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第8話

文字数を6000文字か4000文字かで悩んでいます。

因みに今は約6000文字です。

 夜明け前の一番くらい時間帯、その濃い闇を拒絶するかのような眩い光が徐々に弱まっていき、僅かばかりの発光という形で存在の痕跡を残して収まった。

 俺の手の平の中には、ぼんやりと光る透明な薄紫色の魔力石が1個、膝上には同じものが4つ転がっている。


 □ □ □ □


【結月の魔力石】レア度:?

 結月の魔力が集まり合い、強固な塊となった物。


 石と名は付いているが、鉱物の類いなどは一切含まれていない魔力の塊。壊れそうになっても元の形に戻ろうとする力がある。

 しかし扱い方を知っていれば、固形化した魔力である為、様々な用途に使用できる。


 □ □ □ □


「お、終わったぁ……」

「お疲れさん」


 MP回復の時間もいれて推定5時間ほどかかると思われていた【魔力付与】も、ブランチのレベルアップによる効率化もあって、紅い月が沈みきる前に終える事が出来た。4時間かかったかどうか位のはずだ。

 まぁ、それでも4時間もの間ずっと座禅まがいな事をやっていたわけで、結構集中力が辛い。


「で?どうするの?もう、召喚しちゃう?」

「いや、するのは明日の0時丁度だな。満月が天辺に来るから」

「……結月って、若干中二病はいってるよね」

「ひでぇ、形から入っていると言え」


 昔から月は神様だとか、魔力の塊だとか言われてるんだぞ。魔法とか使える世界なら、形から入ろうとするのは普通だろうが。


 それはさておき、俺達は一旦町に戻ることになっている。

 ユウは連続の狩で貯まりに貯まったアイテムの売却と、装備の更新の為。

 俺は、今夜睡眠不足のペナルティを受けない様に宿屋での休憩といった所だろうか。一日位だったらペナルティは受けない筈だが、念には念を入れる派だからな、俺は。


「現実だったら絶対に肩こってたな……ん?」


 気分的な問題で肩を時々回しながら町に帰るために魔力石をアイテムボックスへと収納していると、視界の端に精霊さん達にあげた魔力石が映る。

 無造作に転がっているそれは、精霊さん達が集まっていた時のぼんやりと光っている状態では無くなっていた。

 吸収しきれなかったのかな?お残しは少々いただけないが、必要がないのなら持ち帰らせてもらおう。



 □□□□□□


 帰りの道中なのだが、ユウはよく一人で狩を行えていたなと思った。

 本人曰く、危なくなったら、魔法行使に多少時間のかかる回復魔法を連打しながらじりじりと後退して、【光属性魔法】の〖リーフ〗である〖フラッシュ〗で目眩ましをして安全地帯まで逃げ帰って来ていたのだと。

 それでも一回も死ななかったとか……前衛ヒーラーとユウのPS恐るべしといった所だ。


 さて、何故こんな話をしているかというと、敵さんの登場である。しかも団体さん。

【魔力察知】と【気配察知】で気付いてはいたのだが、避けることができなかった。



【野犬】

【野犬】

【野犬】

【野犬】



「ブランチにしかレベルがないから、敵の強さを把握出来ない点は不便だと思ったよ」

「確かに」


 此方を凝視してうなり声をだし、じりじりと間合いを詰めてくる猛獣と化した犬をみながら、そんな会話をする。

 既に何度目かの戦闘だ。焦らずにユウが前衛として前に出て、俺はおとなしく後ろへ下がった。

【魔力魔法】もある程度使える様になってきたし、ヘマをしなければやられる相手ではない。


「〖全ステータス強化〗!」


 俺がユウに【強化魔法】をかけたのと同時に戦いの火蓋が切られた。

 因みに〖全ステータス強化〗を使用したさいにかかった時間は4秒程、何時間もぶっ通しで魔力を扱っていたのだ。明らかに魔法関連のレベルやステータスは上昇していると実感できる。


