人鬼と二人きりというのは非常にまずい気がする。


「なぁんだ! そんなの気にしなくていいって。万一にもないだろうけど、君が私を襲おうとしたって心配ないもん。私こう見えても殺人鬼としての修行は結構つんでるんだから。寝てても近くに人の気配を感じたらすぐ起きるし、襲いかかろうとしたらどんな体勢からでも相手の息の根を止められる自信はあるもん。だから安心して?」


 なんだろう、ちっとも安心できない。


「むしろ寝ぼけて近くにいる人を殺しちゃったりしないかが心配なくらいだよ。あははっ。ここ笑うとこだよ?」


 少しも笑えなかった。


「そういう心配もあるが、なんというか、一緒にいると緊張するというか、落ち着いて寝られそうにないというか……」


 なぜか彼女は顔を赤らめた。


「え、や、やだもう……。そっそ、そんなの私もだし……。わ、私男の子とつきあったことなくて……。やだ、私何言ってるんだろ」


 本当に何を言っているんだ。


「し、心配しなくても宿の部屋は別にするって。じゃあ、決まりね! あはっ。嬉しい。よろしくお願いします」


「……いや、ちょっと待っ……」


「きまりぃ~。はい、宿いくよー」


「おい、ちょっと待て。おいってば。あーもう、宿の部屋は絶対に別だぞ! おい、あと……少しの間だけだからな!」


 押し切られる格好になった。

 まあ、正直に言うと、彼女があまりに傷ついた顔をしていたので、可哀想になってしまったというのもある。

 きっとこれまで、殺人鬼になるという夢を誰からも共感してもらえずにいたのだろう。


 いや当然だけど。


 *


 彼女に連れられて、街の中心部へやってきた。


「とりあえず、当面の宿を決めましょ。私も今朝街についたばかりで、もうちょっと街を見て回りたいし、君もそうでしょ? 5、6日は滞在したいよね」


「そんなに泊まって大丈夫か? 相場とか全然わからんのだが、あまり無理させるのは本意じゃない。俺、まったく金持ってないし」


「ありがと。でも大丈夫、この街に来る道中で結構稼いできたから」


「……そうなのか」


 道中で稼いで……ってどういう意味だろう。大道芸でもしてきたのか。


「意外と大金持って歩いてる人が多くいてね……。あ、あそこの宿にしよっか」


 今聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたが、聞き返す前に彼女は走っていってしまった。仕方なく追いかける。


 宿、という言葉から想像していたよりも、立派な建物だった。ホテルと言うべきだと思った。ホテルも宿だろうと言われればその通りだが。


「いらっしゃいませ。2名様ですね」


 凄く営業スマイルの上手な受付の女性が微笑んだ。


「ご宿泊日数はどうされますか」


「えっと、一週間くらい泊まりたいんです。二部屋用意してもらえますか?」


「七泊でございますね……。少々お待ちください。お調べいたします」


 何だか、異世界に来た感じのしない受け答えだなと思った。

 いやまあ、夢の中だとしたらむしろ単に俺が高級ホテルに泊まってみたいと考えているのが反映されただけかもしれないが。


「オルァッ! てめえ今何つった!?」


 突然大きな声が聞こえた。

 見るとああ、破落戸ごろつきというやつだとすぐにわかった。何やらホテルのスタッフに向かって凄んでいる。スタッフの声の方は聞こえないが、何やら謝っている。


「異世界にもいるのか。ああいうの」


 思わずそう呟いてしまった。


「ああいうの?」


「ああつまり、ガラの悪いやつってこと」


「タケマサくんは、ああいう手合いの扱いは得意?」


 首を振った。


「いや、悪いが全然だ。格好悪いのを承知で言うが、関わらない、逃げる、助けを呼ぶ。この三つだな。俺に取れる選択肢は」


「なるほど。潔いね」


「軽蔑したか?」


 彼女は微笑んだ。


「ううん。良いと思う。そういう人の方が一緒にいて楽かな」



「責任者呼んでこいっつったろぉが! お前じゃ話んなんねぇよ!」



 男の声がなおもボリュームアップしていく。


「ですから私が……」


「ですからじゃねえよ! 速く呼んでこいや」


「ですから……」


「ですからじゃねえって言ってんのが聞こえねえのかよ!」


「あの……」


「あのじゃねえよ!」


 頭にバンダナを巻いた大柄のその男は、すっかりヒートアップしてしまってまるで口を挟む隙を与えない。


「一体何を騒いでいるんだろうな」


「……責任者と話をしたいみたいだけど、さっきから漏れ聞こえて来る言葉から推測すると、あの対応してる人が責任者みたい。私が全責任を負っておりましてみたいなこと言ってる」