「よし、じゃあ俺は敵のヘイトを集めるとしますかねっと」


 大きく横薙ぎに振るった剣は野犬達に掠るか掠らないかぐらいの所を通り過ぎ、敵の視線が全てユウへと集中する。成る程、俺なんかは眼中にないようで。

 では遠慮無く横腹を突かせてもらいましょうか。


「〖射出〗」

「キャウッ!」


 ーーーーパシュッ!と空気が弾かれる様な音と共に俺のロッドの先から発射された薄い青紫色の球状の歪みは、一直線に飛んでいき野犬にぶち当たりった。

 ボッ!と中々に重い音を出して命中したそれは、野犬のHPを五分の一程削って、身体をよろめかせる。良い火力じゃないか。


「グルル……ガウッ!」


 流石に今の攻撃を無視する事は出来なかったのか、目を血走らせた野犬は、大きく吠えると猛然とこちらへ駆けてくる。

 流石は犬であり、かなりの速さだがーーーーー遅い。


「〖射出〗…〖射出〗ッ…〖射出〗ッ!」


 連射とまではいかないものの、継続的にロッドの先から射出される魔力の塊は、野犬の顔めがけて真っ直ぐに空を裂き着弾。

 怯んだ野犬に二発目、三発目と魔力弾がヒットし、一気にHPを削りきった。


 この【魔力魔法】の初期リーフ〖射出〗の長所は、威力よりも魔法行使速度の速さにある。

 己の魔力をそのまま撃ち出すという、何のひねりもない単純な動作。だからこそ、高速展開する事が出来る。

 これは【魔力魔法】の〖リーフ〗全般的にいえることみたいで、伊達にMPをそのまま使うと説明文に書いてあった訳じゃないようだ。


「〖放出〗」

「ーーーガッ!?」


 そのため、【魔力魔法】は魔法にも拘わらず、奇襲にもある程度対応出来る。

 今回は【魔力察知】と【気配察知】でわかっていたので迎撃したという形になるのだが。


 〖放出〗は全身から魔力を瞬間的に勢い良く、衝撃波として出す技だ。

 与えられるダメージは少なく、射程も短いが、当たった相手の体勢を崩したり吹き飛ばしたり出来る上、出も速い。

 なので使い勝手が良く、今も飛びかかってきた野犬を弾き飛ばし、間合いを確保出来た。


「ほら、どうした?」


 吹っ飛ばされて此方を警戒している野犬に対してコンコン、と小盾をロッドで叩き音を立てて挑発する。

 乗ってくるかは微妙だったが、挑発は成功。馬鹿正直に真正面から突っ込んできた、次の行動は噛みつきだろう。


「それを待っていたんーーーーーだっ!」

「キャイッ!?」


 誘発させた噛みつきに合わせての、小盾による顎への一撃でパリィを発動、無防備になった野犬へ【格闘】の補正がかかった小盾の縁による殴打をみまった。

 ーーーーーーだが、これで終わりではない。


「〖放出〗」


 顔へと食い込んでいた小盾から、更に追加で衝撃波が放たれて野犬の身体が錐揉み回転しながらそこそこの距離を飛んでいく。


 貧弱な魔法使いの俺は【器用さ】重視のパリィなどの行動は多少どうにかなるのだが、殴るなどの【筋力】重視の行動は微妙の一言に尽きる。

 実際、ただ殴っただけでは野犬が吹っ飛ぶなどといった現象は起こらなかっただろう。その貧弱さを衝撃波を出す〖放出〗で補えるのは有難かった。


「風の精霊さん、野犬に攻撃」


 頭を激しく打ち付けられて立つことの出来ない野犬に、精霊魔法で止めをさす。首の辺りに切り傷がはしった野犬は光の粒子になって消えていった。


「……ふぅ」

「【魔力魔法】の〖リーフ〗、使い易そうだね」

「あぁ、確かに優秀だよ。……けどなぁ、今使える〖リーフ〗が2つだけなのはなぁ……」

「最初はそんなものだよ、俺の光属性魔法のリーフだって最初は〖ライト〗〖フラッシュ〗〖光弾〗だけだったし」


 もうとっくに野犬達を狩り終えていたユウと軽口をたたき合いながら、その流れで歩き始める。

 ……そう、ユウにも言ったように今俺が使える【魔力魔法】のリーフは〖射出〗と〖放出〗の二種類のみ。これから増えてはいくのだろうが、今のままだと雑魚相手ならともかく、強敵相手だとちょっと厳しい。


 しかしだからこそ、召喚獣への期待が更に高まるというものである。

 記念すべき最初のパートナー、早く会いたいものだ。



 □ □ □ □



【魔力魔法】


 〖射出〗

 己の魔力の弾を射出する魔法


 それは何のひねりも無い至極単純なものであり、魔法と呼ぶのは烏滸がましい拙技。

 長所を捻り出すとするならば、拙技であるが故に行使が容易である。



 〖放出〗

 己の魔力を全身から衝撃波として出す魔法


 それは何のひねりも無い至極単純なものであり、魔法と呼ぶのは烏滸がましい拙技。

 長所を捻り出すとするならば、拙技であるが故に行使が容易である。


 □ □ □ □





 □□□□□□□



「……これは本当に時間感覚が狂うな」


 現在TDO内での時間は午後2時くらい。

 マップ機能を使った為、行きよりも大分速く町へと戻ってくることが出来た俺は早速宿へと向かい、なけなしのお金を払って部屋を取り就寝。

 TDOでの睡眠にも興味はあったが、今回は昼食をとるために一旦ログアウトして今戻ってきた。


 すぐに宿をチェックアウトして外へ出る。フレンドリストに唯一のっているユウへとメールを送れば、今向かうとのこと。

 その返信の通り、さほど待つことなく合流する事が出来た。

 おっ、装備している剣が初心者用の剣から武器屋で売られていたカッパーソードに変わってるな、防具と盾はそのままだけど。


「結月は装備の更新とかしなくていいのかい?」

「あぁ、俺は攻撃手段が魔法と盾だからな、まだ大丈夫」


 お金にあんまり余裕ないし、今は我慢して貯めないとな。

 欲しいものができたのに買えませんなんて状況になるのは御免だ。



「……」

「ん?どうした?」


 携帯食料を囓りながら歩いていると、町の中心辺りに来た時にユウの足が一瞬止まった為、何かあったのかとその視線の先を見やる。

 そこには男性が二人と女性が一人、おそらくは男性二人が女性をパーティーに誘っているのだろうが、些か空気が宜しくない。


「いえ、ですから、貴方達は南に行くつもりだったのでしょう?私は西に用事があるので」

「だったら、俺達も予定変更して西に行くって言ってるじゃん」

「……そこまでしてもらわなくても大丈夫ですので、他をあたっていただけませんか?」

「いいの、いいの、遠慮しないで」

「…………いえ、ですから……」


 おぉう、今女性の口の端と眉毛がピクピクッてした。

 あの女性、今は丁寧な口調で話しているけど、どこからどう見ても爆発寸前だ。

 まぁ、確かに、あんなエウリアンレベルの絡まれかたしたら苛つきもするだろう。

 ナンパも退き際を間違えると犯罪と大差ないからな。


 でだ、ユウが何をしようとしているのかは大体わかった。

 あの女性なら一人でも何とかしそうではあるが、本当に困っているのは間違いなさそうだし、止めはしない。


「……結月」

「おう、いってら」


 ……そんな目で見るなって、ちゃんと理由はあるんだから。


「手伝ってはくれないの?」

「ばっかお前、男二人で女性一人に『ごめん、待った?』なんてしたら、ナンパしてる方も引くに引けなくなって余計にややこしくなるぞ」

「……そうなの?」

「多分、こういう場合は男女一人ずつのペアのほうが相手も色々と誤解してくれるだろ。駄目だったら俺もフォローするから」

「……わかった」


 そう頷いて、駆け足気味に向かっていくユウを見送る。

 流石にこれでも駄目だったらその時はその時だ、GMコールでもすれば良いだろう。

 ……あれ?これ素直にGMコールすれば解決するんじゃ……まぁ、良いか。


「おーい、ごめん、待たせちゃって」

「え?……あぁ、やっときたのね。もう、遅いわよ!」


 そう思っていたが今接触したのを見た感じ、女性の方も察して合わせているみたいだし、どうにかなりそうだ。