「じゃあなんだ、目的は達してるじゃないか」


「でも聞く耳持ってないから話にならないのかな」


 困ったもんだ。


「あの男、ガルフって言ってな。しょっちゅう来てんだよ。毎回、いちゃもんつけて一等客室にタダで泊まろうとするんだよ」


 俺たちの後ろでそう声がした。同じく宿泊客らしい爺さんだった。身なりがいい。恰幅もいい。金持ちそうだ。そういう客が多いのだろう。


「いちゃもんって?」


「ロビーで待ってるのに声をかけるのが遅いとか、ドアノブが濡れてたとか、絨毯に足を取られて転んだとか、難癖つけるにしたってもうちょっとネタがないのかってくらいの酷いもんだ」


「ホテル側も追い返すのが大変だな」


「追い返せればいいんだがな。毎回泊めてるんだよ」


「泊めてる? なんでだ」


「……前に何回か追い返して、その度にあの男は仕返しをしたからだ。スタッフの女の子が帰り道に襲われたり、別のスタッフが暴行されて病院送りになったりな。支配人の家に火をつけられたこともあったな」


 なんだそりゃ。警察は何をしてるんだ。いや、そもそも。


「この世界に警察ってないのか?」


「ケーサツ?」


 ティルミアがそう言ってぽかんとした。


「ああ、警察だ。迷惑なやつを捕まえる国家権力」


「ああ、聞いたことある。ニホンにはなんかそういうのあるんだよね。ここの国だと軍隊かな、その役割は」


 なるほど、軍隊か。まあ、武力で治安を維持すると言う意味では同じか。


「その軍隊は何をしてるんだ? あの男を逮捕しないのか?」


「軍隊が必ず動いてくれるわけじゃないもん」


「どうしてだ。犯罪者だろ」


「ハンザイシャ?」


 ……それなに、という顔でティルミアが俺を見た。


「法律を破ってるだろ。あの男。脅迫、暴行、傷害、放火……」


「ホウリツ……?」


「法律だよ。法。国が決めたルール。まさか無いのか? この世界には」


 ティルミアが首を傾げた。


「国王の命令ってこと?」


「……まあ、そんな感じだ。俺のいた世界じゃ王政じゃなかったけど。……その国王がルールを決めてるんだろ? 何が犯罪かを決めてるんじゃないのか? 脅迫罪とか暴行罪とか」


「国王はいちいちそんな細かいことまで禁止命令出したりしないよ」


 全然細かくないだろ。


「まさか罪に問われないのか? 人をボコボコに殴っても、家に火をつけても。この国では」


「そりゃ迷惑なことではあると思うけど、国がいちいち罪に問うわけじゃないよ」


 なんだそりゃ。文字通り、無法地帯じゃないか。


「大きな騒ぎになって国王の耳に入ったらそいつを捕まえろって命令が出ると思うけど、全員を捕まえようなんてしないよ。連続放火事件とかになって初めて軍隊は動く感じかなあ」


「一件だけだから動かないってのか。軍隊はそんなんでいいのかよ」


「軍隊の主な仕事は街の外に対する警備だから。外には魔物もいるし、他国が攻めてくることもある。街の中でのトラブルは、住人が自分で解決するのが原則」


 優しい国かと思ったら……案外と、物騒な国だったらしい。


「すると何か? あいつは……あのガルフってやつはお咎めなしってことかよ」


 するとティルミアは、胸を張った。


「……いやなんだどうした、いきなりドヤ顔して」


「お咎めは無いけど無事では済まないかもよ」


「どういう……意味だ」


「私を何だと思ってるの?」


「え……何って……。殺人鬼?」


「そうゆうこと」


 天使のように悪魔は微笑む。

 嫌な予感がするまでもなく彼女は最悪の行動に出た。


「こんにちは! そこの破落戸ごろつきさん!」


 明るく元気にはきはきと。彼女は自分の身長の二倍ほどもあろうかという男に恐れるそぶりもなく声をかけた。


「……あぁん、なんだガキ、すっこんでろ」


 ガルフの影にすっかり隠れてしまうほどティルミアは小さい。女性としても背が低いほうだろう。


「おい、ティルミアやめろ」


 俺は一人ならこんな場面、見て見ぬ振りの一択だ。いや、女の子と一緒でもまずは警察を呼ぶと思う。だがさっきの話が本当なら、この世界の警察=軍隊は頼りにならない。周りの連中に助けを求めるしかないが、見回す限り俺と同じであのガルフと喧嘩できそうな人間はいない。

 つまり、逃げるの一択だ。

 彼女を守って戦おうとか格好つけようとか、そんなことは全く思わなかった。その証拠に彼女にやめろと声をかけた時、俺は既に戸口に近い位置に移動していて、ダッシュで外に出られる位置にいたくらいだ。


「ううん、大丈夫だよ」


 だが嫌な予感は当たり、彼女は逃げるつもりがないようだ。


「うせろガキ。俺はこのホテルの誠意の無い対応に、正当な要求をつきつけている最中だからな」


 まだ幸い、ガルフは彼女を無視している。この隙に強引に引っ張って出ていくしかない。俺は急いで彼女に近づき、腕を引っ張った。


「おい、行くぞ」


「え、でも……」


「でもじゃない。行くぞ」


「でも、」


 次に彼女の放った言葉は、まずいことにガルフに聞こえてしまった。



「私、この人を殺さないと」

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