 というか、女の人も急な出来事にも関わらずよく対応したな。正直厳しいかとーーーーー



「おぉ?君も一緒に行くのかい?えっと……ユウちゃんか、よろしく」


 ーーーーこれは完全に予想外です。


 えぇ……あいつら、この状況でも一緒に行く気満々とか。ユウを女と間違えたとはいえ……マジか。

 ほら、ユウも女性も完全に固まっちゃってるじゃん。

 ……いや、ユウは微妙に震えてるな。

 うん、気持ちはわからんでもない。俺だって野郎からナンパされたら思考放棄するわ。

 それはそれとして、フォローするといった手前あそこに行かなければならないわけだが、い、行きたくねぇ。


「あー……そこのお二人さん、ちょっと良い?」

「あ?」

「何だよ、いきなり」


 うわ、態度が違いすぎるだろ。これはユウを女と勘違いしてるの確定だな。


「何かを勘違いしてるようだから言うけど……お前らがナンパしてるの男だぞ」

「「……は?」」


 そう俺が告げると、口をポカンとあけて間抜け面になるお二人さん。って、女性までびっくりしてるし。

 ……なんというか、ドンマイ。


「おい、ユウ、ちょっとウィンドウの性別欄見せてやれ」


 俯き震えてるユウは無言でウィンドウを操作していき、こちらに見せてくる。

 それを確認した二人は「マジかよ…」と呟き呆然としていた。

 ――――よし、このまま畳み掛けますか。


「ところでお二人さん。ここは町の中心に近いから人が結構多いんだけど、そこそこ注目を集めているの気付いてる?」


 その俺の指摘にギョッとした表情で辺りを見渡して、少し顔色が悪くなる二人。薄々察したのだろう、ここが止めのさし所だな。


「お察しの通り、周りの人達は貴方達がナンパをしていた事を知っている訳だけど……ここでユウの『自分は男だ』発言が響いたらどうなると思う?」

「ちょっ!?」

「…………」


 よし、完全に折れた。

 いきなり出てきた俺は何なんだとか、突けばすぐ崩れる様なハッタリだけど、それを判断するような余裕は残ってないだろ。

 ……おい、そこの女子、「うわぁ……」って聞こえてるからな。ドン引きされるのはちょっと傷つくぞ。


「畜生……俺達ずっと男をナンパしてたのかよ……」

「……あ?」

「ひっ!わ、悪かったって!もう懲りたから!頼むからこの事を掲示板に書いたりしないでくれよ!」


 勘違いが加速したのか、女性のことまで男扱いしはじめた二人。

 そのせいで女性から、すんごいドスの利いた声が発せられ二人は退散。

 残ったのは意気消沈気味なユウと最後の最後に男扱いされた女性とポッと湧いて出た俺。


 ――――――いや、本当にどうしろと?




 □ □ □ □


 結月

 種族 人間

 称号:なし

 BP: 74


 メインブランチ

【召喚術Lv1】

【小盾Lv6】→【小盾Lv8】

【ロッドLv4】→【ロッドLv7】

【強化魔法Lv3】→【強化魔法Lv4】

【精霊魔法Lv4】→【精霊魔法Lv6】

【魔力察知Lv7】→【魔力察知Lv12】

【魔力付与Lv2】→【魔力付与Lv15】

【魔力操作補助Lv4】→【魔力操作補助Lv12】

【精神力強化Lv5】→【精神力強化Lv10】

【器用さ強化Lv5】→【器用さ強化Lv8】

【魔力魔法Lv1】→【魔力魔法Lv6】

【格闘Lv1】→【格闘Lv3】

【気配察知Lv1】→【気配察知Lv5】


 控えブランチ

 なし


読了、ありがとうございます。


ブクマ、評価ありがとうございます。

とても嬉しく、力になっております。


そして、感想。

「待ってたよ!」「面白かったよ!」の一言……本当に、本当にありがとうございます。


今現在書き方等を試行錯誤していますが、頑張らせて頂きます!

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